- 著者
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林 芙美
武見 ゆかり
赤岩 友紀
石川 ひろの
福田 吉治
- 出版者
- 日本公衆衛生学会
- 雑誌
- 日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.9, pp.618-630, 2021-09-15 (Released:2021-09-07)
- 参考文献数
- 42
目的 本研究の目的は,食生活関心度を評価する尺度の作成および信頼性・妥当性の検討と,新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大の影響下において人々の食生活を左右し得る心理的な側面の変化とその関連要因を明らかにすることである。方法 2020年7月1~3日,調査会社を通じてインターネット調査を実施した。調査対象者は,同年4~5月の緊急事態宣言期間中に特定警戒都道府県に指定された13都道府県に在住し,調査時に普段の食料品の購入頻度または調理頻度が週2日以上の20~69歳の男女約2,000人とした。最終的に2,299人を解析対象者とした。食生活関心度は12項目にて把握し,信頼性の検討では内的整合性としてクロンバックα係数を確認し,妥当性の検討では構成概念妥当性と基準関連妥当性を確認した。基準関連妥当性の検討には行動変容ステージを用い,Kruskal-Wallis検定を用いて得点を比較した。COVID-19の影響を受ける前と調査時を比べた食生活関心度の変化は,12項目について「変化なし」0点,「改善」+1点,「悪化」−1点で合計得点を算出し,「変化なし」「改善傾向」「悪化傾向」の3群間で属性および社会経済的状況をχ2検定および残差分析を用いて比較した。結果 探索的因子分析,確証的因子分析を行った結果,2因子から成るモデルで適合度が良いことが示された(モデル適合度指標:GFI=0.958,AGFI=0.938,CFI=0.931,RMSEA=0.066)。クロンバックα係数は,第1因子(食生活の重要度)0.838,第2因子(食生活の優先度)0.734であり,尺度全体でも0.828で信頼性が確認された。また,基準関連妥当性の検討では,行動変容ステージが高いほど尺度の合計得点は高く有意差が認められた(P<0.001)。食生活関心度の変化は,重要度に比べ優先度が悪化した者が多かった。食生活の重要度・優先度ともに,性別,年齢層,婚姻状況,就業形態,過去1年間の世帯収入,コロナの影響による世帯収入の変化に有意差がみられ,男性,20~29歳,未婚,正社員,過去1年間の世帯収入400~600万円未満で「悪化傾向」が有意に多かった。結論 COVID-19影響下では,食生活の重要度に比べ優先度が悪化した者が多く,男性や若年層,未婚者などは食生活関心度が悪化する者が多かった。