著者
桑田 一夫
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.132, no.8, pp.873-879, 2012 (Released:2012-08-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

We developed a theoretical framework for the regulation of biological macromolecules using the logically designed compounds. According to the cohomology theory, algebraic objects can be translated into geometrical ones. Successfully established quantum theory at 20th century, which essentially deals with the non-commutative nature of the space, also suggests the non-commutative topology of biological space. Arithmetic geometrical representation of the molecules as well as the macroscopic membranous structures would uncover their structural groups in Hilbert space. In order to construct the concrete image of biological space, here we combined quantum chemical (QC) model, all-atom (AA) model and coarse grained (CG) model, into one program designated ‘NAGARA’. These three models can be arranged in an arbitrary manner to yield the desired statistical ensemble. For example, QC model was applied to the optimization of the chemical structure of anti-prion lead compound GN8. Arithmetic geometrical representation of these algebraic models is in progress.
著者
片峰 茂 伊藤 敬 西田 教行 桑田 一夫
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

われわれが化合物データベースより見出した新規抗プリオン物質GN8がリコンビナントプリオン蛋白に対して実際に結合するかどうかを,をBIAcoreT100を用いて調べた結果から,GN8が実際にリコンビナントプリオン蛋白に対して結合し,その解離定数は,4μM程度であることが分かった。全長のマウス・リコンビナント・プリオンのNMRスペクトル(HSQC)をGN8の存在下及び非存在下で測定した。その結果,GN8の特異的結合サイトが,N159とE196であることが明らかとなった。これらの部位は,ミリ秒からマイクロ秒の遅いタイムスケールの揺らぎを行っており,遺伝性のヤコブ病における変異部位とも関連していることが確認された。また,GN8の類縁体を複数(60種類),有機合成し,抗プリオン活性を測定した結果,そのいずれにおいても,ほぼ抗プリオン活性が認められた。このことより,GN8の基本骨格を保ちつつ,抗プリオン作用が最大になるようにその化学構造を最適化することが可能であることが分かった。プリオン感染マウスに対し,GN8を脳内投与したところ,特に副作用もなく,優位な寿命延長効果が認められたことから,GN8は,抗プリオン薬のリード化合物として非常に有望であると考えられる。GN8小分子化合物で脳血液関門を通過しやすいことが期待され,実際培養脳血液関門モデルを通過することが判明したが、マウス末梢投与においても有効であることが分かりつつある。以上により,GN8の作用メカニズムは,細胞型プリオンに結合し,その立体構造を安定化させるためであることが明らかとなった。