著者
石川 ひろの
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.77-90, 2020-06-16 (Released:2020-08-26)
参考文献数
43

この数十年,医療を取り巻く社会的な変化は,患者-医療者関係を大きく転換させてきた。慢性疾患の増加に伴い,患者と医療者との長期的な治療関係や治療過程における患者の主体的な参加が求められる中で,いわゆる伝統的な父権主義的患者-医師関係から,相互参加型の患者-医師関係が模索されてきた。そこにおいて,目指されてきたのが患者と医療者による意思決定の共有(Shared decision making:SDM)である。生命へのリスクが高く,しばしば複数の治療法の選択肢が存在するがん診療場面は,早くからSDMの重要性が注目されてきた領域である。マスメディア,インターネットなど,保健医療に関する情報が増大し,情報源が多様化する中で,患者自身が適切な情報を収集・活用し,主体的に治療や意思決定に参加していく力の重要性は増している。SDMの実践は,参加に消極的になりがちな人々,不利な立場にある人々も含め,治療のプロセスへの参加を促し,納得のいく決定ができるように支援することで,健康の不平等の解消にもつながる可能性がある。
著者
湯川 慶子 石川 ひろの 山崎 喜比古 津谷 喜一郎 木内 貴弘
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.16-26, 2015 (Released:2015-02-27)
参考文献数
32

目的:慢性疾患患者の代替医療による副作用への対処行動や主治医とのコミュニケーションとへルスリテラシーとの関連を明らかにすることを目的とした.方法:2011年5月から7月に,全国の患者会の慢性疾患患者920名に自記式質問紙を用いた横断研究を行った.603通を回収し欠損が多いものを除いた570通のうち(有効回収率62.0%),代替医療の利用経験を持つ428名を対象とした.副作用経験の有無(副作用の経験あり群・経験なし群),副作用時の対処(利用中止群・利用継続群),主治医への副作用の症状と療法の報告(主治医への報告あり群・報告なし群)別のへルスリテラシーについて対応のないt検定を行った.さらに,属性とヘルスリテラシーを説明変数,利用中止,主治医への報告ありを目的変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った.結果:428名中88名(20.6%)が副作用を経験していた.そのうち45.9%が利用を継続し,61.6%は主治医に副作用の症状と療法を報告していなかった.利用中止群が利用継続群よりも,報告あり群が報告なし群よりもヘルスリテラシーが高かった.多変量解析でも,ヘルスリテラシーと利用中止か継続かとの関連(OR=2.75,95%CI 1.06-7.10),主治医への報告の有無との関連(OR=2.59,95%CI 1.01-6.65)が認められた.結論:へルスリテラシーは,代替医療による副作用への適切な対処,主治医への報告など,代替医療の安全な利用に重要である.
著者
石川 ひろの
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.338-342, 2014-10-25 (Released:2016-05-16)
参考文献数
3
被引用文献数
3

先行研究を読むことは,研究の着想から論文執筆に至るまで研究のあらゆる過程で重要であるが,その目的や活用の仕方は,研究のどの段階にあるかによっても変わってくる.研究開始前に先行研究に当たる主な目的の一つは,先行研究で明らかにされていることとまだ明らかにされていないことを明確にすることであるだろうし,論文執筆時には先行研究と自分の研究結果を比較して考察を深めるために先行研究を読むことになる.先行研究を読むことの意味やその使い方を知り,何のために読むのか意識して先行研究に向き合うことが,より効率よく先行研究を活用して,研究の質を高めることにつながると考える.
著者
石川 ひろの
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.447-458, 2021-03-12 (Released:2021-03-23)
参考文献数
66

この数十年間,「患者中心」という概念は,医療コミュニケーション研究において多くの研究者の注目を集めてきた。にもかかわらず,その概念は定義や測定方法が統一されていないことがしばしば批判されてきた。本論文では,機能主義,コンフリクト理論,功利主義,社会構築主義の4つの社会学の理論的視点に基づいて,患者-医師間コミュニケーションに関する研究が,患者中心的コミュニケーションをどのように概念化し,測定してきたかをレビューした。それぞれの理論的視点によって,患者-医師関係の前提,期待される役割,コミュニケーションの目標は異なる捉え方をされていた。これが,先行研究においてたびたび指摘されてきた患者中心的コミュニケーションに関する概念的および操作的な定義の混乱の一因であると考えられる。本研究は,患者中心的コミュニケーションのさまざまなモデルと,各モデルで期待される役割と目標についての概観を示した。患者中心的コミュニケーションの重要な特徴は,患者の希望や状況に合わせて患者-医師間のコミュニケーションモデルを調整することであるとされる。本研究で示した枠組みは,その患者や文脈に即したコミュニケーションモデルを特定し,既存の患者中心的コミュニケーションの尺度を理論的に再構築することにつながる可能性がある。また,患者中心的コミュニケーションは,これまで主に患者中心のケアを実現するための医師側の行動として定義されてきたが,その実現に向けては患者との協働が重要であり,今後の研究,臨床において着目していく必要がある。
著者
宮脇 梨奈 加藤 美生 河村 洋子 石川 ひろの 岡 浩一朗
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.23-021, (Released:2023-09-05)
参考文献数
24

目的 近年,インターネットは,情報を検索し取得するだけでなく,情報発信や共有も可能となっている。それに伴い医療・健康分野でも,健康情報を収集する能力だけでなく,双方向性に対応した多様な能力も必要とされるようになっている。しかし,両方の能力を評価する尺度は見当たらない。そのため,本研究では欧米で開発されたDigital Health Literacy Instrument (DHLI)の日本語版を作成し,その妥当性と信頼性について検討した。またデジタル・ヘルスリテラシー(DHL)の程度と対象者の特徴との関連を明らかにした。方法 尺度翻訳に関する基本指針を参考にDHLI日本語版を作成した。社会調査会社にモニター登録している20~64歳男女2,000人(男性:50%,年齢:40.7±12.0歳)にインターネット調査を実施した。DHLI日本語版,社会人口統計学的属性,健康状態,インターネットの利用状況,eヘルスリテラシー(eHEALS)を調査した。構成概念妥当性は,確証的因子分析による適合度の確認,基準関連妥当性は,eHEALSとの相関により検討した。内部一貫性および再検査による尺度得点の相関により信頼性を検証した。DHLと各変数との関連は,t検定,一元配置分散分析および多重比較検定を用いた。結果 確証的因子分析では,GFI=.946,CFI=.969,RMSEA=.054と良好な適合値が得られ,日本語版も原版同様に7因子構造であることを確認した。またeHEALS得点との相関(r=.40,P<.001)を示し妥当性が確認された。信頼性では,Cronbachのα係数は.92であり,再検査による尺度得点の級内相関係数はr=.88(P<.001)であった。尺度得点は,主に性,世帯収入,健康状態,インターネットでの情報検索頻度および使用端末が関連していた。また信頼性の評価,適応可能性の判断,コンテンツ投稿の下位尺度得点が低い傾向にあった。結論 DHLI日本語版は,日本語を介する成人のDHLを評価するために十分な信頼性と妥当性を有する尺度であることが確認された。DHLの低さが健康情報格差につながる可能性もあるため,DHLの向上が必要な者や強化が必要なスキルの特定をし,それに合わせた支援策を検討する必要がある。
著者
石川 ひろの 中尾 睦宏
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.201-211, 2007-03-01
被引用文献数
4

患者-医師間のコミュニケーションは,診察の主要な構成要素であり,患者-医師関係を築き治療を進めるうえで必要な情報の共有や意思決定をしていくための,最も基本的な手段である.診察における医師,患者のコミュニケーションは,各個人の特性によって異なるだけでなく,その場での相手のコミュニケーション行動に影響を受け,それに対応して変化していく.したがって患者-医師間のコミュニケーションを分析するためには,患者-医師間の会話や行動を客観的に評価すると同時にその相互作用を明らかにする必要がある.Roterが開発した相互作用分析システムは,医療現場に特有な相互作用を評価できるツールである.本稿では,そのシステムを日本の外来癌診療場面に用いた研究を紹介し,患者-医師コミュニケーション研究の新たな可能性について展望する.
著者
町田 夏雅子 石川 ひろの 岡田 昌史 加藤 美生 奥原 剛 木内 貴弘
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11, pp.637-645, 2018-11-15 (Released:2018-12-05)
参考文献数
17

目的 東京五輪開催決定後,国内外で受動喫煙規制強化を求める声が増え厚生労働省が対策強化に取り組んでいる。本研究では受動喫煙規制に関する新聞報道の現状と傾向を内容分析により明らかにし,行政側の報告書との比較から課題を示すことを目的とした。方法 分析対象は全国普及率が上位の3紙(朝日・読売・毎日)の2013年9月7日から2017年3月31日までに発行された東京本社版の朝刊と夕刊で,キーワードとして「受動喫煙・全面禁煙・屋内喫煙・屋内禁煙・建物内禁煙・敷地内禁煙」を見出しか本文に含む記事のうち,投稿記事および受動喫煙規制に関係のない記事を除いた182記事である。規制に対する肯定的記載および否定的記載に分けた全37のコーディング項目を作成した。また行政側が発表した内容を記事が反映しているかを考察するため,平成28年8月に厚生労働省が改訂発表した喫煙の健康影響に関する検討会報告書(たばこ白書)より受動喫煙に関する記載を抜き出し,コーディング項目に組み入れた。結果 コーディングの結果,記事数の内訳はそれぞれ肯定的107,否定的7,両論併記50,その他18であった。両論併記のうち否定意見への反論を含むものが14記事(28%)であり,反論の内容は主に「屋内禁煙による経済的悪影響はない」,「分煙では受動喫煙防止の効果はない」という記載であり,いずれもたばこ白書に明示されている内容であった。結論 受動喫煙規制に関する新聞記事は,規制に肯定的な内容の一面提示が最も多く,最も読み手への説得力が高いとされる否定意見への反論を含む両論併記の記事は少数であったが,社説においては両論併記の記事が一定数認められた。もし新聞が受動喫煙規制に対して賛成なり反対なり何らかの立場を持つのであれば,記者の意見を述べる社説において,反対意見への反論を含む両論併記を行えば,社説の影響力が高まるかもしれない。また,報道が不十分と考えられるトピックも見られ,受動喫煙規制に関する新聞報道の課題が示唆された。
著者
木内 貴弘 大津 洋 石川 ひろの 岡田 昌史 辰巳 治之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

クリニックなど小規模医療機関等、治験や臨床試験に参加したいがシステム負担が大きく参加協力が難しかった施設においても本研究成果を利活用することにより従来に比較し容易に治験や臨床研究に参加できる環境を提供できる道が開けた。これにより疾患に依存して、その当該疾患の研究に、より適している施設に試験参加協力の上、臨床研究を効率的に推進可能な対象施設範囲が広がった。UMINセンターが持つ全国集計サーバーへ匿名化した臨床試験情報を安全かつ効率的に収集できる対象がこれまでの大規模病院のみならずクリニック等小規模医療機関まで広がった。
著者
石川 ひろの
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.16-21, 2012-01-31 (Released:2016-11-16)

患者や市民が、自分の健康を主体的に管理し、保健医療におけるさまざまな意思決定に積極的に関わることが求められるようになる中、健康や医療に関する情報を収集し、理解し、活用する力として、「ヘルスリテラシー」という概念が注目を集めてきた。ヘルスリテラシーの定義はさまざまであるが、WHOは「健康の維持・増進のために情報にアクセスし、理解、活用する動機や能力を決定する認知的、社会的スキル」としている。これに基づき、Nutbeamは、ヘルスリテラシーを(1)機能的リテラシー、(2)伝達的リテラシー、(3)批判的リテラシーの3つから成るとするモデルを提唱した。本報告では、この観点から開発したヘルスリテラシー尺度を用いた日本における実証研究の結果を紹介する。また、患者や市民のヘルスリテラシーを把握し、それに応じた患者教育・健康教育や情報提供を行うとともに、ヘルスリテラシーの向上を目指した働きかけを行う必要性について考察する。
著者
加藤 美生 木内 貴弘 河村 洋子 石川 ひろの 岡田 昌史 奥原 剛
出版者
帝京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

保健医療課題を取り扱ったプライムタイムテレビドラマの研究状況を文献調査から把握した。視聴者の医師像の認知および医師への信頼度の影響を分析したところ、医療ドラマの外科医の描かれ方によって信頼度を左右する可能性があることが明らかになった。テレビドキュメンタリー番組に登場した患者の語りについてはその重要性が近年認識されつつあることがわかったが、公害や薬害の番組数は種類によって制作数の偏りが見られた。エンターテイメント・エデュケーション実施団体や医療ドラマ制作者へのヒアリング調査により、制作者の制作動機や課題を収集し、メディアと医療をつなぐ会を設立し医療ドラマ制作教育プログラムを実施した。
著者
木内 貴弘 岡田 昌史 奥原 剛 加藤 美生 石川 ひろの
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.312-317, 2015-08

2004年 9 月,ICMJE(International Committee of Medical Journal Editors)傘下の学術雑誌有志による臨床試験登録の必須化を求める声明によって,多くの日本国内の医学研究者から,日本国内に日本語の取り扱いができる臨床試験登録サイトの構築を行うことが,要望された.このため,大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)では,2005年 6 月 1 日より,日本初の臨床試験登録システムとして,UMIN臨床試験登録システム(UMIN CTR=UMIN Clinical Trial Registry)を運用開始した.データ項目や運用法は,ICMJE声明の提唱する基準を満たすように設計され,UMIN CTRは,ICMJE(International Committee of Medical Journal Editors)の認定を得た 5 つのサイトに含まれた.日本を主体としながらも,世界中からの臨床試験登録を集める国際的なサイトとして認知されてきた.UMIN CTRはWHOの定めた必須項目をすべて含んでおり,JPRN (Japan Primary Registry Network)を介して,WHOの全世界臨床試験ポータルサイトへのデータ提供も行っている.登録件数は年々増大して,合計で 1 万 7 千件以上にいたっている. 2013年11月には,匿名化した個別症例の生データを臨床試験登録データに追加できる症例データレポジトリの運用が開始された.これによって,臨床データの散逸防止と長期保存が可能になること,相互チェック・査察のための臨床研究データの質の担保ができること,そして,論文で公表された以外の新たな知見を得るための統計解析のリソースとしての活用が可能となった. 現行の問題点としては,実施責任組織,研究費提供元,病名のためのマスターがなく,文字列入力となっている点が挙げられる.実施責任組織と研究費提供元については,現在,マスターと関連するシステムの改造が実施されており,2015年度中の実現が予定されている.病名については,改善の目途がたっていない. 臨床試験登録情報の内容と形式については,CDISCにおいて,標準化の作業が進められている.CDISCによる標準化の完成度の向上を待って,CDISC標準によるデータの受け入れと取り出しができるようになることが望まれる.
著者
林 芙美 武見 ゆかり 赤岩 友紀 石川 ひろの 福田 吉治
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.618-630, 2021-09-15 (Released:2021-09-07)
参考文献数
42

目的 本研究の目的は,食生活関心度を評価する尺度の作成および信頼性・妥当性の検討と,新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大の影響下において人々の食生活を左右し得る心理的な側面の変化とその関連要因を明らかにすることである。方法 2020年7月1~3日,調査会社を通じてインターネット調査を実施した。調査対象者は,同年4~5月の緊急事態宣言期間中に特定警戒都道府県に指定された13都道府県に在住し,調査時に普段の食料品の購入頻度または調理頻度が週2日以上の20~69歳の男女約2,000人とした。最終的に2,299人を解析対象者とした。食生活関心度は12項目にて把握し,信頼性の検討では内的整合性としてクロンバックα係数を確認し,妥当性の検討では構成概念妥当性と基準関連妥当性を確認した。基準関連妥当性の検討には行動変容ステージを用い,Kruskal-Wallis検定を用いて得点を比較した。COVID-19の影響を受ける前と調査時を比べた食生活関心度の変化は,12項目について「変化なし」0点,「改善」+1点,「悪化」−1点で合計得点を算出し,「変化なし」「改善傾向」「悪化傾向」の3群間で属性および社会経済的状況をχ2検定および残差分析を用いて比較した。結果 探索的因子分析,確証的因子分析を行った結果,2因子から成るモデルで適合度が良いことが示された(モデル適合度指標:GFI=0.958,AGFI=0.938,CFI=0.931,RMSEA=0.066)。クロンバックα係数は,第1因子(食生活の重要度)0.838,第2因子(食生活の優先度)0.734であり,尺度全体でも0.828で信頼性が確認された。また,基準関連妥当性の検討では,行動変容ステージが高いほど尺度の合計得点は高く有意差が認められた(P<0.001)。食生活関心度の変化は,重要度に比べ優先度が悪化した者が多かった。食生活の重要度・優先度ともに,性別,年齢層,婚姻状況,就業形態,過去1年間の世帯収入,コロナの影響による世帯収入の変化に有意差がみられ,男性,20~29歳,未婚,正社員,過去1年間の世帯収入400~600万円未満で「悪化傾向」が有意に多かった。結論 COVID-19影響下では,食生活の重要度に比べ優先度が悪化した者が多く,男性や若年層,未婚者などは食生活関心度が悪化する者が多かった。
著者
小澤 千枝 石川 ひろの 加藤 美生 福田 吉治
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.266-277, 2021-08-31 (Released:2021-09-03)
参考文献数
30

目的:「健康無関心層」と呼ばれる集団の特徴を明らかにし,効果的なアプローチを検討することを目指し,健康への関心の概念整理と健康関心度尺度の開発を行った.方法:30~69歳の400名(30代,40代,50代,60代の男女各50名)を対象にインターネット調査による横断研究を実施した.調査項目は先行研究などから選定された健康関心度尺度の候補項目に加えて,健康行動(食習慣,運動習慣,飲酒習慣,喫煙状況)実施の有無などである.解析は構成概念妥当性検証のための探索的および確証的因子分析,再テスト法による一貫性,内的整合性の確認を行った.また,健康行動実施の有無による尺度得点の違いについてt検定を行った.結果:因子分析の結果,3因子,全12項目の尺度となった.各々の因子名は「健康への意識」「健康への意欲」「健康への価値観」とした.また,確証的因子分析において概ね許容できる適合度指標が得られた(GFI=0.932, AGFI=0.896, CFI=0.936, RMSEA=0.079).再テスト信頼性,内的一貫性は,尺度全体,下位尺度とも十分であった.尺度得点と健康行動の有無は,第1, 第2因子で概ね正の関連が見られたが,第3因子ではほとんど関連が見られなかった.結論:健康への関心を多面的な概念として整理し,3因子から成る健康関心度尺度を開発した.今後「健康無関心層」の把握と効果的な教育介入の検討に活用されることが期待される.
著者
町田 夏雅子 石川 ひろの 岡田 昌史 加藤 美生 奥原 剛 木内 貴弘
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11, pp.637-645, 2018

<p><b>目的</b> 東京五輪開催決定後,国内外で受動喫煙規制強化を求める声が増え厚生労働省が対策強化に取り組んでいる。本研究では受動喫煙規制に関する新聞報道の現状と傾向を内容分析により明らかにし,行政側の報告書との比較から課題を示すことを目的とした。</p><p><b>方法</b> 分析対象は全国普及率が上位の3紙(朝日・読売・毎日)の2013年9月7日から2017年3月31日までに発行された東京本社版の朝刊と夕刊で,キーワードとして「受動喫煙・全面禁煙・屋内喫煙・屋内禁煙・建物内禁煙・敷地内禁煙」を見出しか本文に含む記事のうち,投稿記事および受動喫煙規制に関係のない記事を除いた182記事である。規制に対する肯定的記載および否定的記載に分けた全37のコーディング項目を作成した。また行政側が発表した内容を記事が反映しているかを考察するため,平成28年8月に厚生労働省が改訂発表した喫煙の健康影響に関する検討会報告書(たばこ白書)より受動喫煙に関する記載を抜き出し,コーディング項目に組み入れた。</p><p><b>結果</b> コーディングの結果,記事数の内訳はそれぞれ肯定的107,否定的7,両論併記50,その他18であった。両論併記のうち否定意見への反論を含むものが14記事(28%)であり,反論の内容は主に「屋内禁煙による経済的悪影響はない」,「分煙では受動喫煙防止の効果はない」という記載であり,いずれもたばこ白書に明示されている内容であった。</p><p><b>結論</b> 受動喫煙規制に関する新聞記事は,規制に肯定的な内容の一面提示が最も多く,最も読み手への説得力が高いとされる否定意見への反論を含む両論併記の記事は少数であったが,社説においては両論併記の記事が一定数認められた。もし新聞が受動喫煙規制に対して賛成なり反対なり何らかの立場を持つのであれば,記者の意見を述べる社説において,反対意見への反論を含む両論併記を行えば,社説の影響力が高まるかもしれない。また,報道が不十分と考えられるトピックも見られ,受動喫煙規制に関する新聞報道の課題が示唆された。</p>
著者
加藤 美生 石川 ひろの 奥原 剛 木内 貴弘
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.746-755, 2019-12-15 (Released:2019-12-25)
参考文献数
18

目的 複数の国や地域で事業展開する研究開発型多国籍製薬企業は,社会的貢献の対象である患者団体との繋がりが深い。社会的貢献の内容は多岐にわたり,寄付金や協賛費などの直接的資金提供から,企業主催の講演会などに伴う費用などの間接的資金提供,患者団体への依頼事項(原稿執筆や監修,調査)への謝礼,さらには社員による労務提供がある。研究開発型企業の場合,ユーザーである患者の声を生かし,より患者に寄り添った医薬品の開発が求められる。そのため,企業と患者団体との関係性に関する透明性を担保することは,あらゆるステークホルダーにとって重要である。本研究の目的は研究開発型多国籍製薬企業の社会的貢献活動と患者団体の関係の透明性を確保するための情報開示動向を,日米欧の業界団体規程を軸に把握することである。方法 欧州製薬団体連合会(EFPIA),米国研究製薬工業協会(PhRMA),日本製薬工業協会(JPMA)による「製薬企業と患者団体との関係の透明性」に関連する規程の記述内容について,「透明性」「対等なパートナーシップ」「相互利益」「独立性」の4概念を用いて質的帰納的に分析した。結果 記述内容のほとんどは「透明性」に関していた。最も具体的に記載されていたのはEFPIAの規程であり,患者団体の制作物内容への影響を与えないことや企業主催あるいは患者団体主催のイベントやホスピタリティに関する記載があった。3団体の規程とも財政支援や活動項目の目的や内容について,記録をとることを課していた。しかし,透明性の確保のための情報公開については,PhRMAでは必須とせず,JPMAでは明確な更新スケジュールについて明記がなかった一方,EFPIAでは年1回公開情報の更新を義務付けていた。「対等なパートナーシップ」については,相互尊重,対等な価値,信頼関係の構築などのワードが共に抽出された。いずれの規程も「相互利益」についての言及がなかった。「独立性」に関しては,いずれの規程も患者団体の独立性を尊重または確証することが記述されていた。結論 各団体が規程を示し,各会員会社による自発的な情報開示を推奨していたが,団体によりその詳細の度合いが異なっていた。業界団体の規程は会員会社のポリシーの基となることから,できるだけ詳細にかつ地域を超えて,同様の情報開示内容や規程が揃えられることが望まれる。
著者
常住 亜衣子 石川 ひろの 木内 貴弘
出版者
Japan Society for Medical Education
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.335-344, 2013

目的 : 医療面接における医師・患者間コミュニケーションスキル評価尺度の概要と問題点を明らかにする.<br>方法 : 先行研究,2009年以降の文献レビューより欧米で広く使用される尺度を収集した.尺度の評価項目をthe Kalamazoo Consensus Statement(KCS)を参考に分類した.<br>結果 : 対象とした10尺度の全項目の83%がKCSの示す領域いずれかに分類された.<br>考察 : 医師・患者間コミュニケーションに必須のスキルについて一定の合意形成が示唆されたが,実証的根拠を示す研究がさらに必要である.理論的根拠に基づき構成され,使用する場面に適した信頼性の高い評価ツールの選択・開発が求められる.
著者
山崎 喜比古 井上 洋士 伊藤 美樹子 石川 ひろの 戸ヶ里 泰典 坂野 純子 津野 陽子 中山 和弘 若林 チヒロ 清水 由香 渡辺 敏恵 清水 準一 的場 智子
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

健康生成論と人生究極の健康要因=Sense of Coherence(SOC、首尾一貫感覚)並びにエンパワメントアプローチを取り入れた、支援科学でもある新しい健康社会学の理論と方法を、「健康職場」づくりの研究、病と生きる人々の成長と人生再構築に関する研究、SOCの向上や高いことと密接な正の関連性を有する生活・人生経験の探索的研究、当事者参加型リサーチを用いた調査研究の展開・蓄積を通して、創出し描出した。