- 著者
-
森野 智子
戸畑 温子
溝口 奈菜
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年歯科医学会
- 雑誌
- 老年歯科医学 (ISSN:09143866)
- 巻号頁・発行日
- vol.33, no.3, pp.366-372, 2018-12-31 (Released:2019-01-31)
- 参考文献数
- 23
口腔機能の低下を防止することにより,身体フレイル予防効果が期待されている。しかし口腔機能向上訓練は単調であるうえ評価が困難であり,その継続には支援が必要である。そこで,美味しく楽しく医療費のかからない訓練飴を口腔機能向上訓練へ適用することを考え,健常者を対象に飴舐め訓練の口腔機能向上効果を検証するパイロットスタディを実施した。 研究対象は協力企業社員50歳以上男性職員30人で,はじめに基礎情報と口腔状況を調査した。口腔状況調査項目は,口腔不潔,口腔乾燥,舌口唇運動機能低下,低舌圧,嚥下機能低下である。被験者中から無作為に選んだ15人(介入群)に2週間介入を実施した。介入方法は毎日1本の飴舐め訓練である。被験者介入群への飴舐め訓練指導は,歯科衛生士が著者らの提案した飴舐め法を紙面で示し,実際に舐めてもらう個別指導形式で実施した。残り15人(対照群)には通常どおりの生活を送ってもらい,2週間後両群の口腔状況を調べた。二元配置分散分析の結果,実験条件(介入群と対照群)と測定時期(介入前と介入2週間後)に交互作用はなく,介入群と対照群に有意な差が認められたのは舌圧であった(F=6.510,p=0.01)。介入前舌圧値がこれまで報告されている低舌圧の基準値より高かったにもかかわらず,飴舐め訓練で短期間に機能向上が得られたことは注目に値する。舌圧の維持改善は,咀嚼,嚥下,コミュニケーションに重要であることから,訓練飴を用いた口腔機能訓練で舌圧が維持改善されることは,全身の健康に寄与することが期待できると考える。