著者
林田 理惠
出版者
大阪外国語大学
雑誌
大阪外国語大学論集 (ISSN:09166637)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.27-48, 1990-12-15

学習言語でのコミュニケーション活動を学習者に首尾よく習得させる上で、母語の位置と役割をいかにとらえていけばよいか、異言語と母語による発話形成プロセスの言語心理学的観点からの対照分析が必要なことを前論文で提示した。それをうけて、当論文ではまず、発話形成プロセスの操作メカニズムの各段階を詳細に検討し、各言語に特有な操作メカニズムが存在する一方で、各言語共通の操作メカニズムというものも観察できることを明らかにする。各言語に特有な操作メカニズムは、異言語学習の際には当然新たに習得することが必要となるが、一方、各言語共通の操作メカニズムについては、さらに、母語の操作メカニズムの異言語への完全な転移という形での移行が可能なものと、母語の操作メカニズムをベースとして、異言語での発話の際にその矯正過程が必要なものとの2つに分けることが出来る。すなわち、この各言語共通の操作メカニズムというものの転移、矯正ということを有効に活用することが、異言語学習を効率化する上できわめて重要な点となるのである。特に、その矯正過程を学習過程にいかに取り入れるかは、異言語学習の成否を分ける点として注目されなければならないだろう。そしてその矯正過程をスムーズに行なう為にこそ、異言語と母語による発話形成プロセスの操作メカニズムの言語心理学的観点からの対照分析を行ない、その結果明らかになった異同点を学習者に認識させることが必要になってくるのである。当論文の後半部では、以上の論点を証明する為に、上で見た発話操作メカニズムの対照分析をベースにしたロシア語動詞の語結合の実験学習の具体例を紹介する。
著者
林田 理惠 上原 順一 藤原 克美 堀江 新二 藤原 克美 堀江 新二 カザケーヴィチ マルガリータ
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

大阪大学外国語学部ロシア語専攻における過去7年間のロシア語検定試験試行結果を分析.学習者の技能別・問題内容別習得度と各年次教育カリキュラムとの相関性を調査・考察し.本学教育システムに適合し得る「国際基準」に準拠した(CEFR基準A1~B1の3レベル)文法・語彙.読解.聴解.作文.口頭発話の5領域の総合試験を作成.本学「授業支援システムWebCT」をLMS(学習管理システム)として活用した試験実施システムを開発.またパフォーマンステストにおける本学独自の客観評価法を確立した
著者
林田 理惠 横井 幸子 黒岩 幸子 宮崎 衣澄 金子 百合子 山本 有希 柳町 裕子 熊野谷 葉子 堤 正典 小林 潔 小田桐 奈美 角谷 昭美 加藤 純子 北岡 千夏 佐山 豪太 竹内 敦子 ボンダレンコ オクサーナ 三浦 由香利 宮本 友介 依田 幸子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

国内ロシア語教育各機関における教育カリキュラムの質的評価を行い,問題点を明確化,さらに各機関における語学能力到達度の相互比較を実施した.また全国高校・高専・大学ロシア語学習者1114名を対象にアンケート「ロシア語とロシア語学習に対する意識調査」を実施,量的・質的分析に基づき学習者の動機づけと学習環境との相関性観察を行った.国内外でその結果を発表,ロシア語学習者の傾向を明らかにし,ロシア語教育のあるべき方向性について明確な指針を提示した.さらに,カリキュラム・教材開発,指導方法,評価システム,就職関連情報等について,各機関教員の共同利用サイト『ロシア語教育支援・就職情報』を構築し公開した.
著者
林田 理惠
出版者
大阪外国語大学
雑誌
大阪外国語大学論集 (ISSN:09166637)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-25, 1992-09-16

笑い声、泣き声、叫び声、呻き声、話し声、あくび、いびき、くしゃみ……一言で人が発する音と言っても千差万別だ。その千差万別の音をどのように表現し分けるか--それはその言語の担い手である民族の歴史と文化に多くがささえられている。『ロシア語の音の世界(1)』(論集第5号(1991年)所収)では、ロシア語の音響意味場の全体的な構造分析と、小意味場のひとつである動物音響語の具体的分析、それらの語と、対応する日本語の語群との対照分析を試みた。本論文では以上の作業をさらに展開して、音響語の中でも最も重要な位置を占める、ロシア語の人間音響語(特に動詞を中心に)の小意味場の構造分析、さらに対応する日本語の人間音響語との(paradigmatic、syntagmatic両面からみた)対照分析を試みる。人間音警語は、他の意味場(「心の動き」「ことば」「からだ」等)との関わりが非常に深い。その関わりがパラダイムのみならず、連辞面でどのような表われかたをするかに特に注目したい。