- 著者
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高村 明
- 出版者
- 独立行政法人 国立高等専門学校機構豊田工業高等専門学校
- 雑誌
- 豊田工業高等専門学校研究紀要 (ISSN:02862603)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, pp.53-13, 2020 (Released:2021-02-04)
実数の拡張として分解型複素数[1] と呼ばれる数がある.複素数は体であるが,この分解型複素数は体で
はなく環である.このノートでは,双曲線版のオイラーの公式を使って,分解型複素数を定義する.そして,
分解型複素数平面における距離を行列ノルム[2] を使って定義し,分解型複素数を変数にもつべき乗の極限
limn→∞ zn は,円ではなく正方形を収束領域に持つことを示す.さらに,分解型複素数を変数に持つ関数
の微分可能条件からコーシー・リーマンの関係式に類似した関係式を導く.最後に,複素関数のコーシー・
リーマンの関係式と違って,分解型複素数を変数とする関数の微分可能条件は,微分する方向によらないと
いう条件から導かれるコーシー・リーマンの類似関係式よりも強いことを示す.