著者
古崎 新太郎 茅原 一之 伊藤 義郎 信川 寿 小夫家 芳明 江川 博明
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1989

総量約42億トンと計算される海水中の溶存ウランを工業的に採取する技術の確立は、エネルギー政策上極めて重要である。採取法として、ウランを選択的に吸着する固体吸着剤を用いる吸着法が実用性が高い。本研究では、経済的な海水ウラン採取プロセスの確立をめざして、1.吸着速度が大きく、また繰り返し使用に対して耐久性のある吸着剤の製造方法の確立、2.大量の海水との接触に適した中空繊維および粒状繊維吸着剤を用いる接触装置の評価、および3.海流、波などの自然力を利用した吸着剤と海水との接触装置の開発を行った。本研究によって得られた新しい知見、成果は次の点である。1.合成条件を工夫して比表面積の大きいアミドキシム樹脂を合成した。この樹脂はアルカリ処理後、1日当たり100ー200mg/kgーRという高いウラン吸着量を示した。2.イミドジオキシム基の大きな平衡定数、アルカリ処理に伴うアミドキシム基の消失という事実から、優れたウラニル吸着剤として、イミドジオキシム構造を主として与える条件で調製した繊維状吸着剤を用い、一日の吸着で650mg/kgーRのきわめて優れた吸着速度を達成した。3.キャピラリー繊維状アミドキシム樹脂を充填した海流利用吸着装置周辺の流れを数値解析して、実験結果と比較した結果、吸着装置を流れ込みのない構造体として扱ってよいことを示した。さらに、びょう風型吸着装置のサイズとウラン採取量との関係を求めた。4.海流と波力を利用する浮体式ウラン採取システムのコストは、現在開発されている吸着剤の性能(20日間で6g/kg)の10%の回収率において、174千円/kg/yearとなった。5.圧力損失の結果に基づいて循環流動層式吸着装置のスケールアップを検討したところ、黒潮海流を直接利用して運転するとき、接触部槽高は約1ー3mになるという結果を得た。6.海流を直接利用して、吸着剤流動層を流動化し、ウランを吸着する四角錐型吸着装置は三角柱型吸着装置に比べ、どのノズル径でも良好な流動状態が得られ、最大充填率も上回った。
著者
江川 博明 カバイ ナラン 野中 敬正 首藤 健富
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.87-94, 1991

アクリル中空糸 (内径0.8mm, 外径1.4mm) を基体としてアミドキシム基を有する中空糸状吸着剤を製造し, その海水からのウラン吸着性能について研究した. 得られた吸着剤のウラン吸着速度はアルカリ処理することにより著しく向上した. 吸着速度向上の最も大きな因子は吸着剤のアルカリ溶液中における膨潤による膨潤細孔の形成である. その他に吸着剤の化学的な構造の変化がみられた. 固体試料の (CP-MAS)<SUP>13</SUP>CNMRスペクトルの測定により官能基構造について若干の情報が得られた.
著者
江川 博明 カバイ ナラン 西郷 伸吾 野中 敬正 首藤 健富
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.324-332, 1991
被引用文献数
1

アミドキシム基を有する球状吸着剤において, 実際に利用できる機械的強度を有し, 海水からのウラン吸着性能をどこまで高められるかを目的に, 海水ウランが粒内を拡散するに適する湿潤時細孔構造をもつ, 低橋かけ度多孔性樹脂の合成を試みた. 橋かけ剤としてジビニルベンゼン (DVB) 5mol%, 重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを180mmol/<I>l</I>モノマー, 希釈剤としてトルエンをモノマーに対し100vol%使用して合成したアクリロニトリルーDVB球状共重合体をヒドロキシルアミンのメタノール溶液と80℃, 2h反応させて得られた樹脂は, アルカリ処理 (1mol/<I>l</I>NaOH, 30℃, 72 h) 後においても良好な強度を示した. 天然海水 (約25℃) を上向流で空間速度 (SV) 650±30h<SUP>-1</SUP>で10日間通液し, 硫酸で溶離したとぎのウラン回収量は130mg/<I>l</I>-R, 640g/kg-Rであった.
著者
永井 祐吾 勝見 正治 田伏 克惇 田伏 洋治 青山 修 江川 博 野口 博志 小林 康人 森 一成 山上 裕機 中井 健裕
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.1511-1518_1, 1986

当教室ではじめて開発した内視鏡的マイクロ波凝固療法を早期胃癌25例に行い,本法による局所的癌完全消滅の可能性について検討した. 14例は根治手術予定の症例であり,術前内視鏡検査時に病巣の部分または全域凝固を行い切除標本にてマイクロ波凝固の影響を検討した.部分凝固群7例においては,凝固部はulII~IVの潰瘍となり,潰瘍底にはviableな癌細胞は認められなかった.全域凝固群7例中,3例においては,摘出標本の連続切片のいずれの部位にも腫瘍細胞は認められず,本法による局所根治例と考えられた.残りの4例中2例は凝固後の潰瘍底のsm層に,あとの2例では辺縁粘膜に,いずれも微少な癌病巣が残存していた. 内視鏡的治療のみを行った11例のほとんどは高齢や重篤な併存疾患のために手術の適応外となった症例であった.生検にて悪性所見が消失するまでに1~6回の凝固療法を要し,2~50カ月(平均17カ月)の経過観察中2例にのみ再発を認めた.再発例にはさらに凝固を追加し,再び悪性所見は消失した. 以上より局所的癌完全消滅という点においては,本法はsmまでの浸潤胃癌にまで有効であり,現時点においては,手術不適応となった早期胃癌の治療法として期待できると考える.
著者
江川 博明 本里 義明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.397-401, 1965-02-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
3

緻密に織られたビニロン布のリン酸エステル化をリン酸-尿素法およびリン酸二アンモニウム-尿素法について試み,その反応条件と得られたカチオン交換布の性質を測定し,イオン交換膜として利用の可能性を検討した。最も良好なイオン卒換布を得るには・ビニロン布を85%リン酸20g,尿素50g,水20gまたはリン酸二アンモニウム20g,尿素40g,水40gの反応浴に浸漬し,液を2倍重量付着させ,100℃で30分間乾の反応条件と得られたカチオン交換布の性質を測定し,イオン交換膜として利用の可能性を検討した。最も良好なイオン交換布を得るには,交換布を得るには,ビニロン布を85%リン酸20g,尿素50g,水20gまたはリン酸二アンモニウム20g,尿素40g水40gの反応浴に浸漬し,液を2倍重量付着させ,100℃で30分間乾燥し,ついで160~180℃で20~30分間熱処理するのが適当であった。市販のビニロン布(厚さ0.46mm)を用いた場合,最適条件で得られたイオン交換布は総イオン交換容量が2.0~2.3meq/g,水和時の厚さ0.58~0.60mm,膜中輪率(0.1N/0.2NKCl)が0.99~0.99,比電導度(0.1NKCl)が8~9Ω-1cm-1×10-3,湿潤時の抗張力および破裂強度がそれぞれ200~220kg/cm2,14~15kg/cm2を示し,耐酸,耐アルカリ,耐溶剤性は非常に良好でそのままイオン交換膜として利用可能と考えられる。なお両方法において熱処理を高温で長時間行なうときは架橋結合の生成が認められた。