著者
潮見 佳男 橋本 佳幸 村田 健介 コツィオール ガブリエーレ 西谷 祐子 愛知 靖之 木村 敦子 カライスコス アントニオス 品田 智史 長野 史寛 吉政 知広 須田 守 山本 敬三 横山 美夏 和田 勝行
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成30年度は、前年度に引き続き、ゲストスピーカーを交えた全体研究会の開催を通じて、情報化社会における権利保護のあり方をめぐる従来の議論の到達点と限界を検討し、知見の共有を図った。個別の研究課題に関しては、次のとおりである。第1に、個人情報の収集・利活用に関する私法的規律との関連では、全体研究会を通じて、EU一般データ保護規則(GDPR)の全体的構造のほか、EUにおけるプライバシー権の理論構成について理解を深めた。また、プラットフォーム時代のプライバシーにつき、プロファイリング禁止やデータ・ポータビリティーなどの先端的課題を踏まえた理論構成のあり方を検討した。第2に、AIの投入に対応した責任原理との関連では、全体研究会において、ドイツでの行政手続の全部自動化立法の検討を通じて、AIによる機械の自動運転と比較対照するための新たな視点が得られた。第3に、ネットワーク関連被害に対する救済法理との関連では、担当メンバーが、ネットワークを介した侵害に対する知的財産権保護のあり方を多面的に検討し、また、オンライン・プラットフォーム事業者の責任について分析した。以上のほか、私法上の権利保護の手段や基盤となるべき法技術および法制度に関しても、各メンバーが新債権法に関する一連の研究を公表しており、編著の研究書も多い。さらに、外国の法状況の調査・分析に関しては、ドイツやオーストリアで在外研究中のメンバーが滞在国の不法行為法の研究に取り組み、複数のメンバーがヨーロッパ諸国に出張して情報収集を行った。また、研究成果の国際的な発信も活発に行っており、国際学会での日本法に関する報告が多数あるほか、新債権法に関して、その翻訳、基本思想を論じる英語論文が挙げられる。
著者
潮見 佳男
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1993

博士論文
著者
潮見 佳男 橋本 佳幸 コツィオール ガブリエーレ 松岡 久和 愛知 靖之 木村 敦子 山本 豊 長野 史寛 山本 敬三 横山 美夏 佐久間 毅 和田 勝行 天野 佳洋 吉永 一行 栗田 昌裕 松尾 健一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、①信託を中心とする事業財産権モデル、②知的財産の完全な自由利用を保障するタイプと対価徴収権を中核とするタイプの複合モデルを基礎とする情報財産権モデル、③景観利益や環境利益の侵害に対する救済および原子力損害からの被害者救済に適合した環境財産権モデル、④パブリシティーや個人情報の財産化、ヒト由来物質や身体の譲渡・利用可能性に照準を合わせた人格財産権モデルを提示した。そのうえで、これらの研究成果を踏まえ、共同研究メンバーが、物権法、債権法、契約法の各領域の再編を企図した体系書を刊行したほか、2015年度の日本私法学会シンポジウムで「不法行為法の立法的課題」を担当した。
著者
川角 由和 中田 邦博 児玉 寛 岡本 詔治 森山 浩江 若林 三奈 松岡 久和 潮見 佳男
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、第一にEU域内市場の拡大・展開を受け、EUレベルで進行する私法の統一化の動きを全体として跡付けてその特質を解明すること、第2に、こうした動きを基礎づける近代ヨーロッパ私法の原理(とくに契約法にみられる原理的共通性)や統一私法典の構想等を分析し、わが国の私法への影響を考察することにある。今回の研究期間内には、とくにこうしたヨーロッパ私法統一の動向そのものの分析と、日本法に対してそれがどのような影響を及ぼすのかを比較法的手法を用いて解明することに重点を置くものとした。この期間内には、本研究の中核メンバーによってヨーロッパ契約法原則の意義を明らかにし、それが日本法にどのような影響を及ぼすかを検討するシンポジウムを、比較法学会において開催した。また、こうした研究作業の基礎資料となる「ヨーロッパ契約法原則」についての翻訳プロジェクトに取り組み、すでに潮見佳男=中田邦博=松岡久和『ヨーロッパ契約法原則I・II』(法律文化社、2006)の刊行を終わり、IIIの刊行を予定している。また、これまでの研究成果を集大成した『ヨーロッパ私法の展開と課題』の刊行が予定している。以上のように、本研究は、さらなる展開を示しつつあるヨーロッパ私法・契約法の全体像を解明するために、さまざまなプロジェクトにおいて深化し、またすぐれた研究成果を挙げている。
著者
吉田 克己 長谷川 晃 瀬川 信久 稗貫 俊文 田村 善之 潮見 佳男 曽野 裕夫 道幸 哲也 亘理 格 山下 竜一 池田 清治 村上 裕章
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は、現代社会を構成する政治=行政、経済=市場、生活=消費という3つのサブシステムの内部変化と外部変容(相互関係の変化)を、実定法学という観点から構造的・総合的に把握することである。共同研究を通じて、これら3つのサブシステム相互関係の変容を端的に表現するのが公私のクロスオーバーという現象であることが明らかとなった。また、そのような問題が集中的に現れる問題領域として、競争秩序と環境秩序があることも明らかになった。競争秩序の維持・確保は、その公共的性格のゆえに、伝統的に行政機関が担当すべきものとされてきた。ところが、近時、市民を主体とする民事法的対応の可能性が模索されている。このような動向に応じるためには、市民を主体とするものとして「公共性」を捉え返す必要があること、そして、競争秩序違反に対する損害賠償や差止を可能にする法理もまた、そのような観点から再構成されるべきことが解明された。さらに、競争秩序の形成に関して、上からでなく、下からの自生的秩序形成の可能性とその条件が検討された。競争論の観点からの民法学の原理論的考察も行われ、物権・債権の二分法に基礎には競争観念があることが明らかにされた。環境秩序に関しては、近時、理論的にも実践的にも重要な争点となっている景観問題などを素材として、公私のクロスオーバー現象が分析された。行政法の領域からは、公益、個別的利益および共同利益の相互関連が検討され、民事法の領域からは、差止を可能にする法理として、地域的ルール違反に対するサンクションとしての差止という法理が提示された。そして、刑法の領域からは、環境を保護法益として捉える場合のおける近代刑法原理の限界に関する分析が行われた。さらに、「憲法と民法」の相互関連という問題を通じて、公私の再構成に関する原理的な検討が行われた。
著者
吉田 克己 田村 善之 長谷川 晃 稗貫 俊文 村上 裕章 曽野 裕夫 松岡 久和 池田 清治 和田 俊憲 山下 龍一 亘理 格 瀬川 信久 秋山 靖浩 潮見 佳男 伊東 研祐
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

公正な競争秩序や良好な自然環境、都市環境を確保するためには、行政機関や市町村だけでなく、市民が能動的な役割を果たすことが重要である。要するに、公私協働が求められるのである。しかし、公私峻別論に立脚する現行の実定法パラダイムは、この要請に充分に応えていない。本研究においては、行政法や民法を始めとする実定法において、どのようにして従来の考え方を克服して新しいパラダイムを構築すべきかの道筋を示した。
著者
松岡 久和 木南 敦 潮見 佳男 藤原 正則 平田 健治 川角 由和 中田 邦博 森山 浩江 多治川 卓郎 油納 健一 渡邊 力 山岡 真治 廣峰 正子 吉永 一行 瀧久 範 村田 大樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

各人がおびただしい数の関連業績を研究成果として挙げ、それを基礎に共同研究として、民商法雑誌に2度の特集を組んだほか、ヨーロッパにおける不当利得法の比較の概観につき飜訳を発表した。こうした比較法の動向の研究をふまえ、日本私法学会第75回大会において、シンポジウム『不当利得法の現状と展望』において、成果を学会に問う形でまとめた。