著者
鈴木 慎太郎 本間 哲也 眞鍋 亮 木村 友之 桑原 直太 田中 明彦 相良 博典 柳川 容子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.282-288, 2018 (Released:2018-10-20)
参考文献数
24

症例は38歳男性.自家製のお好み焼きを食べている最中から喉頭違和感,呼吸困難,眼球結膜の充血などを訴え救急搬送された.アナフィラキシーの診断で加療し,後日当科へ精査目的で来院した.患者には著しいダニ・ハウスダストによるアレルギー性鼻炎の既往があった.お好み焼きの具材に対する抗原特異性IgEによるアレルギー検査とプリックテストを行ったが全て陰性だった.問診上,開封後密封せずに常温で6か月以上経過した市販のお好み焼き粉を用いて調理したことが判明し,お好み焼き粉に混入したダニによるアナフィラキシーを強く疑った.お好み焼き粉を鏡検した結果,多数のコナヒョウヒダニが検出され,さらに,Dani Scan®(生活環境中のダニアレルゲン検出を目的とする簡易型検査キット)を用いた検査においても強陽性を示した.近年,お好み焼きやパンケーキ等の小麦粉製品に混入したダニを経口摂取して生じるアナフィラキシーの報告が急増している.診断のためには,調理に用いた小麦粉製品の保管状況の聞き取りと,感作が成立した同種のダニを発症前に摂取した調理材料中に証明することが求められる.今回,使用したDani Scan®は,一般家庭においても食品中のダニ汚染を検知する簡便なキットであり,本病態の診断や発症の予防に一定の効果が期待できるものと推察した.
著者
島村 忠勝 胡 志青 大久保 幸枝 趙 維華 柳川 容子 山口 晃史
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

カテキンの抗微生物活性のメカニズムおよびカテキンの抗微生物薬との併用効果について研究を行った。1.エピガロカテキンガレート(EGCg)は細菌細胞膜や細胞壁傷害作用および細胞壁合成阻害作用を有し、β-ラクタム剤と併用すると、MRSAに対するβ-ラクタム剤の抗菌活性を復活させ、強い相乗効果が発現した。タンパク合成阻害剤、核酸合成阻害剤との併用では相乗効果は見られず、ペプチド系抗生物質では拮抗作用が見られた。この拮抗作用はEGCgとペプチドの結合によると考えられた。また、EGCgはβ-ラクタマーゼ活性を直接阻害することができ、β-ラクタマーゼ産生黄色ブドウ球菌およびMRSAに対して、EGCgとβ-ラクタム剤の併用は相乗効果を発揮した。β-ラクタマーゼが分泌されないグラム陰性桿菌に対して、効果は弱かった。2.ヘリコバクター・ピロリに対しては、EGCg単独で殺菌作用を示した。クラリスロマイシン高度耐性株に対してEGCgとクラリスロマイシンまたはプロトンポンプ阻害剤を併用すると相加効果が見られた。3.細胞内寄生菌サルモネラに関しては、EGCgはサルモネラ食食マウスマクロファージの細胞内殺菌能を亢進した。EGCg投与マウスのマクロファージはサルモネラ貧食能と細胞内殺菌能がともに増強した。4.HIVに関しては、HIVの細胞への吸着後から宿主細胞遺伝子への挿入までの過程においてEGCgの阻害作用が見られ、逆転写酵素やプロテアーゼの阻害が示唆された。また、EGCgは持続感染細胞からのHIV粒子の産生を抑制した。この抑制効果はリボソームに包埋したEGCgやLPSを併用すると増強した。しかし、このEGCgの効果は単球細胞系で特異的におこり、リンパ球では見られなかった。また、EGCgとAZTを併用すると弱いながら相乗効果が見られた。
著者
鈴木 慎太郎 本間 哲也 眞鍋 亮 木村 友之 桑原 直太 田中 明彦 相良 博典 柳川 容子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 = Journal of the Showa University Society (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.282-288, 2018-06

症例は38歳男性.自家製のお好み焼きを食べている最中から喉頭違和感,呼吸困難,眼球結膜の充血などを訴え救急搬送された.アナフィラキシーの診断で加療し,後日当科へ精査目的で来院した.患者には著しいダニ・ハウスダストによるアレルギー性鼻炎の既往があった.お好み焼きの具材に対する抗原特異性IgEによるアレルギー検査とプリックテストを行ったが全て陰性だった.問診上,開封後密封せずに常温で6か月以上経過した市販のお好み焼き粉を用いて調理したことが判明し,お好み焼き粉に混入したダニによるアナフィラキシーを強く疑った.お好み焼き粉を鏡検した結果,多数のコナヒョウヒダニが検出され,さらに,Dani Scan?(生活環境中のダニアレルゲン検出を目的とする簡易型検査キット)を用いた検査においても強陽性を示した.近年,お好み焼きやパンケーキ等の小麦粉製品に混入したダニを経口摂取して生じるアナフィラキシーの報告が急増している.診断のためには,調理に用いた小麦粉製品の保管状況の聞き取りと,感作が成立した同種のダニを発症前に摂取した調理材料中に証明することが求められる.今回,使用したDani Scan?は,一般家庭においても食品中のダニ汚染を検知する簡便なキットであり,本病態の診断や発症の予防に一定の効果が期待できるものと推察した.