著者
福田 誠治 遠藤 忠 岩崎 正吾 袴田 邦子 関 啓子 松永 裕二
出版者
都留文科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、これまでの経験の蓄積をもちながらすでに変化を始めているロシアをフィールドとして、教育の多様化・個別化を総合的に検討しながら、英才教育の歴史的展開の研究、今日の学校多様化の実地研究、学校多様化の制度モデルの構築を行うことである。初年度はモスクワ、ヤロスラブリ、カザン、また次年度はモスクワ、サマーラ、ノボシビルスクの現地調査を行った。これによって政策、実施状況、実施上の問題点などを明らかにしてきた。これと関連して、2003年3月には「ロシアにおける英才教育と学校の多様化・個性化に関する総合的調査研究-中間報告」を、および2004年9月には「ロシアにおける英才教育と学校の多様化・個性化に関する総合的調査研究-中間報告2」を編集し、刊行した。また、ロシアにおけるエリート教育の国内研究として月1回の研究会と年1回の合宿を継続した。これは、研究分担者がそれぞれの専門性を発揮して研究を進め、毎月、国立教育政策研究所を会場にして研究会を開催するものである。とりわけ、今年度は、ロシアからの行政関係者ならびに研究者を招聘した国際会議を開催し、会議資料を編集・刊行した。国際会議は、2004年11月22日に、国立教育政策研究所(東京都目黒区)にて開催された。川野辺敏「あいさつ」に引き続いて、モスクワ市教育政庁普通教育局長オリガ・ジェルジツカヤ氏が「モスクワ市における英才教育の実践と課題」を報告し、質疑応答に入った。続いて、ロシア連邦教育科学アカデミー心理学研究所ナタリヤ・シュマコーワ氏が「英才を育てる、『星座』の実践から」を報告し、質疑応答を行った。さらに、ジェルジツカヤ、シュマコーワ、福田誠治でパネルディスカッション「ロシアの英才教育」を行った。参加者は、国立教育研究所などの研究員と、関東近県のスーパーハイスクールの教員、国内ロシア教育研究者、および本研究の研究参加者など30名余である。以上の成果をもとに、成果報告書を作成した。さらに、この成果は、2005年6月の比較教育学会にて共同発表される。
著者
松永 裕二 マツナガ ユウジ MATSUNAGA YUJI
出版者
西南学院大学学術研究所
雑誌
西南学院大学人間科学論集 (ISSN:18803830)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.111-145, 2017-02

文部科学省の「平成26年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」によれば、2014年度に9,677人の教職員が懲戒処分等(訓告等を含む)を受けた(前年度から183人の増加)。そのうち体罰で懲戒処分等を受けたのは952人で、前年度(2013年度)の3,953人に比べると3,000人も減少した。2012年度に体罰で懲戒処分等を受けた教職員数は2,253人であった。2014年度に体罰による懲戒処分者がこのように激減したのには理由がある。2012年12月に大阪市立桜宮高校の男子学生が部活顧問による体罰を苦にして自殺をするという痛ましい事件が起こった。これを受けて文部科学省が緊急の体罰実態調査を実施したところ、2012年度に公立学校で5,415人の教員が体罰を加えていたことが判明した。2012、2013年度と2年連続でこれらの体罰教員が大量に処分された結果、2014年度には処分者数が952人に落ち着いたというわけである。この952人という数字をどのように理解するべきなのだろうか。実は、文部科学省の統計によれば、体罰による懲戒処分者数は2002~2011年度の過去10年間平均で414人に過ぎなかった2。この数字と比べると2014年度の体罰による処分者数は例年の2.3倍だったことになるが、今後は400人程度という例年の数字に落ち着くようになるのであろうか。しかし、緊急調査を行えば体罰教員が急増し処分者も増えるがその嵐が去ってしまえばまたもとに戻るというのであれば、これは何とも奇妙な話ではないか。言うまでもなく、体罰による処分はその体罰が摘発されない限り実施されることはない。処分された教員はまさに氷山の一角であり、その下には多くの体罰教員が潜んでいる可能性が高い。教員集団だけでなく保護者や児童・生徒が体罰を見過ごしたり甘受したりする背景の一つには、体罰についての認識の甘さや誤解、「子どもの権利」意識の不徹底などが横たわっているように思われる。このような認識のもとに、筆者は、本学での担当科目「教師論」にて教員の体罰問題を積極的に取り上げるのみならず、2015年度からはPTA 会員(主として役員・委員)を対象に体罰根絶のための講演活動に取り組んでいる。本稿はその活動の評価報告である。最初に、その講演の内容について概説し、次いで、講演参加者の感想に基づいて講演の成果と課題を浮き彫りにする。最後にこのような活動を今後さらに充実する上で必要な条件などについて考察し結論に代えることにする。
著者
嶺井 明子 関 啓子 遠藤 忠 岩崎 正吾 川野辺 敏 水谷 邦子 森岡 修一 福田 誠治 松永 裕二 澤野 由紀子 大谷 実 高瀬 淳 木之下 健一 タスタンベコワ クアニシ デメジャン アドレット ミソチコ グリゴリー アスカルベック クサイーノフ セリック オミルバエフ 菅野 怜子 サイダ マフカモワ 伊藤 宏典 アブドゥジャボル ラフモノフ ズバイドゥッロ ウバイドゥロエフ
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

中央アジア4カ国は独立国家樹立後、国連やユネスコ加盟を果たし、脱・社会主義、民主的法治国家の樹立をめざし教育改革に着手した。国外からの協力と援助(ユネスコ、国際援助機関、ロシアなど)、及び国内事情(多民族国家、イスラム的伝統、都市と農村の格差、経済の人材需要など)の葛藤の中で教育政策が推進されている。初等中等教育の高い就学率、教育の世俗制、多民族への配慮などソ連時代からの正の遺産を多く継承しているが、教育へ市場原理が導入され競争的環境が強化されている。高等教育ではボローニャ・プロセスに対応した改革が進んでおり、無償制は後退している。