著者
竹田 雅好 桑江 一洋 塩沢 裕一 土田 兼治 田原 喜宏
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

ディリクレ形式の理論は, 対称マルコフ過程を解析するための重要な道具として発展してきた. ディリクレ形式の理論はL-2理論であり, そのため特異なマルコフ過程を扱うことができる. しかし, マルコフ過程論はある意味でL-1理論である. そのギャップを埋めるために, マルコフ過程に強フェラー性や緊密性を仮定することで, 半群の増大度に対するL-p独立性を示した. 時間変更で生成される対称マルコフ過程に対してL-p独立性を応用することで, 加法汎関数の指数可積分性や大偏差原理を証明した. 熱核評価がポテンシャル項の摂動で保たれるための必要十分条件も与えた.
著者
塩谷 隆 桑江 一洋 藤原 耕二
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

近年,測度距離空間の幾何解析の研究が非常に盛んである.研究代表者は測度距離空間の曲率と収束,特にアレクサンドロフ空間,測度距離空間のリッチ曲率,測度距離空間の列の収束などに絡む幾何解析に焦点を当てて研究してきた.一方で,ディリクレ形式の収束を関数解析的に調べる変分収束理論がMoscoによって研究されたが,これを応用・拡張することは,測度距離空間の列の収束を調べる上で,統一的な視点を与えることとなる.この様な動機により,研究代表者の塩谷と分担者の桑江は,幾何学的な視点から変分収束理論を拡張したが,本研究費の研究において一応の完成を見た.我々はこれを「幾何学的変分収束理論」と呼んでいる.この理論で現れる収束概念は,現在,「Mosco-桑江-塩谷収束」と呼ばれ,確率論の有限次元近似やhomogenizationの研究などにおいて広く応用されつつある.まだ研究途上ではあるが,もう一つの成果として,アレクサンドロフ空間上で「リッチ曲率が非負」に相当する条件の下で,ラプラシアンの比較定理および分割定理を証明した.リーマン多様体に対しては、リッチ曲率がある定数以上になることは,ビショップ・グロモフの不等式の無限小バージョンと同値である.アレクサンドロフ空間上ではリッチ曲率テンソルは定義されないので,リッチ曲率条件の替わりにこのビショップ・グロモフの不等式を仮定した.リーマン多様体の場合と決定的に異なるのは,カットローカスの状況である.リーマン多様体ではカットローカスは閉集合であるのに対して,アレクサンドロフ空間では一般に閉集合にならず稠密になるような例もある.このことから,ラプラシアンの比較定理の証明ではリーマン多様体と同じ方法は通用せず,新しい方法を開発した.
著者
會田 茂樹 長井 英生 永幡 幸生 桑江 一洋 日野 正訓 廣島 文生 KOHATSU-HIGA Arturo 日野 正訓 桑江 一洋 廣島 文生 吉田 伸生 数見 哲也 長井 英生 KOHATSU-HIGA Arturo 永幡 幸生
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

研究成果としては(1)ウィーナー空間内の領域で定義されたホッジ・小平型作用素の研究(2)無限次元空間上のシュレーディンガー作用素の最小固有値の準古典極限の研究の二つがある。(1)ではウィーナー空間内のある非凸領域でのポアンカレの補題の証明のため、凸領域で定義されたホッジ・小平型作用素のアダマール変分を用いるアイデアを提起した。(2)では、コンパクトリーマン多様体のパス空間上のシュレーディンガー作用素と場の量子論に現れるP(φ)型のハミルトニアンの最小固有値の準古典極限を決定した。