著者
北村 歳治 佐藤 次高 店田 廣文 桜井 啓子 山崎 芳男 吉村 作治 長谷川 奏 及川 靖広 鴨川 明子 高橋 謙三 保坂 修司 北村 歳治
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

1)系譜研究:農業分野では精糖技術の復元、窯業分野ではイスラム陶器の分析研究、薬学分野では医薬技術と社会意識との接点の研究を通して、前イスラムの時代から近代直前期まで幅広い時代のイスラム技術の系譜が紐解かれた。2)広域研究:中東イスラム、東南アジア、中央アジアの動向分析を通して、地域に育まれた豊かな経済が新たな資源の登場によって消滅していく過程や、イスラム圏の各地でITがさまざまな形で積極的に利用されている動向も明らかになった。
著者
北村 歳治 佐藤 次高 店田 廣文 近藤 二郎 桜井 啓子 高橋 謙三 長谷川 奏 吉村 作治 山崎 芳男 及川 靖広 岡野 智彦 鴨川 明子 北村 歳治 保坂 修司 加納 貞彦 深見 奈緒子 鈴木 孝典
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本調査研究は、歴史的系譜と地域的特性を念頭に置き、科学技術と東南アジア・中東等に焦点を当て今日的な視点で取り組んできた。具体的には、イスラーム諸地域の研究者等と直接的に連携し、天文・陶器・医薬・建築等の分野で斬新な調査活動を進め、非イスラームとの相互交流から生まれ出た歴史的なイスラーム文化の保存・育成の研究に成果をもたらした。他方、ICT利用・医療サービス・金融等の今日的な課題に取り組むイスラーム諸地域の動きに関する調査分析も行なった。これらの成果は、早稲田大学、インドネシア国立イスラーム大学等で行われた計6回のシンポジウム等で今日のイスラーム問題の躍動する建設的な側面を明らかにできた。
著者
桜井 啓子
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
no.9, pp.143-164, 1994-03-31

イランは,スンニー派のアラブ民族が多数派を占める中東世界において,シーア派に属するアーリア民族として,その独自性を維持してきたことで知られている。そのため,イランすなわちシーア派・アーリア民族の国家として定式化されることが多い。しかしながら,このようなイラン像は,必ずしもそこに住む人々によって共有されてきたわけではない。現実のイランは,多民族,多宗教社会であって,人々は,それぞれの属する民族,宗教,地域に帰属意識をもってきた。19世紀末,欧米列強による帝国主義的な侵略の脅威に晒されて以来,イランの指導者たちは,イランを国民国家として統合することの必要性を強く意識してきた。彼らは,自らの国内的ならびに国際的な政治目標を達成するうえで,最も都合のよい共同体像を描き,それを国民が共有することを欲してきた。どの時代の指導者も,ムスリム,シーア派,イラン,ペルシア,アーリアなどを,この国土に暮らす人々の主要な属性とみなしてきた。しかし,体制の相違により,これらの要素の扱いは,相当に異なったものとなった。ところで,お互いに顔を合わせることもない広い範囲に住む人々の間に共同体意識を醸成するうえで,歴史教育の果たす役割は大きい。歴史は,過去に生きた特定の人々を,祖先として教えることによって,現在に生きる人々を結び付ける。共同体の起源,過去の栄光そして祖先の戦いや屈辱の物語は,人々が属する集団のイメージを鮮明にする。歴史は過去を物語ることによって,現在に奉仕し,また将来の使命を説く。指導者は,歴史的素材の取捨選択,構成,評価において教科書内容に深く関与することによって,自らの存在を正当化できるような歴史物語を描いてきた。したがって,教科書に描かれた歴史は,その史実の正確さや解釈の妥当性においてではなく,歴史物語に託された目的やそれが果たした役割において検討されなければならない。このような観点から本稿は,まず,カージャール朝末期,パフラヴィー朝末期,イラン・イスラム共和国という3つの異なる体制下で発行された小学校歴史教科書を考察し,それぞれの体制がどのような共同体像を描いてきたのかを明らかにする。次にこれらを比較しそれぞれの共同体像が何を指向し,どのような役割を果たそうとしてきたかを検討する。