著者
西上 智彦 壬生 彰
出版者
保健医療学学会
雑誌
保健医療学雑誌 (ISSN:21850399)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.45-51, 2014-04-01 (Released:2014-07-31)
参考文献数
31
被引用文献数
2

痛みに対しての知見はアメリカ議会の2001 年からの“痛みの10 年”宣言の影響もあり,ここ10 年で飛躍的に進歩してきた.しかしながら,未だ本邦におけるリハビリテーション現場において臨床応用されてないのが現状である.今回,臨床での実践に役立つように痛みの「感覚的側面」,「情動的側面」,「認知的側面」に対する各種評価と関節不動化の痛み,慢性腰痛,求心路遮断性疼痛に対してのリハビリテーション方略について概説する.
著者
余野 聡子 西上 智彦 壬生 彰 田中 克宜 安達 友紀 松谷 綾子 田辺 暁人 片岡 豊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
巻号頁・発行日
pp.0311, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】中枢性感作(Central Sensitization:CS)とは中枢神経系の過度な興奮によって,疼痛,疲労,集中困難及び睡眠障害などの症状を引き起こす神経生理学的徴候である。CSは線維筋痛症,複合性局所疼痛症候群及び慢性腰痛などの病態に関与していることが明らかになっていることから,慢性痛に対して,CSの概念を考慮した評価及び治療介入が必要である。近年,CSの評価として,自記式質問紙であるCentral Sensitization Inventory(CSI)がスクリーニングツールとして開発され,臨床的有用性が報告されているが,CSIの日本語版は作成されていない。そこでCSIの原版を日本語に翻訳し,その言語的妥当性を検討した。【方法】日本語版CSIの開発に先立って,原著者から許可を得た。その後,言語的に妥当な翻訳版を作成する際に標準的に用いられる手順(順翻訳→逆翻訳→パイロットテスト)に従って開発を進めた。順翻訳,逆翻訳を行い原著者とともに翻訳案の検討を行い,原版との内容的な整合性を担保した日本語暫定版を作成した。日本語暫定版の文章表現の適切性,内容的妥当性,実施可能性を検討するため,日本語を母国語とし,当院に来院する外来患者6名(男性:3名,女性:3名,平均年齢51.8歳)を対象に個別面談方式によるパイロットテストを実施した。回答終了後,質問紙に関するアンケートを行い,「はい」「いいえ」「どちらでもない」の3択で参加者に回答を求めた。【結果】原著者に逆翻訳版にて確認を行ったところ,Q11は“I feel discomfort in my bladder and/or burning when I urinate”を“.排尿時に,膀胱に不快感や灼熱感を感じる”としたが,灼熱感は膀胱ではなく性器に生じるとの指摘を受け,“膀胱の不快感と排尿時の灼熱感の両方,またはいずれか一方を感じる”と表現を変更し,了承を得た。Q17は原文では“low energy”となっているが逆翻訳では“no energy”となっているとの指摘を受けたが,同義語であることを説明し了承を得た。また“and/or”と“and”の違いを明確に区別するべきとの指摘を受け,“両方またはいずれか”との表現へ変更した。パイロットテストでの質問票の平均回答時間は219.5秒(範囲:158~314,中央値:207)であった。回答後アンケートでは回答に要する時間,質問数が適当であるかという問いに対して5名が「はい」,1名が「どちらでもない」と回答した。全体的にわかりやすかったかとの問いに対して1名が 「いいえ」と回答し,理由として5つの選択肢の差別化が図りにくいとの意見が得られた。そこで選択肢を差別化しやすい表現に変更し,日本語版CSIを完成させた。【結論】本研究において翻訳版開発の標準的な手続きを経て日本語版を作成し,さらにパイロットテストを実施することで内容の妥当性や表現の適切性が確認され,実施可能性のある日本語版CSIが完成した。今後,臨床的に使用するために信頼性と妥当性の検討を行う必要がある。
著者
余野 聡子 西上 智彦 壬生 彰 田中 克宜 萬福 允博 篠原 良和 田辺 曉人 三木 健司 行岡 正雄
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
巻号頁・発行日
pp.H2-162_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】中枢性感作(Central Sensitization:CS)とは中枢神経系の過度な興奮によって,疼痛,疲労,集中困難及び睡眠障害などの症状を引き起こす神経生理学的徴候である。CSを評価する指標として,末梢器官に対して侵害刺激を連続して加えたときに見られる痛みの時間的加重(Temporal summation: TS)が用いられている。また,CSが関与する包括的な疾患概念として中枢性感作症候群(Central Sensitivity Syndrome: CSS)が提唱されており,CSおよびCSSを評価する質問票としてCentral Sensitization Inventory (CSI)が用いられている。CSが病態(疼痛)に関与していると考えられている疾患の代表格である線維筋痛症(Fibromyalgia:FM)において,健常人と比較してTS,CSIがともに高値であることが報告されている.しかしながら,これまでにTSとCSIのどちらがCSを評価する上で,より精度が高い評価法であるか明らかでない.本研究の目的は,これらの評価指標の精度を比較し,その臨床的有用性について検討することである。 【方法】米国リウマチ学会(2010)の診断基準を満たす線維筋痛症患者26名(FM群, 男性3名,女性23名,平均年齢49.3±10.5歳)および健常人28名(健常群,男性7名,女性21名,平均年齢51.8±13.5歳)を対象とした。疼痛はBrief Pain Inventory (BPI)にて評価し,CSに関する指標としてTSおよびCSIを評価した。TS評価では,利き手側の橈側手根伸筋に対して圧痛閾値(pressure pain threshold: PPT)での圧刺激を10回反復し,1回目と10回目の疼痛強度(Numeric Rating Scale: NRS)の差をTSとした。これらの評価項目について,Mann-WhitneyのU検定を用いて群間比較した。また,PPT, TSおよびCSIについてReceiver operating characteristic (ROC)分析を行い,各指標のArea Under the Curve (AUC)の比較検定を行なった。また,FM群と健常群を判別するカットオフ値を算出した。統計学的有意水準は5%とした。【結果】BPI (pain intensity/pain interference), TSおよびCSIは健常群に比べてFM群で有意に高値であった(p < 0.05)。PPTは健常群に比べてFM群で有意に低値であった(p < 0.05)。ROC曲線のAUCは,TSに比べてCSIで有意に高値であった(TS: 0.66, CSI: 0.99, p < 0.0001)であった。各指標のカットオフ値はPPTが12.1N(感度64%, 特異度89%, 陽性反応的中度84%, 陰性反応的中度73%), TSが3(感度60%, 特異度67%,陽性反応的中度63%,陰性反応的中度84%), CSIが37点(感度96%, 特異度100%,陽性反応的中度100%,陰性反応的中度97%)であった。【結論(考察も含む)】TSおよびCSIの精度を比較した結果,TSよりもCSIの方が精度は高かった。FM患者はCSによって生じる多彩な臨床症状を呈することから,機械刺激への過敏性を評価するTSよりも,包括的かつ症候学的な評価であるCSIの精度がより高くなった可能性がある。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は甲南女子大学倫理委員会の承認を得て実施した。事前に研究目的と方法を十分に説明し,同意が得られた者のみを対象とした。
著者
柴田 政彦 渡邉 嘉之 寒 重之 西上 智彦 植松 弘進 宮内 哲 壬生 彰 大迫 正一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

身体部位(手)のメンタルローテーション課題を用いた心理物理学的実験では,上肢CRPS患者8名と健康成人40名のデータを取得した。両群の正答率および反応時間を比較した結果,健常者に比べCRPS患者で有意な正答率の低下と反応時間の遅延を認めた。健康成人のデータについては,これまで検討されてこなかった回転角度の増加に対する反応時間の変化にばらつきがあることに着目して統計学的解析を行った結果,4つのグループに分類することができ,「手の左右判別課題時には自身の手を動かす運動イメージを行っている」とする先行研究の結論とは異なる回答方略をとるものが存在することを明らかにした。