著者
梅村 麦生
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.166-181, 2016 (Released:2017-09-30)
参考文献数
56

A. シュッツは『社会的世界の意味構成』の中で, 社会的世界の最も根源的な層をなす「われわれ」関係は, 我と汝の「同時性」に基づき, この同時性の中で「われわれは共に年をとる」と述べた. 本稿はシュッツのこの同時性論を, その土台となっている内的時間論と, シュッツが具体的な社会関係の下で同時性が成立する事態として記述している例を踏まえて検討し, その問題点と可能性を追究する.シュッツの同時性論には, 先行研究ですでに複数の問題点, 特に複数の二元論的な契機が指摘されている. 他方で, シュッツが用いた「間主観性は所与」であるといった考え方を受けて, そうした問題を不問にして社会関係の記述を始めた点に認識利得があるとする見解もある. しかし実際に, シュッツが不問にしたベルクソンやフッサールの概念に伴う問題をみていくと, 同時性に関する重要な問題が現われてくる. それは〈同時性〉が単なる瞬間性や現前性を超える場合に現れる〈時間性〉の問題である. 事実, シュッツは同時性を「共に年をとること」として扱っているにもかかわらず, 同時性に含まれる時間性の問題を主題化していない. 本稿では特に, シュッツが混同した2つの〈同時性〉の違いを指摘した上で, 「共に年をとること」を〈理念化された時間性〉の共有として捉える見解を導き出し, 上記の二元論的な契機への回答と, シュッツの同時性論を社会学的な時間論へ接続する可能性を提示する.
著者
吉野 浩司 梅村 麦生 吉田 耕平 磯 直樹
出版者
長崎ウエスレヤン大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

〈善く生きる〉のための社会学とは、人間が生きる上で必要な生きがい、愛、喜びといった人間のポジティブな側面を対象とし、その発生メカニズムの解明と社会への実装とを目的とする科学である。この社会学を、亡命知識人論というグローバルな社会学史の観点から、その源流にまでさかのぼって捉え直そうとするものである。わけても〈善く生きる〉ための思索の片鱗は、20世紀初頭のロシア社会学にも組み込まれており、後に欧米の社会学にまで浸透していった。世界各地のアーカイブに残された亡命知識人の資料を掘り起こし、かつてのロシアや中東欧の思想から現代の欧米の社会学にいたる様々な試みを総合的に把握する。
著者
梅村 麦生
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.166-181, 2016

<p>A. シュッツは『社会的世界の意味構成』の中で, 社会的世界の最も根源的な層をなす「われわれ」関係は, 我と汝の「同時性」に基づき, この同時性の中で「われわれは共に年をとる」と述べた. 本稿はシュッツのこの同時性論を, その土台となっている内的時間論と, シュッツが具体的な社会関係の下で同時性が成立する事態として記述している例を踏まえて検討し, その問題点と可能性を追究する.</p><p>シュッツの同時性論には, 先行研究ですでに複数の問題点, 特に複数の二元論的な契機が指摘されている. 他方で, シュッツが用いた「間主観性は所与」であるといった考え方を受けて, そうした問題を不問にして社会関係の記述を始めた点に認識利得があるとする見解もある. しかし実際に, シュッツが不問にしたベルクソンやフッサールの概念に伴う問題をみていくと, 同時性に関する重要な問題が現われてくる. それは〈同時性〉が単なる瞬間性や現前性を超える場合に現れる〈時間性〉の問題である. 事実, シュッツは同時性を「共に年をとること」として扱っているにもかかわらず, 同時性に含まれる時間性の問題を主題化していない. 本稿では特に, シュッツが混同した2つの〈同時性〉の違いを指摘した上で, 「共に年をとること」を〈理念化された時間性〉の共有として捉える見解を導き出し, 上記の二元論的な契機への回答と, シュッツの同時性論を社会学的な時間論へ接続する可能性を提示する.</p>