著者
小竹 理奈 羽成 恭子 岩上 将夫 大河内 二郎 植嶋 大晃 田宮 菜奈子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.390-398, 2020-06-15 (Released:2020-07-02)
参考文献数
27

目的 介護老人保健施設(以下,老健施設)での看取りの実施割合は増加傾向にあり,老健施設での質の高い看取りを提供することは重要である。しかし,日本で老健施設における遺族による看取りの質の評価と施設の体制との関連を調査した研究はない。そこで本研究では,老健施設における看取りの質の指標のひとつである遺族の満足度と施設体制との関連を明らかにすることを目的とした。方法 全国老人保健施設協会が2014年1に実施した調査の個票匿名データを,二次的に分析した。調査対象は,同会会員施設の各施設で計画的な看取りを行った直近3ケースの遺族であった。従属変数は,遺族における看取りの「満足度」(「直後は悔いのない看取りだったと思えましたか」という5段階の質問に対して,最良の「大いに思えた」およびそれ以外)とした。独立変数は,各施設での各種説明体制(入所~死亡までにおける説明の状況など),運営・教育等への取り組み状況とした。単変量解析および多変量ロジスティック回帰分析により,従属変数と独立変数との関連を検討した。結果 分析対象は363人の遺族であった。このうち250人(68.9%)が「満足度」では「大いに思えた」を選択していた。多変量ロジスティック回帰分析の結果,遺族の看取り「満足度」と有意に正の関連を示したのは,利用者への定期的な診察があること,(オッズ比2.94,95%信頼区間1.52-5.70),入所時に利用者に対し疾病状態の説明が医師・多職種協働でなされていること(2.07,1.01-4.25),病態悪化時に利用者および家族に対し状況説明が医師・多職種協働でなされていること(3.12,1.17-8.33),施設職員のストレスマネジメントに取り組んでいること(3.63,1.84-7.16)であった。結論 遺族の看取りの高い満足度に関連する要因として,利用者および家族への説明において医師以外の職種の関わりが多いことや,管理医師が施設職員へのストレスに配慮していることが示唆された。施設の運営でこれらの要素を重視することによって,老健施設での看取りの質が向上する可能性がある。
著者
安藤 裕一 植嶋 大晃 渡邊 多永子 田宮 菜奈子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.311-318, 2020-05-15 (Released:2020-06-02)
参考文献数
20

目的 日常的に運動を行うことは,生活習慣病の予防ならびに健康寿命を延伸するための一つの要素とされている。本研究は,高齢者の参加と安全配慮に主眼をおき全国に展開する「総合型地域スポーツクラブ」(総合型クラブ)の現状を分析し課題を考察することを目的とした。方法 スポーツ庁が2016年に実施した「総合型地域スポーツクラブ活動状況調査」を二次利用し,年代別会員数の記載のある2,444クラブを対象とした。総会員数に対するシニア会員数の割合(シニア会員割合)の4分位点を算出した上で,シニア会員割合が少ない群から順にA群,B群,C群,D群としこれを独立変数とした。また総合型クラブの所在地に基づき6地域に分類したものをもう一つの独立変数とした。従属変数は,総会員数,シニア会員数,シニア会員割合,1人当たりの月会費,クラブ収入総額,会員1人当たりの年予算,スポーツ・レクリエーション活動種目数,スポーツ指導者数,会員10人当たりのスポーツ指導者数,危機管理方策・事故防止対策(全13項目),法人格取得の有無とした。結果 シニア会員割合が高いD群は,会員数,1人当たりの会費,クラブ収入総額,会員1人当たりの年予算が低く,スポーツ指導者数ならびに,会員10人当たりのスポーツ指導者数が少なかった。またD群は危機管理方策・事故防止対策の6項目(健康証明書提出,賠償責任保険加入,安全講習会実施,熱中症対策,医師との連携,AED設置)の実施割合が最も低く,法人格の取得割合も最も低かった。地域間の比較では,シニア会員の割合は,中国四国が高く,中部が低いという地域差を認めたもののいずれの地域もその中央値は20%台であった。危機管理方策・事故防止対策の実施割合は,関東は10項目で最も高かったのに対し,近畿は8項目で最も低かった。結論 高齢の会員割合が高い総合型クラブは人的規模ならびに予算規模が小さく,危機管理方策・事故防止対策が遅れていること,またこれらの規模や安全対策に地域差がみられることが示された。「高齢者は疾病を抱える可能性が高いことを鑑みれば,高齢の会員割合が高い総合型クラブは安全配慮が重要であるにも関わらず取り組みが遅れている」という現状を,該当する総合型クラブならびに関係機関は理解した上で改善を進めることが必要である。
著者
田宮 菜奈子 森山 葉子 山岡 祐衣 本澤 巳代子 高橋 秀人 阿部 智一 泉田 信行 Moody Sandra Y. 宮田 澄子 鈴木 敦子 Mayers Thomas Sandoval Felipe 伊藤 智子 関根 龍一 Medeiros Kate de 金 雪瑩 柏木 聖代 大河内 二郎 川村 顕 植嶋 大晃 野口 晴子 永田 功 内田 雅俊 Gallagher Joshua 小竹 理奈 谷口 雄大
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-07-18

誰もが満足できる人生の幕引きができるシステム作りのための、介護医療における実証研究およびそれに基づく提言を目的とした。まず、内外のガイドライン等レビューを行い、次に、我が国における医療・介護における実態・分析として、①看取り医療の実態と予後の検証(医療の視点)を救急病院での実態やレセプト分析により、②老人保健施設における看取りの実態(介護の視点)を、介護老人保健施設における調査から実施した。実態把握から根拠を蓄積し、本人の納得のいく決定を家族を含めて支援し、その後は、適切な医療は追求しつつも生活の質を一義としたケアのあり方を議論し、工夫実行していくことが重要であると考える。