著者
板山 昂
出版者
関西国際大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13455311)
巻号頁・発行日
no.21, pp.1-10, 2020-03

本研究では,社会的逸脱行為者に対する罰(損害賠償額)の判断に無関係な他者による社会的制裁と感情,ミクロ不公正感(自分の日常に対する不公正感)が及ぼす影響を検討した。分析の結果,社会的制裁と罰の判断には相補性がみられた。また,社会的制裁はシャーデンフロイデ高め,シャーデンフロイデを強く喚起した場合には罰が軽く判断された。さらに,ミクロ不公正感が強い者は,社会的逸脱行為者に対して重い罰を判断する傾向にあった。その一方で,ミクロ不公正感が高い者は,社会的制裁が与えられたこと(罰を受ける者に訪れた不幸)を知った場合にはシャーデンフロイデを喚起しやすいことから,その喜びの感情によって罰を軽く判断しやすい傾向があることも明らかになった。以上のことから,社会的逸脱行為者に起こった不幸(社会的制裁)による減刑(社会的制裁と罰の重さの相補性)の背景については,与えられるべき罰が一部与えられたという観点に加え,社会的制裁が実行されることによって罰の判断者の感情が影響を受けることが要因であることが示唆された。
著者
板山 昂 Itayama Akira イタヤマ アキラ
出版者
大阪大学大学院 人間科学研究科 対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.18, pp.165-171, 2018-03

資料本研究の目的は、厳罰傾向である厳罰志向性の高低による情状酌量の余地の程度、および量刑の重さの差異を検討するとともに、厳罰志向性と情状酌量の余地の程度、量刑判断における世代差を検討することであった。結果として、大学生と保護者で厳罰志向性の強さに差異はみられなかったものの、厳罰志向性は量刑判断に大きな影響を与えること、大学生と保護者の間で量刑の重さには大きな差が生じることが明らかとなった。本研究では、幼女が無差別に殺害される事件と介護疲れ殺人を評価対象としており、保護者は幼女が殺害された事件では被害児童の親に、介護疲れ殺人ではわが子に介護される(または自分が親を介護する)ことを考え(視点取得)、量刑の重さを判断したものと考察された。