著者
友田 尋子 三木 明子 宇垣 めぐみ 河本 さおり
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 看護学・リハビリテーション学編 = Studies in nursing and rehabilitation (ISSN:18825788)
巻号頁・発行日
no.4, pp.69-77, 2010-03-18

保健医療従事者は暴力の危険が高い職業の1つであることが示され、医療現場での暴力の実態について報告がなされている。看護の職場における労働安全衛生ガイドラインによると、看護管理者が暴力の実態を認識しても十分に組織的対策を講じているとはいえない現状がみえている。総合病院や病院内の全職種において、暴力被害の実態や対応について十分に検討されていない。本研究の目的は、病院職員を対象に職種別に患者暴力の被害実態を明らかにすることとし、本研究では総合病院の全職員を対象とし、職種別の暴力の経験を検討することとした。経験した職員が少なかった栄養士・調理師及びその他を除いた医師、看護職、薬剤師、検査技師、事務職で検討した結果、過去1年間に患者暴力の被害経験がある病院職員は56.4%(男性35.7%、女性63.8%)であった。職種別にみると、看護職が67.5%、事務職50.0%、検査技師39.5%であり、患者暴力の被害経験率が最も低かった職種は医師34.6%であり、職種によって患者暴力の被害経験率に開きがあった。暴力の種類別の被害経験率は、精神的暴力46.7%、身体的暴力25.7%、性的暴力19.7%の順であった。職種別にみると、全職種において精神的暴力の被害経験率が最も高かった。性別にみると、身体的暴力、精神的暴力、性的暴力のいずれにおいても女性が男性より患者暴力の被害経験率が高かった。職種および性別は身体的暴力、精神的暴力、性的暴力と有意に関連していた。年代および経験年数は身体的暴力、精神的暴力と有意に関連していた。
著者
川勝 邦浩
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 看護学・リハビリテーション学編 = Studies in nursing and rehabilitation (ISSN:18825788)
巻号頁・発行日
no.6, pp.1-7, 2012-03-18

本来、理学療法は治療技術であり、リハビリテーションは理念である。理学療法とリハビリテーションは全く意味の違う用語であるが、新聞紙上やテレビ放送のニュース、病院内や教育場面で同義語のように使用されていることは多い。スポーツ選手の外傷後の機能回復を指して「リハビリ中です」と使われることはよくある。理学療法士が治療内容を患者に説明する時、「リハビリを行います」という言葉はよく聞かれる。理学療法士養成校へ入学してくる学生は、理学療法士が行うことは「リハビリ」だと思っている者は多い。何故、それらが同義語として使用されているのであろうか。少なくともリハビリテーションに関わる者は、その意味を正しく理解し広める責務がある。本稿では、「理学療法」と「リハビリテーション」の本来の意味を明確にし、これらの用語の適切な使用について、理学療法とリハビリテーションの歴史から考察する。
著者
松谷 綾子 左右田 裕生 関 啓子
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 看護学・リハビリテーション学編 = Studies in nursing and rehabilitation (ISSN:18825788)
巻号頁・発行日
no.2, pp.51-58, 2009-03-19

妊娠中の腰痛はマイナートラブルとされているが、妊婦の多くが腰痛を経験していることから、避けられない問題であると考えられる。本研究の目的は、先行研究で採用した前額面の姿勢アライメントと腰部脊柱起立筋の筋硬度と腰痛について、妊娠中から出産後の変化パターンを明らかにすることである。対象群は、初産婦26名とコントロール群11名であった。その結果、①妊娠34週で腰痛を訴える人が増加するがその後有意に変化しない、②腰痛部の罹患は産前産後を通して変化しない、③仙腸関節周辺部痛の罹患と骨盤の水平方向への開きは、妊娠36週に増加し出産後1ヶ月で減少するパターンを呈する、④筋硬度は妊娠後期に左右非対称に高くなり、出産後約1ヶ月まで継続することが明らかとなった。出産後の女性の身体状況の回復には約1ヶ月かかると考えられることから、出産後の生活を考慮した指導を妊娠中に実施する必要があることが示唆された。
著者
郷良 淳子
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 看護学・リハビリテーション学編 = Studies in nursing and rehabilitation (ISSN:18825788)
巻号頁・発行日
no.4, pp.181-187, 2010-03-18

30年近く入院している非定型精神病の女性患者Aさんとの語りを中心としたケーススタディーから、患者の「退屈」と「現実感覚を促す看護」について考察した。Aさんは、強迫症状を持ち、医療者にとって理解が困難な患者であった。しかし、散歩を中心とした看護者である筆者との週1回の1年半の関わりにおいて、理解困難と思われた精神症状の意味と健康的側面を見出すことができた。理解困難と思われる症状は、患者が訴えない「退屈」という症状である可能性が示唆され、散歩は、不安の伴わないメリハリのきいた時間感覚と現実感覚を持つことに繋がっていると考えられた。理解困難と思われる患者とも理解可能という信念を持ち、患者が語れる機会を提供すること、患者の語りと患者の行動と生きてきた歴史をつなげて理解することが、慢性期の精神科患者のケアのあり方を探る上で重要であることが示唆された。
著者
友田 尋子 三木 明子 宇垣 めぐみ 河本 さおり
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 看護学・リハビリテーション学編 = Studies in nursing and rehabilitation (ISSN:18825788)
巻号頁・発行日
no.4, pp.69-77, 2010-03-18

保健医療従事者は暴力の危険が高い職業の1つであることが示され、医療現場での暴力の実態について報告がなされている。看護の職場における労働安全衛生ガイドラインによると、看護管理者が暴力の実態を認識しても十分に組織的対策を講じているとはいえない現状がみえている。総合病院や病院内の全職種において、暴力被害の実態や対応について十分に検討されていない。本研究の目的は、病院職員を対象に職種別に患者暴力の被害実態を明らかにすることとし、本研究では総合病院の全職員を対象とし、職種別の暴力の経験を検討することとした。経験した職員が少なかった栄養士・調理師及びその他を除いた医師、看護職、薬剤師、検査技師、事務職で検討した結果、過去1年間に患者暴力の被害経験がある病院職員は56.4%(男性35.7%、女性63.8%)であった。職種別にみると、看護職が67.5%、事務職50.0%、検査技師39.5%であり、患者暴力の被害経験率が最も低かった職種は医師34.6%であり、職種によって患者暴力の被害経験率に開きがあった。暴力の種類別の被害経験率は、精神的暴力46.7%、身体的暴力25.7%、性的暴力19.7%の順であった。職種別にみると、全職種において精神的暴力の被害経験率が最も高かった。性別にみると、身体的暴力、精神的暴力、性的暴力のいずれにおいても女性が男性より患者暴力の被害経験率が高かった。職種および性別は身体的暴力、精神的暴力、性的暴力と有意に関連していた。年代および経験年数は身体的暴力、精神的暴力と有意に関連していた。
著者
瀬藤 乃理子 坂下 裕子 黒川 雅代子 井上 ひとみ 山田 至康 森島 恒雄
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 看護学・リハビリテーション学編 = Studies in nursing and rehabilitation (ISSN:18825788)
巻号頁・発行日
no.1, pp.87-93, 2008-03-20

子どもの突然の死は,その家族にとって極めて外傷的な喪失体験であり,回復に向かう悲嘆過程は非常に困難なものとなる。その影響は,両親の感情面や世界観,生活や人生そのもの,家族システム,遺された子どもたちなど,多方面に多大な影響を与える。本稿では,小児救急における家族援助の重要性について述べ,子どもの死が予測された時点から死後まで継続的に行われることが推奨される医療従事者によるグリーフケアについて考察した。特に,インフルエンザ脳症のグリーフケアガイドラインの中で提唱した具体的な援助方法と,遺族に手渡す「グリーフカード」を紹介した。
著者
江島 仁子
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 看護学・リハビリテーション学編 = Studies in nursing and rehabilitation (ISSN:18825788)
巻号頁・発行日
no.2, pp.27-34, 2009-03-19

本研究の目的は、切迫早産により入院中の妊婦が、入院期間を通して変化していく自分の状況と医療職者の言動を妊婦がどのように感じとらえているのか、その時々の妊婦の思いを明らかにすることである。研究方法は切迫早産と診断され入院している妊婦3名を対象に参加観察法およびインタビューによりデータ収集を行い、内容の分析を行った。その結果①正期産近くになると妊婦の不安や不満は増加していくこと②妊婦は本音を言葉や態度に隠しているが看護者が察知してくれることを期待していること③看護者の日常のケアから喜びを得ていること、と医療職者に表出しなかった想いや医療職者への望みなどが明らかになった。以上より、異常から正常への移行期にある妊婦への関わり方、妊婦の思いを尊重した上で医療やケアを提供することの重要性が示唆された。
著者
郷良 淳子
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 看護学・リハビリテーション学編 = Studies in nursing and rehabilitation (ISSN:18825788)
巻号頁・発行日
no.4, pp.181-187, 2010-03-18

30年近く入院している非定型精神病の女性患者Aさんとの語りを中心としたケーススタディーから、患者の「退屈」と「現実感覚を促す看護」について考察した。Aさんは、強迫症状を持ち、医療者にとって理解が困難な患者であった。しかし、散歩を中心とした看護者である筆者との週1回の1年半の関わりにおいて、理解困難と思われた精神症状の意味と健康的側面を見出すことができた。理解困難と思われる症状は、患者が訴えない「退屈」という症状である可能性が示唆され、散歩は、不安の伴わないメリハリのきいた時間感覚と現実感覚を持つことに繋がっていると考えられた。理解困難と思われる患者とも理解可能という信念を持ち、患者が語れる機会を提供すること、患者の語りと患者の行動と生きてきた歴史をつなげて理解することが、慢性期の精神科患者のケアのあり方を探る上で重要であることが示唆された。
著者
吾妻 知美
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 看護学・リハビリテーション学編 = Studies in nursing and rehabilitation (ISSN:18825788)
巻号頁・発行日
no.5, pp.1-11, 2011-03-18

本研究の目的は、看護基礎教育における基礎看護学および基礎看護技術の位置づけを明確にし、基礎看護技術の教育の内容構成を検討することである。『保健師助産師看護師学校養成所指定規則』に基礎看護学と基礎看護技術が明示されてから20年余りすぎようとしている。その間、基礎看護学の教育内容は教育機関の自由裁量が可能になったにも関わらず、基礎看護学の目指すものは何なのかについて議論されたことはなく、その内容は『指定規則』が制定された当時とほとんど変わっていない。看護実践能力を育成するためには、基礎看護学において"看護とは何か""看護実践とは何か""看護学とは"といった看護の専門性を追求することは重要であると考える。さらに、これらの学問的な基礎付けに裏付けられた基礎看護技術の教育内容を検討することは、看護界の大きな課題である看護実践能力育成のための示唆を与えるものとなる。
著者
前田 勇子
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 看護学・リハビリテーション学編 = Studies in nursing and rehabilitation (ISSN:18825788)
巻号頁・発行日
no.4, pp.211-221, 2010-03-18

三次救急医療機関において入院治療を受けた重度外傷患者を対象に外傷体験が心理面に及ぼす影響を検討した。切断指・肢、多発外傷、多発骨折などの患者58名を対象として、退院後3~10ヵ月目にアンケート調査を行い、30名(51.7%、男性21名、女性9名)から回答を得た。Impact of Event Scale-Revised(IES-R)は、19.6±15.9点であり、25点以上の強いストレス下にある患者は33.3%であった。Hospital Anxiety Depression Scale(HADS)の不安は4.6±2.7点、抑うつは4.9±3.8点であり、不安、抑うつの可能性がある8点以上の患者はそれぞれ16.7%、23.3%であった。仕事・家事への復帰、趣味・娯楽活動の再開、退院後のセルフケア、生活の満足度は、それぞれHADS抑うつと関係した。重度外傷患者では、退院後も長期にわたり心理的ストレス、不安、抑うつが生じることから、患者の心理面をふまえたサポートの重要性が示された。
著者
前田 勇子
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 看護学・リハビリテーション学編 = Studies in nursing and rehabilitation (ISSN:18825788)
巻号頁・発行日
no.4, pp.211-221, 2010-03-18

三次救急医療機関において入院治療を受けた重度外傷患者を対象に外傷体験が心理面に及ぼす影響を検討した。切断指・肢、多発外傷、多発骨折などの患者58名を対象として、退院後3~10ヵ月目にアンケート調査を行い、30名(51.7%、男性21名、女性9名)から回答を得た。Impact of Event Scale-Revised(IES-R)は、19.6±15.9点であり、25点以上の強いストレス下にある患者は33.3%であった。Hospital Anxiety Depression Scale(HADS)の不安は4.6±2.7点、抑うつは4.9±3.8点であり、不安、抑うつの可能性がある8点以上の患者はそれぞれ16.7%、23.3%であった。仕事・家事への復帰、趣味・娯楽活動の再開、退院後のセルフケア、生活の満足度は、それぞれHADS抑うつと関係した。重度外傷患者では、退院後も長期にわたり心理的ストレス、不安、抑うつが生じることから、患者の心理面をふまえたサポートの重要性が示された。
著者
瀬藤 乃理子 岡崎 伸 鍋谷 まこと 藤井 美和 山田 美智子 多田羅 竜平
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 看護学・リハビリテーション学編 = Studies in nursing and rehabilitation (ISSN:18825788)
巻号頁・発行日
no.5, pp.187-192, 2011-03-18

2010年2月に世界初の子どものホスピスであるイギリスのヘレンハウス(現ヘレン&ダグラスハウス)を訪問した。そこでは、成人まで生きることが難しいと予測されるLTC(Life-threatening conditions)の子どもたちとその家族に対し、看護師による1対1の手厚いケアと、多領域の専門職やボランティアによる多くの楽しいプログラムが提供されていた。イギリスの子どものホスピスの機能は終末期だけでなく、家族の休息の提供(レスパイト)、緊急ステイ、病状管理、24時間の電話相談などが、子どもに死が訪れるまで、長期間にわたって継続されていた。また、死別後の家族に対するサポートプログラムも充実していた。ここでは、視察で得たイギリスの子どものホスピスの実情と、その理念や運営について紹介する。