著者
正田 彬 舟田 正之 高橋 岩和 土田 和博 山部 俊文 柴田 潤子 江口 公典 石岡 克俊 金井 貴嗣
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究組織(「東京経済法研究会」)による本研究は、市場支配的地位にある企業が存在する市場の実態と、それに対する独禁法及び各産業分野の事業法による規制のあり方を、同様な状況が認められる諸外国との比較研究を含めて調査研究することを目的とする。本年度は、以下の研究成果をあげることができた。第一に,IT革命が多様な形で、市場競争を国際的規模で、かつ質的にも変化させつつあるという状況の下で、特に競争を制限するような市場支配的地位にある企業の出現、あるいは大企業による市場支配地位の濫用をどのように抑止し、公正かつ自由な競争を維持・促進していくかを検討した。特に、独禁法による規制を検討対象とし、一般的な理論的・解釈論的研究を行い、具体的素材としては、日米のマイクロソフト事件,インテル事件などIT関連産業を主に取り上げた。そこでは、私的独占による規制の可能性を検討し、日本の私的独占の要件では、市場支配力の濫用を規制することが不十分であることが明らかとなった。第二に、個別規制法による規制としては、電力産業を取り上げ、そこにおける市場支配力の規制の現状と実態を明らかにすることに務めた。そこでは、米国、ドイツ、英国、及びEUによる電力規制をも研究対象とした。どの国でも、既存の電力会社の市場支配力の規制として、構造規制(アンバンドリンク)、そして、行為規制(卸・小売の取引条件の規制、及び、託送などについての規制)が行われている。日本は「部分的自由化」という特殊な状況にあるので、自由化部門と規制部門の問の内部相互補助が極めて重要な課題になっていることが明らかになった。小売のすべてについて自由化するかが今日の政策課題であるが、その際に、整備すべき各種の条件があることを明らかにした。
著者
柴田 潤二
出版者
熊本大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

HIVのエンベロープタンパク(Env)を標的とし、感染を抑制する抗体を誘導するワクチン開発が求められている。しかし、HIVはEnvを変異させ、中和抗体から逃避することができる。変異が引き起こす中和抗体逃避メカニズムを詳細に解明することは、ワクチン開発を行う上で重要である。我々は、これまでにHIVの抗gp120-V3領域中和抗体(抗V3抗体)からの逃避に関する研究を行ってきた。V3領域はHIVが標的細胞に感染する際、受容体との結合に重要な領域であり、この領域を標的とした抗体には強い中和能があることが知られている。抗V3抗体を用い、この抗体から逃避するような中和抵抗性ウイルスを誘導したところ、エピトープ以外の領域であるV2領域の数アミノ酸変異で逃避できることが分かった。そこで、本年度はV2領域変異が引き起こす中和抵抗性メカニズムを詳細に解析した。site-directed mutagenesis法を用い、gp120のV2領域の変異を組み合わせたウイルスを作製し、中和感受性に影響を与える変異を探索したところ、L175P変異が抗V3抗体に対する感受性を20000倍以上上げることが分かった。その変異はウイルス膜上に存在する三量体gp120の立体構造に影響を与え、中和感受性を変化させる働きがあることがわかった。つまり、HIVは感染に最も重要と考えられるV3領域を守るため、エピトープ以外のV2領域に変異を入れることにより三量体構造を変えてエピトープを隠し、中和抗体のプレッシャーから逃れることが分かった。本研究により、今後、中和抗体誘導ワクチンを開発するためには、(1)V2領域の変異に左右されないエピトープを標的とした抗体の誘導、(2)V2領域が変異しても、隠れたエピトープを露出させる方法の探索、などが必要であることが示された。
著者
本谷秀堅 柴田 潤 来海暁 安藤 繁
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.2309-2318, 2002-07-15
被引用文献数
6

本稿では画像の特徴抽出を,新たに開発される固視微動型イメージセンサ を用いて行う手法を提案する.抽出する画像特徴は局所的なLog-Polar対 称性である.提案手法においては,まずイメージセンサを周期的に振動させ る.振動させることにより,イメージセンサの各受光素子は周期的に時間変 化する信号を出力するようになる.イメージセンサの振動を適切に行うこ とにより,各受光素子近傍のパターンを半径方向成分と回転方向成分とに分 離し,それぞれを異なる時間周波数へと変調する.次に受光素子からの出力 信号をくし型フィルタに通し時間積分することにより,出力信号中の各成分 のエネルギーを算出する.イメージセンサは,全エネルギーに占める半径方 向成分のエネルギーおよび回転方向成分のエネルギーの割合を出力する.こ の出力値は各受光素子の位置近傍における,パターンのLog-Polar対称性を 表している.シミュレーションにより提案手法が局所的なLog-Polar対称 性を抽出できることを確認し,また,Log-Polar対称な点がエッジやコーナ, 尾根線などを含む従来の特徴点を含むことを示す.We propose a feature extraction method for a newly developed vibratory image sensor}. The proposed method extracts the local log-polar symmetry as an image feature. The principle is as follows: the periodic vibration of the image sensor modulates radial and angular components of local image pattern into separated temporal frequency components of incident light on a pixel. The comb type filters after the photo-detector decompose each component and accumulate their power in a frame time. They are read out to calculated unevenness between them as the symmetricity features. Simulations show that the extracted local symmetry corresponds with the edge, corner, ridge, and other characteristic points of an image.