著者
髙間 晴之 太田 明雄 布施 純郎 久保田 章 小花 光夫 関口 信哉 田中 逸
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.753-758, 2013-10-30 (Released:2013-11-07)
参考文献数
19

HMG-Co A還元酵素阻害薬が糖代謝に及ぼす影響を検討する目的で,非肥満の高LDLコレステロール血症を合併する2型糖尿病患者を対象に,ロスバスタチン2.5 mgとアトルバスタチン10 mgのクロスオーバー試験を行った.薬剤開始前および両剤開始3カ月後に,75 g-OGTTを施行して糖代謝の指標を比較した.その結果,FPGとHbA1cは開始前と各薬剤投与後の変化はなかったが,グリコアルブミンはアトルバスタチン服用後で有意に上昇した.75 g-OGTTから得られる血糖とインスリンの変動曲線下面積,HOMA-Rとwhole body insulin sensitivity index,およびinsulinogenic indexは各薬剤投与前後や両剤間での有意差はなかった.さらに膵β細胞機能を示すdisposition indexも投与前後や両剤間での有意差を認めなかった.以上から少なくとも低用量ロスバスタチン(2.5 mg)は非肥満2型糖尿病の短期間の血糖コントロールに影響しない可能性が示唆された.
著者
小花 光夫
出版者
日本環境感染学会
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.15, no.Supplement, pp.37-41, 2000-05-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
8

病院内では数多くの微生物が病院感染を惹起する可能性を有しているが, 現在のところ腸内細菌群を中心としたグラム陰性桿菌の中ではMRSAや緑膿菌ほどに問題化している菌種はみられない. しかし, セラチア・マルセッセンス (Serratia maroesoens) などの一部の菌種は弱毒菌であっても汎用消毒薬に抵抗性を有していること, また, 本菌群のかなり多くのものがβ-ラクタム系薬剤を初めとした多種の抗菌薬に対して耐性を有していることなどから, 従来から本菌群は病院感染起炎菌として注目されていた. このことは, 新規のβ-ラクタム系 (特に, 第3世代セフェム系) 薬剤の開発が一時期本菌群に対して向けられていたことからも裏付けられ, その結果として, 本菌群の病院感染起炎菌としての重要性は一時的にはやや減少をみた. しかし, 近年, 基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生菌やメタローβ-ラクタマーゼ産生菌などのような新たな耐性菌が出現してきたことから, 本菌群の病院感染起炎菌としての重要性は再び増加しつつあり, しかも今後益々助長されるものと考えられ, 本菌群の動向には今後とも十分な監視と対応が必要といえる. 本稿では, 大腸菌 (Escherichia coli), サルモネラ (Salmonella spp.), クレブシェラ・ニューモニエ (Klebsiella pneumoniae), エンテロバクター (Enterobaoter spp.), セラチア・マルセッセンス (Serratia marcescens) などについて病院感染起炎菌という観点から感染経路や病原性などについて述べた.
著者
小花 光夫 花田 徹野 太田 修二 松岡 康夫 入交 昭一郎 福田 純也
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.349-354, 1993-04-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
19

A 62-year-old woman, who had been diagnosed as having rheumatoid arthritis (RA) with systemic amyloidosis and diabetes mellitus, was admitted to our hospital because of polyarthralgia on October 1, 1987. She had some subcutaneous nodules and rheumatic pleural effusion. Therefore she was treated with 20 milligrams of prednisolone (PSL) daily. On the ninth day after the beginning of steroid therapy, she complained of severe pain and a new swelling in her right knee joint. The knee joint aspirate on arthrocentesis yielded a pure growth of group B Streptococcus (GBS). Blood culture was also positive for GBS. Her suppurative arthritis gradually improved by treatment with penicillin G. However, after the discontinuance of PSL, her pleural effusion deteriorated and she died on January 10, 1988.To our knowledge, there have been no prior reports of group B streptococcal suppurative arthritis complicating RA in Japan.
著者
鈴木 厚 大曾根 康夫 美田 誠二 小花 光夫 松岡 康夫 入交 昭一郎
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.21-29, 1997-02-28 (Released:2009-02-13)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

膠原病,感染症,悪性腫瘍など様々な疾患が不明熱の原因として知られているが,不明熱の中には最後まで診断が不明のままである症例を経験することはけっして希ではない.不明熱における診断不明例,つまり様々な検査をおこなっても最終診断がつかない症例は不明熱患者全体の7~35%を占めるとされ,過去30年の医学の進歩にも関わらず減少していない.今回,われわれは1991年9月より3年間に当院内科に入院した4596例を調査し,ステロイド剤が著効を示した診断不明の不明熱例について検討した.まず4596例の中でPetersdorfの不明熱の定義を満たした症例は25例(0.5%)であった.この25例の中には膠原病6例,感染症5例,悪性新生物2例,その他2例が含まれており,最終診断不明例は10例であった. 10例にはウイルス感染を思わせる自然寛解例が3例,原因不明のまま死亡した例が1例含まれており,残り6例が診断に難渋しながら平均30.8病日目にステロイド剤を投与し発熱の改善を認めた診断不明の不明熱例(steroid responsive undiagnosed fever of unknown origin: SR-FUO)であった. SR-FUOは高熱とともに重症感を認めること,著明な炎症所見を示し各種検査にても原病不明であること,成人発症スチル病やリウマチ性多発筋痛症など既知の疾患を示唆する所見がないこと,発症年齢が58歳から77歳(平均67歳)と高齢であること,抗生剤,抗結核剤,抗真菌剤の投与にて改善がみられないこと,臨床的に非ステロイド性消炎鎮痛剤が無効であること,薬剤によるものを否定し得た症例であること,ステロイド剤の投与により自他覚所見の著明な改善を認めること,ステロイド剤の減量,中止により再発を認めず比較的予後良好であること,などの特徴を有していた.不明熱の診断には医師の診断能力に差があること,安易なステロイド剤の投与は診断をさらに困難にしてしまうこと,感染症が原因である場合症状の悪化をきたすことなどよりステロイド剤の投与は慎重でなければいけない.しかし,不明熱の診断および治療に難渋する症例の中には,既知の疾患では説明のつかないステロイドが著効を呈する疾患群SR-FUOがあると考えられた.