著者
森信 暁雄
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.367-371, 2010-12-30 (Released:2016-02-26)
参考文献数
10
被引用文献数
1

生物学的製剤はRA患者の寿命を延ばすことができる時代となった.一方で,生物学的製剤の副作用には患者の死亡につながるものもあるが,本邦での市販後調査によると,その原因は,感染症と間質性肺炎で半数を超える.欧米のレジストリー研究によると,生物学的製剤は感染症リスクをあげる.発症時には迅速な対応と,日和見感染による肺炎,敗血症を考慮しなければならない.特に注意すべき肺炎がニューモシスチス肺炎であり,死亡例も散見される.発熱,呼吸困難,スリガラス影をみた際に,ニューモシスチス肺炎を必ず鑑別に上げなくてはならない.今後ST合剤による予防も考えるべきである.結核は生物学的製剤に投与下では比較的おこりやすい.ツベルクリン反応2+陽性以上の患者では,INHによる予防投与を行わないと高率に結核を発症する可能性がある.実際,結核発症者の多くではINH予防投与が行われていなかった.このような感染症の発症には,一般に,高齢,肺疾患の合併,ステロイド投与などがリスクとなるので,そのようなケースでは慎重な経過の観察が望まれる.感染症による死亡を防ぐことにより,生物学的製剤の有用性がさらに高まるものと思われる.
著者
杉本 健 辻 剛 中澤 隆 豆原 彰 並木 充夫 森信 暁雄 河野 誠司 熊谷 俊一
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集 第35回日本臨床免疫学会総会抄録集 (ISSN:18803296)
巻号頁・発行日
pp.84, 2007 (Released:2007-10-12)

(症例)71歳女性 (既往歴)65歳:顎下腺腫瘍、70歳:右膝全人工関節置換術後深部静脈血栓症 (家族歴)特記すべきことなし (現病歴)2007年2月下旬よりの下腿浮腫を主訴に当院消化器内科入院。入院後ネフローゼ症候群と診断され、精査中に画像上び漫性膵腫大、膵頭部腫瘤および一部狭窄と不整を伴う主膵管の拡張を指摘された。また、膵周囲、頚部、縦隔など全身リンパ節腫脹も認めた。頚部リンパ節生検から悪性リンパ腫や癌転移は否定され、膵頭部腫瘤については超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診にて悪性所見は認めなかった。以上の所見とIgG4高値より自己免疫性膵炎と診断された。また口腔潰瘍、ネフローゼ、汎血球減少、dsDNA抗体陽性,抗核抗体陽性よりSLEと診断された。3月下旬に加療目的にて免疫内科転科となり、PSL(1mg/kg/day)による治療が開始された。膵頭部腫瘤、全身リンパの縮小と蛋白尿の消失、血球減少の改善を得た。 【考察】IgG4関連疾患として注目を浴びている自己免疫性膵炎を合併したSLEの症例を経験した。両者の合併は極めて稀であるため報告する。
著者
三枝 淳 森信 暁雄 河野 誠司
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

関節リウマチ(RA)の関節破壊に関与している滑膜細胞(RA-FLS)の細胞内代謝に着目して研究を行い、以下の知見を得た。1. RA-FLSではグルタミナーゼ(GLS)1の発現が亢進しており、GLS1阻害によりRA-FLSの増殖は抑制された。2. GLS1阻害薬の投与により、関節炎モデルマウスの関節炎は抑制された。以上より、グルタミン代謝はRAの病態に関与していることが示唆され、GLS1は新たな治療標的と考えられた。
著者
横井 徹 和田 淳 森信 暁雄 全 勝弘 関川 孝司 川野 示真子 永山 恵子 池田 弘 浅野 健一郎 福島 正樹 山本 博 土居 偉瑳雄 日下 昌平
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.24, no.11, pp.1463-1469, 1991-11-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
25

1989年7月から1990年9月までの15か月間に経験したパラコート中毒例6例に対し, 胃洗浄, 血液吸着 (DNP), 強制利尿に加えて, ポリエチレングリコール含有電解質溶液Golytelyを用いた72-96時間の連続的な腸洗浄を行い5例を救命した. 救命例5例では, 治療開始後比較的短時間で尿中パラコート定性反応は陰性化し, 全例後遺症なく1か月後に退院した. 死亡例1例は大量服用例で, 尿中パラコート定性反応は陰性化せず, 多臓器不全に陥った.パラコート中毒治療の要点は本剤の体外への速やかな排泄である. 現在治療は腸管洗浄と血液浄化, 強制利尿を組み合わせて行われているが, 腸洗浄は電解質異常などをきたすため強力に行うことは難しい. Golytelyはこの欠点を補い, パラコートが腸管から体内へ吸収される前に速やかに排泄することによって本症を効果的に治療しうると考えられる. しかし本症のように腸管に広範囲の粘膜欠損を生じる場合は, 体内への多量の水分貯留をきたす場合があるので循環動態に注意が必要と考えられた.