著者
坂野 純子 矢嶋 裕樹
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.34-45, 2005 (Released:2014-08-06)
参考文献数
30
被引用文献数
2

目的 本研究は,Antonovsky(1987)によって開発された SOC スケール13項目版の構成概念妥当性をその因子構造の観点から検討し,加えて,SOC スケールの下位因子の臨床的有用性を抑うつとの関連性において吟味することを目的とした。方法 分析対象は,都内の A,B 大学および,中国地方の C 大学に在籍する大学生1,110人とした。SOC スケールの構成概念妥当性は探索的因子分析ならびに確認的因子分析を用いて検討した。また,SOC スケールの下位因子と抑うつとの関連性は構造方程式モデリングを用いて検討した。結果 探索的因子分析の結果,2 つの解釈可能な因子(「把握処理可能感」「有意味感」)から構成される 2 因子解が最適な解であると判断された。次いで,確認的因子分析の結果,前述の2因子から構成した SOC スケールの二次因子構造モデルがおおむねデータに適合することが示された(χ2 値=327.065, df=64, GFI=0.957, CFI=0.872, RMSEA=0.061)。さらに,構造方程式モデリングの結果,「有意味感」は「把握処理可能感」よりも「抑うつ」に対して高い影響力を有していることが示された。結論 Antonovsky の 3 因子仮説は支持されなかったが,今後,「処理可能感」と「把握可能感」の弁別可能性について,慎重に検討していく必要性があろう。なお,得られた 2 因子(「有意味感」と「把握処理可能感」)は,「抑うつ」に対してそれぞれ異なる影響力を有しており,これら 2 因子に着目することによって有益な臨床学的情報が得られる可能性が示唆された。
著者
坂野 純子 菊澤 佐江子 的場 智子 山崎 喜比古 杉山 克己 八巻 知香子 望月 美栄子 笠原 麻美
出版者
岡山県立大学
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.19-25, 2010

本研究では、大学生の精神障害者への否定的な態度をスティグマ的反応尺度により把握し、その因子構造と関連要因を明らかにすることを目的とする。青森県、大阪府、岡山県、東京都、奈良県の大学生を対象にビニエット方式で質問紙調査を実施した。ビニエットの事例疾患はうつ病、統合失調症、ぜんそくの3種類を用意し、それらを無作為に対象者に振り分けた。分析項目はビニエットの人物に対するスティグマ的反応、疾患事例、回答者の性別、専攻分野とした。大学生のスティグマ的反応を検討するために最尤法を用いたプロマックス回転による探索的因子分析を行った。その結果、「精神障害者と接することへの不安」「精神障害者の責任能力への不信」「精神科医療を受けていることへの抵抗感」「精神障害者の知的能力や生産性への期待」「精神疾患への恥辱」の5因子が抽出された。一元配置分散分析と多重比較の結果、「精神障害者の責任能力への不信」「精神障害者への恥意識」因子は、ぜんそく群よりもうつ病群および統合失調症群にスティグマ的反応が強い傾向がみられたが、両者の間には差はみられなかった。専攻分野別では「精神障害者の責任能力への不信」「精神障害者の知的能力や生産性への期待」「精神疾患への恥意識」3因子では、看護系が社会福祉系、人文社会系理工系に比べてスティグマ的反応が小さい傾向がみられた。そのうち「精神疾患への意識」因子は社会福祉系が理工系に比べてスティグマ的反応が小さい傾向がみられた。
著者
山崎 喜比古 井上 洋士 伊藤 美樹子 石川 ひろの 戸ヶ里 泰典 坂野 純子 津野 陽子 中山 和弘 若林 チヒロ 清水 由香 渡辺 敏恵 清水 準一 的場 智子
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

健康生成論と人生究極の健康要因=Sense of Coherence(SOC、首尾一貫感覚)並びにエンパワメントアプローチを取り入れた、支援科学でもある新しい健康社会学の理論と方法を、「健康職場」づくりの研究、病と生きる人々の成長と人生再構築に関する研究、SOCの向上や高いことと密接な正の関連性を有する生活・人生経験の探索的研究、当事者参加型リサーチを用いた調査研究の展開・蓄積を通して、創出し描出した。
著者
山崎 喜比古 井上 洋士 江川 緑 小澤 温 中山 和弘 坂野 純子 伊藤 美樹子 清水 準一 江川 緑 小澤 温 中川 薫 中山 和弘 坂野 純子 清水 由香 楠永 敏恵 伊藤 美樹子 清水 準一 石川 ひろの
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

病・障害・ストレスと生きる人々において、様々な苦痛や困難がもたらされている現実とともに、よりよく生きようと苦痛・困難に日々対処し、生活・人生の再構築に努める懸命な営みがあることに着眼し、様々な病気・障害・ストレスと生きることを余儀なくされた人々を対象に実証研究と理論研究を行い、その成果は、英文原著17 件を含む研究論文26 件、国内外での学会発表60 件、書籍2 件に纏めて発表してきた。