- 著者
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楠永 敏恵
山崎 喜比古
- 出版者
- 日本保健医療社会学会
- 雑誌
- 保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, no.1, pp.1-11, 2002-06-30 (Released:2016-11-16)
本稿は、病いの経験(illness experience)に関する欧米の研究から、病いの個人誌(biography)に与える影響を整理し、今後の研究の一指針を示すことを目的としている。そのため第1に、既存の研究で踏まえておくこととして、病いの経験の定義、病いの経験へのアプローチの特徴、研究の対象・枠組・テーマの3点を要約した。第2に、慢性の病い(chronic illness)は個人誌を混乱させるというBuryの概念モデル(1982)を提示し、検討すべき点として混乱の領域と混乱の普遍性を挙げ議論した。さらに、この混乱した個人誌は再構成されることを指摘し、その再構成の結果やプロセスに関する考察と、再構成の場としての語りについて解説した。第3に、病いの個人誌に与える影響に関する今後の研究課題を提案した。