著者
木下 博之 岩本 博光 馬野 泰一 椿原 秀明 坂田 好史 森 一成
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.1020-1024, 2015 (Released:2015-11-30)
参考文献数
23
被引用文献数
2

症例は51歳の男性.腹膜播種を伴う高度進行胃癌に対してXP (capecitabin/CDDP)療法を6コース施行した後に胃全摘,2群リンパ節郭清術を施行した.術後も2コースを追加したところ,Grade 4の汎血球減少と頻回の下痢を認め,大腸内視鏡検査と血液検査からサイトメガロウイルス(以下CMV)腸炎と診断した.その後,ガンシクロビルの投与で腸炎は著明に改善した.なお,末梢血単核球中のdihydropyrimidine dehydrogenase(以下DPD)蛋白量は21.5U/mg proteinと基準値(33.6~183.6U/mg protein)に比して低値を示し,DPDの活性低値により重篤な副作用が発症したものと判断した.DPDが欠損または活性低下を示す患者の存在と日和見感染症としてのCMV腸炎の発症にも留意することが肝要であると考える.
著者
新阜 義弘 森 一成
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.6, pp.40, 2005

未曾有の被害をもたらした阪神・淡路大震災から10年を目前に控えた平成16年12月4日、震災メモリアルイベント『視覚障害被災者の10年』が神戸で開催されました。当日は大変寒い中にも関わらず中央区の中華会館東亜ホールには、当時被災された視覚障害者をはじめ、救援活動に従事されたボランティアや関係団体の方々が会場一杯に詰めかけていただきました。この集いでは、被災された視覚障害者の方々のほんとうに生々しい体験を聞くことができました。また、大混乱の中で視覚障害被災者支援対策本部(ハビー)を立ち上げ、厳寒の中で視覚障害者の救援活動に従事された川越氏の基調講演、「視覚障害被災者1000人アンケート」に取り組まれた神戸視力障害センターの久保氏による基調報告、そして、「語り継ごう、震災体験」をテーマに熱く語られたパネルディスカッション。改めて、地震の恐ろしさと肉親を失った悲しみ、困難を極めた救援活動の様子が語られるとともに、貴重な教訓や数々の提言が明らかにされました。これからも起こるであろう地震をはじめとする自然災害に対して、視覚障害者のセルフディフェンスや救援活動、復興支援のあり方に一石を投じたものとして、多くの視覚障害者の皆さんや関連団体、ボランティアの皆さん、また行政関係各位に考えていただけますことを心より念願いたします。
著者
永井 祐吾 勝見 正治 田伏 克惇 田伏 洋治 青山 修 江川 博 野口 博志 小林 康人 森 一成 山上 裕機 中井 健裕
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.1511-1518_1, 1986

当教室ではじめて開発した内視鏡的マイクロ波凝固療法を早期胃癌25例に行い,本法による局所的癌完全消滅の可能性について検討した. 14例は根治手術予定の症例であり,術前内視鏡検査時に病巣の部分または全域凝固を行い切除標本にてマイクロ波凝固の影響を検討した.部分凝固群7例においては,凝固部はulII~IVの潰瘍となり,潰瘍底にはviableな癌細胞は認められなかった.全域凝固群7例中,3例においては,摘出標本の連続切片のいずれの部位にも腫瘍細胞は認められず,本法による局所根治例と考えられた.残りの4例中2例は凝固後の潰瘍底のsm層に,あとの2例では辺縁粘膜に,いずれも微少な癌病巣が残存していた. 内視鏡的治療のみを行った11例のほとんどは高齢や重篤な併存疾患のために手術の適応外となった症例であった.生検にて悪性所見が消失するまでに1~6回の凝固療法を要し,2~50カ月(平均17カ月)の経過観察中2例にのみ再発を認めた.再発例にはさらに凝固を追加し,再び悪性所見は消失した. 以上より局所的癌完全消滅という点においては,本法はsmまでの浸潤胃癌にまで有効であり,現時点においては,手術不適応となった早期胃癌の治療法として期待できると考える.