著者
伊沢 紘生 小林 幹夫 木村 光伸 西邨 顕達 土谷 彰男 竹原 明秀 CESAR Barbos CARLOS Mejia
出版者
宮城教育大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

離合集散型で父系という、サル類では他にアフリカの類人猿チンパンジーとボノボでしか見られないユニークな杜会構造をもつクモザルについて、南米コロンビア国マカレナ地域の熱帯雨林に設営した調査地で、3年間継続調査を行った。その調査は、隣接する4群のサルをハビチュエーションし、完壁に個体識別した上で、複数の研究者による4群の同時観察と、各群について複数のパーティを対象とした複数の研究者による同時観察という画期的な方法を用いて行われ、離合集散の実態が把握された。同時に、その適応的意味を問う上で重要な、主要食物であるクワ科イチヂク属、ヤシ科オエノカルプス属の植物のフェノロジー調査も3年間継続した。また、クモザルの全食物リストを完成、それらの植物を中心とした森林の構造や動態、クモザルの種子散布についても継続調査を行った。その結果、1.森林の果実生産量の季節変化と離合集散するパーティのあり方、2.そのべースになる個体関係とは、3.群れの行動域内でのオスとメスの利用地域の差異とその意味、4.行動域の境界域におけるオスのパトロール行動とオス間の特異的親和性、5.離合集散に介在するロング・コールの頻度と機能、6.群間の抗争的関係、7.父系構造を支える群間でのメスの移出入とメスの性成熟や出産との関係、8.サラオ(塩場)利用の季節性とそこでの特異なグルーピングの意味など、これまで未知だった多大な成果を上げることができた。また、9.クモザルが上記ヤシ科やイチヂク属の植物の種子散布に功罪両面で決定的に関わっている実態、10.新しく形成された砂州の森林生成メカニズムとクモザルの行動域拡張、1l.優占樹種のパッチ構造とパーティのあり方の関係、12.森林構造とパーティの移動ルートや泊り場の関係なども解明され、離合集散性の適応的意味を正面から問える豊富なデータを収集することができた。
著者
寺澤 桂太郎 渡部 和義 寺林 幹夫 蔵元 茂 横本 泰樹 大谷 京子 島村 和位 山下 和正
出版者
日本毒性学会
雑誌
The Journal of Toxicological Sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-15, 1992-12-26

FUT-187の急性毒性をマウス, ラットでは経口, 皮下および静脈内投与により, イヌでは経口投与により検討し以下の成績を得た。1 LD_<50>値は, マウスでは経口投与で雄; 4,395mg/kg, 雌; 3,626mg/kg, 皮下投与群で雄; 6,284mg/kg, 雌; 5,492mg/kg, 静脈内投与で雄; 39.4mg/kg, 雌; 41.4mg/kgであった。ラットでは経口投与で雄; 4,653mg/kg, 雌; 3,761mg/kg,皮下投与で雄; 6,799mg/kg, 雌; 3,343mg/kg, 静脈内投与で雄; 21.8mg/kg, 雌で15.8mg/kgであった。イヌでは3,000mg/kg付近と推定された。2 一般状態観察においては, マウスおよびラットの各投与経路にほぼ共通して投与後に腹這い姿勢, 痙攣, 吃逆, チアノーゼ, 自発運動の減少, 立毛および流涎等がみられた。イヌでは嘔吐および自発運動の減少, 腹臥, 横臥, 蹲り姿勢, 歩行失調および流涎等が観察された。3 剖検では, マウスおよびラットの経口投与で, 胃の膨満, 胃と肝の癒着, 消化管における硬化, 斑状出血または糜欄等がみられた。皮下投与では投与部位に被験物質の貯留および壊死等が観察された。イヌでは死亡例に消化管粘膜の赤色化あるいは粗造化が見られ病理組織学的に消化管粘膜の剥離, 変性, うっ血ないし出血が, 生存例では雌の高用量群で小腸の絨毛の萎縮がみられた。
著者
小林 幹夫
出版者
宇都宮大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

1 マダケ属モウハイチクPhyllostachys meyeriの花成促進遺伝子ホモログPmFTの全4コピーをクローニングし、塩基配列を決定し、95%以上の相同性を有する550塩基の断片をマーカーとしたイネ科27分類群の系統類縁関係を解析し、進化傾向を検討した結果、この遺伝子が小穂耕造に関わり、連の分類単位の識別に有効であること、これまで帰属をめぐり論争のあったStreptogyna連の亜科への昇格の可能性を示唆した。この結果は8月にコペンハーゲン大学で開催されたMonocots IV第4回単子葉植物の比較生物学/第5回イネ科植物の分類と進化国際シンポジウムにおいて口頭発表し、日本植物学会欧文誌に表紙写真付きで掲載された。2 モウハイチクおよびオカメザサ属トウオカメザサShibataea chinensisのそれぞれの一斉開花過程におけるPmFTおよび花成抑制遺伝子PmCENの発現パターンをリアルタイムRT-PCR法で解析し、両種ともにPmFTは一斉開花桿の葉で最も高く、再生竹の花序ではPmCENがより高く、実生や幼若個体ではPmCENのみが高く発現し、タケ類の一斉開花過程において、モデル植物で解明されたのと同様な花成遺伝子発現の制御機構の介在を示唆した。また、トウオカメザサの一斉開花過程と花序の形態を記載した。3 リョクチクBambusa oldhamiより単離したタケモザイクウイルスBaMVの全6,365塩基の配列を決定し、ベクター化に必要な完全長cDNAクローンを構築中である。4 花成遺伝子群の未開花個体への導入による発現系とサイレンシング系の基礎実験に必要なタケ類の葉からのプロトプラストの調整法ヲ確立した。