著者
植田 美那子 東山 哲也
出版者
日本植物形態学会
雑誌
PLANT MORPHOLOGY (ISSN:09189726)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.23-31, 2010 (Released:2011-04-08)
参考文献数
42

多細胞生物は複雑な構造をもつが、それらは全て受精卵という単細胞に由来する。被子植物の受精卵は顕著な細胞極性をもち、その不等分裂によって、植物体の地上部の元となる頂端細胞と、根端や胚外組織になる基部細胞が生み出される。つまり、受精卵の非対称性が成熟植物の頂端-基部軸に変換されるわけだが、どのように受精卵が極性化して不等分裂へと至るのか、また、どのような分子基盤によって頂端と基部とで異なる発生運命が生じるのか、いまだ解明されていないことばかりである。しかし近年、これらのメカニズムを理解するための端緒がようやく見え始めてきた。そこで本稿では、主に被子植物であるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)を用いた分子生物学研究によって得られた最新の知見を概説し、今後の体軸研究の展開について考えたい。
著者
中島 敬二 上田 貴志 植田 美那子 望月 敦史 近藤 洋平 稲見 昌彦 遠藤 求 深城 英弘 河内 孝之 小田 祥久 塚谷 裕一
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2019-06-28

植物は一生を通じて器官や組織を作り続けながら成長する。このような特性に起因して、植物の形態には固有の周期性が現れる。植物の周期形態は遺伝的プログラムや環境変化といった、内的・外的因子により変化し、植物はこれを積極的に利用することで、器官のかたちや細胞の機能を変化させる。植物の形態や成長に現われるこのような「可塑的な周期性」は、植物個体の内部に潜在する未知の周期性とその変調に起因すると考えられるが、周期の実体やそれが形態へ現れる仕組みは不明である。本新学術領域では、植物科学者・情報科学者・理論生物学者が密接に連携して共同研究を展開し、周期と変調の視点から植物の発生原理を解明する。