著者
栗山 健一
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.151-157, 2011 (Released:2017-02-16)
参考文献数
42

近年の研究の進歩により,睡眠が様々な記憶の増強・長期保持に重要であることが証明されつつあるが,その背景となる神経学的メカニズムは明らかになっていない。睡眠中の様々な状態指標や生理学的特徴と,記憶増強との関連が示唆されているが,記憶・学習の種類や,情動等の付加条件により所見は一致せず,一定のコンセンサスは得られていない。本稿では現在までに得られている主な知見を紹介し睡眠中の記憶・認知機能に関して論じた。さらに一部のストレス関連障害の背景病理における睡眠の関与およびその予防方策における睡眠調節の可能性を示した。
著者
山口 あゆみ 大西 一禎 栗山 健一
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.118-126, 2010-06-20 (Released:2012-06-25)
参考文献数
9
被引用文献数
3 3

男性顔面上で「ギラつき」と表現される現象は,一般的に皮脂量の多さに関係すると考えられている。しかし,加齢に伴い皮脂量は徐々に減少することに反し,ギラつきは中高年男性に顕著である。そこで男性顔面の前額部において,ギラつきとさまざまな皮膚特性との相関を解析した。ギラつきに対する重回帰分析を行ったところ,皮脂量で0.490,キメ細かさで—0.370,皮膚色の明度で—0.314の標準偏回帰係数が得られた。皮脂量の要因が最大であったが,他ニ者もギラつきに関与する重要な因子であることが示された。また,画像解析によって得られる前額部の表面反射光および内部反射光の光学的特性値を用いて重回帰分析を行い,ギラつき度予測式を導いた。表面反射光の光学的特性値は,皮膚上に存在する皮脂量とキメの状態によって決定されると推測できた。紫外線対策が不十分な男性特有の生活習慣は,キメの不明瞭化や顔面色の暗化を引き起こし,男性顔面に特徴的な「ギラつき現象」を発生させていると考えられる。ギラつきを低減するには洗顔等による皮脂の除去が基本となるが,スキンケアによる皮膚色やキメの改善も重要であると考えられた。
著者
栗山 健一
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.161-167, 2015 (Released:2017-02-16)
参考文献数
27

NMDA 受容体部分作動薬である D-サイクロセリン(DCS)および HDAC 阻害剤であるバルプロ酸(VPA)は恐怖記憶の消去学習を促進することが動物研究で確かめられている。我々はヒトにおける DCS および VPA の消去学習促進効果を,視覚刺激と指先電気刺激を条件づけるパラダイムを用い検討した。さらに,恐怖記憶学習は睡眠中に強化・固定化プロセスが促進されることから,DCS およびVPA の消去学習促進効果と睡眠依存性記憶強化プロセスとの交互作用を検討した。DCS および VPA のいずれも,恐怖消去の即時学習に影響を及ぼさなかったが,消去学習翌日の学習効果に有意な差が生じた。特に,再強化刺激として指先電気刺激を再曝露した直後の恐怖再燃反応において,対照群に比し有意に低い反応が示された。また,DCS は恐怖条件づけ消去学習に続く覚醒区間中の遅延学習を促進したのに対し,VPA は睡眠中の遅延学習を促進した。本結果は,恐怖回路障害の曝露型認知行動療法に併用することで治療者・患者双方の負担を減じ,治療効果の増強を示唆する。さらに DCS と VPAは異なる作用機序,時間生物学的作用点を有することを示唆している。
著者
本間 元康 栗林 大輔 長田 佳久 栗山 健一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.393, pp.11-14, 2012-01-13
参考文献数
21

視線一致(アイコンタクト)は対人交流を促進する上で重要であるが,アイコンタクトの知覚精度に関する研究は乏しい.本研究では,対面する二者におけるアイコンタクトの知覚範囲体積および瞳孔径を測定し,個人特性との関連を調べた.アイコンタクトの知覚範囲は非常に広く,アイコンタクトへの注意は瞳孔径を拡大させることが明らかとなった.さらにその知覚範囲は性格の外向性および社交性不安障害傾向と関連が認められ,外向性が低く社交性不安障害傾向が高い個人ほどより広い範囲で視線が一致したと過大視する傾向があることを示唆した.