著者
土肥 敏博 北山 滋雄 熊谷 圭 橋本 亘 森田 克也
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.120, no.5, pp.315-326, 2002 (Released:2003-01-28)
参考文献数
55
被引用文献数
6 6

神経終末から放出されたノルエピネフリン(NE),ドパミン(DA)およびセロトニン(5-HT)は,それぞれに固有の細胞膜トランスポーター(NET,DAT,SERT)によりシナプス間隙から速やかに除去されて神経伝達が終息される.さらにこれらのモノアミンはシナプス小胞トランスポーター(VMAT)によりシナプス小胞内に輸送·貯蔵され再利用される.NET,DAT,SERTはNa+,Cl−依存性神経伝達物質トランスポーター遺伝子ファミリーに,VMATはH+依存性トランスポーター遺伝子ファミリーに属する.また選択的RNAスプライシングにより生じるアイソフォームが存在するものもある.NET,DAT,SERTは細胞膜を12回貫通し,細胞内にN末端とC末端が存在する分子構造を有すると予想される.近年,トランスポーターの発現は種々の調節機構により誘導性に制御されていると考えられるようになった.例えば,kinase/phosphataseの活性化によりその輸送活性あるいは発現が修飾され,トランスポータータンパク質あるいは相互作用するタンパク質のリン酸化による調節が考えられている.また,トランスポーターの発現は神経伝達物質それ自身の輸送活性に応じて調節されることやアンフェタミンなどの輸送基質あるいはコカインなどの取り込み阻害薬による薬物性にも調節されることが示唆されている.NET,DAT,SERTは抗うつ薬を始め種々の薬物の標的分子であることから,うつ病を始めとする様々な中枢神経疾患との関わりが調べられてきた.近年,遺伝子の解析からもその関連性が示唆されてきている.これまで抗うつ薬は必ずしも理論に基づき開発されたものばかりではなかったが,これらトランスポーターのcDNAを用いた発現系により,これまで検証できなかった多くの問題が分子レベルで詳細に検討されるようになった.その結果,多くの精神作用薬のプロフィールが明らかになったばかりでなく,より優れた,理論的に裏打ちされた多様な化学構造の新規治療薬の開発が可能となった.
著者
土肥 敏博 森田 克也 森岡 徳光 仲田 義啓 北山 滋雄
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

アロディニアは,本来痛みを伝えない触角,冷覚など非侵害性の刺激によって痛みを生じる現象であり,神経因性疼痛neuropathic painの主症状として知られている.その発症機構は十分に解明されていない.血小板活性化因子(PAF)は炎症のメディエーターとして,とくに強力な浮腫誘発物質として知られる.しかし,痛覚伝導における役割は知られていない.本件研究は脊髄での痛覚伝導におけるPAFの役割について検討し,以下の結果を得た.1.PAFのマウス脊髄腔内投与は10fg〜1pgにおいてアロディニアを誘発した.PAF誘発アロディニアはPAF受容体拮抗薬TCV-309,WEB2086,BN50739およびATP P2X受容体拮抗薬pyridoxalphosphate-6-azophenyl-2,4-disulfonic acid(PPADS),NMDA受容体MK801および7-NI,morphine,QYNAD,minocyclineにより抑制された.2.PAF, NO donors, glutamate誘発アロディニアはNOスカベンジャー,guanylate cyclase inhibitor,G kinase inhibitorにより抑制され,cGMP誘導体によるアロディニアはG kinase inhibitorのみによって抑制された.3.PAFは培養後根神経節細胞からATPの遊離を引き起こした。PAF受容体mRNAはDRG,脊髄,ミクログリアにRT-PCRにより発現が確認された.4.PAFの脊髄腔内投与により脊髄背側表層にOX-42陽性ミクログリアが観察された.5.アモザピンの静脈内投与はPAF並びにcGMP誘発アロディニアを用量依存的に抑制した.これらの結果よりPAFは強いアロディニアを誘発し,その機序にATP P2X受容体,NMDA受容体,NOならびcyclic GMP/G-cyclaseカスケードが関与することが示唆された.この過程にミクログリアが関与することが示唆された.また,グリシントランスポーター遮断薬の抗アロディニア薬としての有用性が示唆された.また,Interleukin-1は疼痛伝達に係わりの深いP/Q type Ca2+ channelの発現を抑制すること,NSAIDsの一部はMDRを抑制して神経毒性を高める作用を有する事を認めた.以上,本研究で得られた知見より,PAF誘発アロディニアは神経因性疼痛の発症機序および新規治療薬開発のための有益なモデルとなることが示唆されその応用が期待される.
著者
白石 成二 森田 克也
出版者
独立行政法人国立がん研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、がん患者のオピオイドに対する感受性の低下とmiRNAの変化の関係を明らかにすることである。乳がん骨転移痛モデルラットを作製し、miRNAの変化を解析した。対照と比較して2倍以上増加したmiRNAは56個で、1/2以下に減少したのは9個であった。この異常miRNAのうちlet-7についてμオピオイド受容体をDAMGOで刺激した時の活性と細胞膜での発現に対する影響を検討したが、ばらつきが多く一定の結果に至っていない。他の異常miRNAにはmiR-20a、miR-21、 miR-23b、 miR-133a、 miR-133bなどが含まれていた。
著者
土肥 敏博 北山 滋雄 熊谷 圭 橋本 亘 森田 克也
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.120, no.5, pp.315-326, 2002-11-01
被引用文献数
1 6

神経終末から放出されたノルエピネフリン(NE),ドパミン(DA)およびセロトニン(5-HT)は,それぞれに固有の細胞膜トランスポーター(NET,DAT,SERT)によりシナプス間隙から速やかに除去されて神経伝達が終息される.さらにこれらのモノアミンはシナプス小胞トランスポーター(VMAT)によりシナプス小胞内に輸送&middot;貯蔵され再利用される.NET,DAT,SERTはNa<sup>+</sup>,Cl<sup>&minus;</sup>依存性神経伝達物質トランスポーター遺伝子ファミリーに,VMATはH<sup>+</sup>依存性トランスポーター遺伝子ファミリーに属する.また選択的RNAスプライシングにより生じるアイソフォームが存在するものもある.NET,DAT,SERTは細胞膜を12回貫通し,細胞内にN末端とC末端が存在する分子構造を有すると予想される.近年,トランスポーターの発現は種々の調節機構により誘導性に制御されていると考えられるようになった.例えば,kinase/phosphataseの活性化によりその輸送活性あるいは発現が修飾され,トランスポータータンパク質あるいは相互作用するタンパク質のリン酸化による調節が考えられている.また,トランスポーターの発現は神経伝達物質それ自身の輸送活性に応じて調節されることやアンフェタミンなどの輸送基質あるいはコカインなどの取り込み阻害薬による薬物性にも調節されることが示唆されている.NET,DAT,SERTは抗うつ薬を始め種々の薬物の標的分子であることから,うつ病を始めとする様々な中枢神経疾患との関わりが調べられてきた.近年,遺伝子の解析からもその関連性が示唆されてきている.これまで抗うつ薬は必ずしも理論に基づき開発されたものばかりではなかったが,これらトランスポーターのcDNAを用いた発現系により,これまで検証できなかった多くの問題が分子レベルで詳細に検討されるようになった.その結果,多くの精神作用薬のプロフィールが明らかになったばかりでなく,より優れた,理論的に裏打ちされた多様な化学構造の新規治療薬の開発が可能となった.<br>