著者
松谷 綾子 左右田 裕生 関 啓子
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 看護学・リハビリテーション学編 = Studies in nursing and rehabilitation (ISSN:18825788)
巻号頁・発行日
no.2, pp.51-58, 2009-03-19

妊娠中の腰痛はマイナートラブルとされているが、妊婦の多くが腰痛を経験していることから、避けられない問題であると考えられる。本研究の目的は、先行研究で採用した前額面の姿勢アライメントと腰部脊柱起立筋の筋硬度と腰痛について、妊娠中から出産後の変化パターンを明らかにすることである。対象群は、初産婦26名とコントロール群11名であった。その結果、①妊娠34週で腰痛を訴える人が増加するがその後有意に変化しない、②腰痛部の罹患は産前産後を通して変化しない、③仙腸関節周辺部痛の罹患と骨盤の水平方向への開きは、妊娠36週に増加し出産後1ヶ月で減少するパターンを呈する、④筋硬度は妊娠後期に左右非対称に高くなり、出産後約1ヶ月まで継続することが明らかとなった。出産後の女性の身体状況の回復には約1ヶ月かかると考えられることから、出産後の生活を考慮した指導を妊娠中に実施する必要があることが示唆された。
著者
余野 聡子 西上 智彦 壬生 彰 田中 克宜 安達 友紀 松谷 綾子 田辺 暁人 片岡 豊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0311, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】中枢性感作(Central Sensitization:CS)とは中枢神経系の過度な興奮によって,疼痛,疲労,集中困難及び睡眠障害などの症状を引き起こす神経生理学的徴候である。CSは線維筋痛症,複合性局所疼痛症候群及び慢性腰痛などの病態に関与していることが明らかになっていることから,慢性痛に対して,CSの概念を考慮した評価及び治療介入が必要である。近年,CSの評価として,自記式質問紙であるCentral Sensitization Inventory(CSI)がスクリーニングツールとして開発され,臨床的有用性が報告されているが,CSIの日本語版は作成されていない。そこでCSIの原版を日本語に翻訳し,その言語的妥当性を検討した。【方法】日本語版CSIの開発に先立って,原著者から許可を得た。その後,言語的に妥当な翻訳版を作成する際に標準的に用いられる手順(順翻訳→逆翻訳→パイロットテスト)に従って開発を進めた。順翻訳,逆翻訳を行い原著者とともに翻訳案の検討を行い,原版との内容的な整合性を担保した日本語暫定版を作成した。日本語暫定版の文章表現の適切性,内容的妥当性,実施可能性を検討するため,日本語を母国語とし,当院に来院する外来患者6名(男性:3名,女性:3名,平均年齢51.8歳)を対象に個別面談方式によるパイロットテストを実施した。回答終了後,質問紙に関するアンケートを行い,「はい」「いいえ」「どちらでもない」の3択で参加者に回答を求めた。【結果】原著者に逆翻訳版にて確認を行ったところ,Q11は“I feel discomfort in my bladder and/or burning when I urinate”を“.排尿時に,膀胱に不快感や灼熱感を感じる”としたが,灼熱感は膀胱ではなく性器に生じるとの指摘を受け,“膀胱の不快感と排尿時の灼熱感の両方,またはいずれか一方を感じる”と表現を変更し,了承を得た。Q17は原文では“low energy”となっているが逆翻訳では“no energy”となっているとの指摘を受けたが,同義語であることを説明し了承を得た。また“and/or”と“and”の違いを明確に区別するべきとの指摘を受け,“両方またはいずれか”との表現へ変更した。パイロットテストでの質問票の平均回答時間は219.5秒(範囲:158~314,中央値:207)であった。回答後アンケートでは回答に要する時間,質問数が適当であるかという問いに対して5名が「はい」,1名が「どちらでもない」と回答した。全体的にわかりやすかったかとの問いに対して1名が 「いいえ」と回答し,理由として5つの選択肢の差別化が図りにくいとの意見が得られた。そこで選択肢を差別化しやすい表現に変更し,日本語版CSIを完成させた。【結論】本研究において翻訳版開発の標準的な手続きを経て日本語版を作成し,さらにパイロットテストを実施することで内容の妥当性や表現の適切性が確認され,実施可能性のある日本語版CSIが完成した。今後,臨床的に使用するために信頼性と妥当性の検討を行う必要がある。
著者
松尾 善美 Cahalin Lawrence Collins Sean 松谷 綾子 Caro Francis
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.G1129, 2007

【はじめに】理学療法(以下PT)の教育および専門職としての現状(以下PTEPI)に関する情報は、世界のあらゆる地域においても未だ少ない。PTEPIについて理解を深めることは、全世界のPT実践、教育・研究分野を刺激することになる。さらに、国際的な協力事業、世界的なPT実践、研究に関する指針の開発やわが国の今後のPTを考える際に有用であると考えられる。<BR>【目的】本国際共同研究の目的は、世界40カ国のPTEPIについての調査し、世界におけるPTの教育および専門職としての今後の展望を得ることである。<BR>【対象】対象は、世界理学療法連盟から情報の得られた40カ国のPT協会の連絡先代表者である。<BR>【方法】我々は、PT教育課程の認可制度、PTの資格取得制度、PT専門分野の認可制度、理学療法士の所得関連事項の4カテゴリー、全部で22項目からなる調査表を英語で作成し、5カ国語(日本語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語、韓国語)に翻訳した。次に、40カ国の連絡先代表者に依頼文書と調査用紙を同時に電子メールで送付した。同意を得られた回答について記述的統計を行った。本研究は、財団法人ファイザーヘルスリサーチ振興財団の助成を受けて実施した。<BR>【結果】回答率は38%であった。回答の大多数は北欧およびヨーロッパ諸国であり、中央アメリカおよび南アメリカからは2カ国のみから回答を得た。PTEPIは、1カ国を除いて資格認定制度と理学療法士教育の認可課程を有しており、5カ国を除いてスポーツPTと老年PTが最も普及しており(80%)、専門職認定課程を有していたという点については共通点が見られたが、それ以外の多くの項目において各国間で明らかな相違点があった。養成校の認可再認可の頻度は、1回のみ(20%)、1年毎(20%)、5年毎(13%)、6年毎(27%)と広範囲の回答であった。理学療法士の資格取得に、53%の国では筆記試験、40%の国では実技試験、27%の国では口答試験を必要としていた。13カ国のPT平均年収は32,203±20,030USドルであった。<BR>【結論】PTEPIは、認可課程や資格取得、専門分野の確立について共通点が多かったが、それ以外については各国間で大きな相違点が確認できた。<BR><BR>