著者
日置 佳之 須田 真一 百瀬 浩 田中 隆 松林 健一 裏戸 秀幸 中野 隆雄 宮畑 貴之 大澤 浩一
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.43-89, 2000-08-10 (Released:2018-02-09)
参考文献数
97
被引用文献数
3

東京都練馬区にある東京都立石神井公園周辺の1930〜40年代と1980〜90年代における生物相を50余点の文献から明らかにした.また,同地のランドスケープを地図と空中写真を用いて縮尺1/2,500で図化した.2つの年代間で生物相の比較を行ったところ,すべての分類群で種の多様性が顕著に低下していることが明らかになった.また,ランドスケープの変化を地理情報システムによって分析した結果,樹林地は比較的高い率で残存していたものの,草地,湿地は大きく減少し,水路などの流水域と湧水はほぼ完全に消失していた.開放水面の面積は微増し,市街地は大幅に増加していた.同地域における種多様性の変化要因を明らかにするためにギルド別の種数変化と生育(息)地の規模変化の関係を求めた結果,種数の変化は生育(息)地の規模変化に対応していることが認められた.また,ギルドによって,生育(息)地の分断化に対する抵抗性に差異が認められた.研究の結果,地域において種多様性を保全するためには,生育(息)地として機能するランドスケープ要素(生態系)の多様性を確保することが不可欠であることが示唆された.
著者
日置 佳之 百瀬 浩 水谷 義昭 松林 健一 鈴木 明子 太田 望洋
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.759-764, 2000-03-30
被引用文献数
7 6

鳥類の生息環境保全の観点を取り入れた湿地植生計画の立案手法を開発する目的で,国営みちのく杜の湖畔公園のダム湖畔湿地(面積約38ha)において鳥類の潜在的生息地の図化とそれに基づくシナリオ分析を行った。まず,鳥類の分布と現存植生の関係をGISによって分析し,類似の植生を選好する鳥類のグループ(ギルド)を,サンプルエリア内の植生の面積を説明変数とするクラスター分析で抽出した。次に,植生の面積を用いた正準判別分析により,各ギルドが選好する植生の組合せを求め,ギルドの分布予測モデルを構築した。3番目にこれを適用して調査地全域における鳥類の生息地タイプ図を作成した。最後に,人為的に植生を変化させる2種類のシナリオによって,潜在的生息地がどう変化するか予測し,これを基に植生計画を検討した。