著者
秋山 翔太 大栗 聖由 山田 博之 斎藤 義朗 池口 拓哉 佐藤 研吾 廣岡 保明 小河 佳織 樋本 尚志 前垣 義弘
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.121-126, 2020-06-01 (Released:2020-06-01)
参考文献数
19

不思議の国のアリス症候群 (Alice in Wonderland syndrome; AIWS) は, 特殊な視覚症状を生じる症候群であり, 片頭痛や感染, てんかんなどに併発することが多く, ヒステリーなどの精神疾患と誤って診断されやすい。今回われわれは, 定型小児欠神てんかん寛解後に異常な視覚症状を呈しAIWSと診断された10歳女児に対して視覚誘発電位 (VEP) を行い, giant VEPの所見を記録できた症例を経験した。本症例は朝方の視野の歪み, 目のぼやけ, ものが大きくまたは小さく見えるといった視覚症状を有し, てんかんの既往歴を認めた。パターンリバーサルVEP検査において潜時は正常であったが, Cz–Oz誘導においてN75–P100およびP100–N145に高振幅なgiant VEPを認めた。また, SPECTにおいて右頭頂葉に軽度血流低下を認めた。これらのことから, giant VEPはてんかん既往による皮質興奮性上昇を反映した結果と考えられた。AIWSに特異的な視覚症状を認めた場合, 精神疾患と鑑別するための補助的診断法としてVEPやSPECTを併用することで, より正確な診断を導き出すことができるのではないかと考えた。
著者
田所 智子 大浦 杏子 琢磨 慧 中原 麻衣 藤田 浩二 三村 志麻 谷 丈二 森下 朝洋 小野 正文 樋本 尚志 正木 勉
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.25-30, 2024-01-01 (Released:2024-01-10)
参考文献数
17

症例は50代女性.B型肝硬変,肝細胞癌に対して肝切除術後.術後15カ月頃より貧血(術前Hb10.9 g/dl→5.8 g/dl)および白血球数減少(術前7550 /μl→1160 /μl)の急激な増悪を認め,末梢神経障害も呈するようになった.全身薬物療法の施行歴はなく各種スクリーニング検査や骨髄検査を行うも原因不明であった.経過で血清銅低値,血清亜鉛高値が判明,他科にて亜鉛製剤が術後より長期処方されており亜鉛製剤による銅欠乏症と判断した.薬剤中止に加え純ココアによる銅補充を行い,術前と同程度への血球回復と末梢神経障害の改善を認めた.肝硬変患者における亜鉛補充療法は一般的となりつつあるが,亜鉛製剤は多量継続摂取により銅欠乏症の誘因になり得る.銅欠乏により生じる血球減少は鑑別が困難なことが多く,神経障害は非可逆性となる可能性がある.亜鉛製剤投与中の血清銅測定の必要性を周知する必要がある.
著者
大栗 聖由 上原 一剛 池亀 彰茂 小河 佳織 樋本 尚志 前垣 義弘 吉岡 伸一
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.342-348, 2022-04-25 (Released:2022-04-25)
参考文献数
17

本研究では,鳥取県の一般診療所における生理機能検査を担当する臨床検査技師(以下,検査技師)の実態調査と将来の検査技師雇用についてアンケート調査を行い,一般診療所における検査技師の現状を明らかにすることを目的とした。アンケート調査票を鳥取県に所属する421施設の一般診療所に送付した。アンケート内容は雇用状況,生理機能検査の担当職種,実施項目,実施項目ごとの月平均検査件数,将来検査技師の雇用予定について質問した。返信があった115施設中,生理機能検査実施施設は102施設存在した。そのうち,8施設(7.8%)で検査技師が生理機能検査を担当していた。検査技師雇用施設での超音波検査における月平均検査数は,検査技師雇用のない施設と比較し有意に多かった(p < 0.001)。また,超音波や脳波,そして筋電図検査件数が多いほど,検査技師が雇用されている傾向であった。調査項目と技師の雇用状況を視覚的に解析できるコレスポンデンス解析を行い,検査技師雇用を検討している施設では,PSG検査件数が多い傾向であった。一般診療所での生理機能検査を生業とする検査技師の必要性が高まれば,医療の質や量について地域格差が示されている今日,生理機能検査の質と量を担保することに貢献できるのではないかと考えられた。