- 著者
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鈴木 厚
大曾根 康夫
美田 誠二
小花 光夫
松岡 康夫
入交 昭一郎
- 出版者
- The Japan Society for Clinical Immunology
- 雑誌
- 日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, no.1, pp.21-29, 1997-02-28 (Released:2009-02-13)
- 参考文献数
- 17
- 被引用文献数
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膠原病,感染症,悪性腫瘍など様々な疾患が不明熱の原因として知られているが,不明熱の中には最後まで診断が不明のままである症例を経験することはけっして希ではない.不明熱における診断不明例,つまり様々な検査をおこなっても最終診断がつかない症例は不明熱患者全体の7~35%を占めるとされ,過去30年の医学の進歩にも関わらず減少していない.今回,われわれは1991年9月より3年間に当院内科に入院した4596例を調査し,ステロイド剤が著効を示した診断不明の不明熱例について検討した.まず4596例の中でPetersdorfの不明熱の定義を満たした症例は25例(0.5%)であった.この25例の中には膠原病6例,感染症5例,悪性新生物2例,その他2例が含まれており,最終診断不明例は10例であった. 10例にはウイルス感染を思わせる自然寛解例が3例,原因不明のまま死亡した例が1例含まれており,残り6例が診断に難渋しながら平均30.8病日目にステロイド剤を投与し発熱の改善を認めた診断不明の不明熱例(steroid responsive undiagnosed fever of unknown origin: SR-FUO)であった. SR-FUOは高熱とともに重症感を認めること,著明な炎症所見を示し各種検査にても原病不明であること,成人発症スチル病やリウマチ性多発筋痛症など既知の疾患を示唆する所見がないこと,発症年齢が58歳から77歳(平均67歳)と高齢であること,抗生剤,抗結核剤,抗真菌剤の投与にて改善がみられないこと,臨床的に非ステロイド性消炎鎮痛剤が無効であること,薬剤によるものを否定し得た症例であること,ステロイド剤の投与により自他覚所見の著明な改善を認めること,ステロイド剤の減量,中止により再発を認めず比較的予後良好であること,などの特徴を有していた.不明熱の診断には医師の診断能力に差があること,安易なステロイド剤の投与は診断をさらに困難にしてしまうこと,感染症が原因である場合症状の悪化をきたすことなどよりステロイド剤の投与は慎重でなければいけない.しかし,不明熱の診断および治療に難渋する症例の中には,既知の疾患では説明のつかないステロイドが著効を呈する疾患群SR-FUOがあると考えられた.