著者
坂手 誠治 柳沢 香絵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.13-19, 2016 (Released:2016-04-06)
参考文献数
22
被引用文献数
1

【目的】水中運動実施者の運動時の発汗および水分摂取の実態を明らかにするとともに,より安全な水中運動実施のための基礎資料を得ることを目的とした。【方法】調査は,公共の室内プール2か所で実施した。水中運動前後に体重,鼓膜温,口渇感,飲水量の測定を行った。発汗量は{=(運動前体重+飲水量)-運動後体重-尿量},発汗率は{=(発汗量/運動前体重)×100}の式より,それぞれ算出した。尿量は排尿前後の体重差より算出した。実施種目間での各測定項目の比較,実施種目別等にみた運動中の水分摂取状況,各測定項目間の関係について検討した。検討対象は男性34名,女性22名の計56名(60.6±16.6歳)とした。【結果】発汗量は 155.0 g(60.0・365.0),発汗率は0.3%(0.1・0.6)であった。水泳(p<0.01),水泳および水中歩行実施者(p<0.05)の飲水量はアクアビクス実施者に比較し有意に少なかった。水分摂取率(=飲水量/発汗量×100)も同様の結果であった。運動中に全く水分摂取を行わない者は全体の76.8%であり,水泳実施者で多くみられた。運動前の口渇感と飲水量との間に有意な正の相関関係(rs=0.392,p=0.003)がみられた。【まとめ】公共の室内プールでの運動実施者では,運動中に水分摂取を行う者が少なく,特に水泳実施者で多かった。運動前口渇感は運動時の発汗による脱水に影響する可能性が示唆された。健康増進を目的とした水中運動時においても,脱水予防のための適切な水分摂取の必要性が示された。