著者
槇村 久子
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.121-126, 1991-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
25
被引用文献数
4

現在, 墓地として供給されているのは「公園墓地」と呼ばれる様式である。これが日本でどのように成立, 展開したか, その意図したものと, 現在に至っての限界と矛盾点を明らかにする。明治初年に神葬墓地として東京市や大阪市に新墓地が都心遠隔地に形成されるが都市人口集中で都市計画上から必要に迫られ, 井下清により計画された多磨墓地をもって始まる。その後同様式の墓地が全国に造成された。しかし, 形式として欧米自然風景式, 習俗として日本の埋葬, 家族制度を理念としたために, 限界にある。問題はハード面での公園様式と近代化の中で変化していった習俗, 家族の構造変化に対応せず重ね合わせた中にミスマッチを起していることがわかる。
著者
槇村 久子 MAKIMURA Hisako
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.5-21, 2011-12

少子高齢人口減少は大都市にも見られるようになり、一方都心に高層マンション等住宅供給が増加し子育て世帯層が増加している。大都市において子育て期にある親と子が安全に安心して生活できるための条件を日常生活の視点から明らかにする。本稿では大阪市で幼児と子育て世帯層が増加している地区を取り上げ、そこに備わっている条件を現地調査、親子のベビーカーでの調査、地域の子育て支援グループ、認可外保育所、親へのヒアリング調査などで分析した。まち歩きではハード面で主に道路、公園、駅舎、商業施設や公共施設などをチェックし、その他の調査から子育て期の親子、特に女性が安全で安心して住むことができる要素を立地、交通アクセス、マンションの価格、保育施設と保育サービス、子育てサービスや施設、近くで利用できるサービスを詳細に抽出した。We found that the old aged is increasing and the young aged is decreasing in population, the other side the child-rearing families increasing in population by high residential buildings in center of Osaka. We researched some areas in Osaka City on traffic access, conveniently, day nursery, day-care service, regional child-care support group. We checked on roads, parks, stations, public facilities, shopping centers by baby carriage in addition.
著者
槇村 久子 MAKIMURA Hisako
出版者
京都女子大学
雑誌
現代社会研究科論集 (ISSN:18820921)
巻号頁・発行日
no.5, pp.1-19, 2011-03

若年男性はバブル経済崩壊以降の厳しい雇用情勢の変化の中で、結婚や就職においても変化や選択を迫られている。20代後半から30代後半までの働く若年男性を対象に、男女共同参画に関する意識と実態、ライフスタイルをW eb調査により、また共分散分構造析を用いて、女性への評価との関係から男女共同参画意識を規定する要因の因果関係を考察した。 未婚、既婚、また20代後半、30代前半、30代後半で特徴的であり差異がある。特に30代後半で未婚の年代は、他の年代や既婚と差異が大きい。ワーク・ライフバランスや経済的自立や家計責任において理想と現実の乖離が大きく、若年男性が置かれている生活の将来不安は非正規雇用と正規雇用による経済的不安と関係している。 男女共同参画を規定する要因を階層、仕事、生活満足、女性への評価の因果関係を分析するため、社会経済的地位、現在の仕事に求めるもの、ワーク・ライフバランス、生活満足、女性への評価の5つに整理した。その結果、未婚、既婚男性ともに社会経済的な地位を得て、仕事や生活満足を高く持っている人たちが、女性を積極的に評価し、経済的な自立も求め、さらに男女共同参画社会が進展することを望んでいるという関係が分かった。自分が社会で承認されていないと考える未婚男性は女性の仕事能力を低く、不十分としか評価できない状態になっている。若年男性が自分を評価できる社会システムが必要である。This paper intends to analyze the consciousness of Japanese young men (in Osaka area) with respect to the gender equality and inquire into relations between the types of their lifestyle and their assessment of women. As a result, we found that there are significant differences between married young men and unmarried ones as well as among young men from 25 to 30 years old, those from 30 to 35 and those elder than 35, as far as their perceptions of gender equality are concerned. In particular, unmarried young men over 35 years old tend to demonstrate different attitude in comparison with those married belonging to the same age group. Also we found out a difference concerning their assessment of women between regular employees, who enjoy economic independence and have financial responsibility for their families and irregular ones who do not have such responsibility. This difference in the form of employment is very important for our analysis, because it explains to some extent different perceptions of young men toward women. To make clear relations between the factors which determine attitude toward gender equality and those related to their assessment of women, we selected class, job and grade of satisfaction with life as examples of the former factors and socioeconomic position, expectations from present works, work — life balance, life satisfaction, and perceptions of women (evaluation of their ability to work, their desire for the whole independence and economic one in particular) as the second factors. As a result of our analysis based upon the AMOS 7 (a software for covariant structural analysis), we found that both married and unmarried young men who have got a good socioeconomic status and are satisfied with their works and life tend to appreciate highly women and desire their economic independence.
著者
槇村 久子
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.109-114, 1994-03-31
被引用文献数
2 2

地縁血縁の中で成立,維持されてきた墓地が近代化の中で崩壊してきた。これまでの墓地が固定的な地域共同体により支えられていたなら,その崩壊後にはどのような墓地が出現してくるのか。その墓地は何を要素として成立しているのか。近年新たな形で出現している都市型共同墓所を調査することで,地縁血縁を超える墓地の方向を探る。都市型共同墓所とは家族を単位とせず,地縁血縁によらずに同じ墓所に眠る形をそう呼ぶこととする。分析の結果,共同墓所に共通にあるのは個人単位,共同祭祀,死後の平等の3点。今後の方向として墓所の共同化,有期限化,無形化が導き出された。それは近代化の矛盾の課題に対応し,近代を超える萠芽と見られる。