著者
井上 厚史 権 純哲 中 純夫 邊 英浩 邢 東風 李 暁東 木村 純二 吉田 真樹
出版者
島根県立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

東アジアにおける朝鮮儒教の位相を解明すべく、従来の性理学から実学へという通説を再検討する一方で、朝鮮王朝建国時にまで遡り、儒教的建国理念、鄭道伝と『朝鮮経国典』、『朱子家礼』の導入、徐敬徳の理気論、16世紀朝鮮儒学者の人心道心説、李退溪と朝鮮心学、李栗谷と儒教の土着化、李匡臣の理気論、韓元震の王陽明批判、李星湖の『孟子』解釈、丁若鏞の政治論、沈大允の歴史館、李炳憲と高橋亨、朴殷植の開化思想など、朝鮮儒教を特徴づける重要なテーマの抽出に尽力し、その結果として、新たな朝鮮儒学史を記述する研究成果を積み重ねることができたと考えている。
著者
権 純哲
出版者
山口大学
雑誌
山口大学哲学研究 (ISSN:0919357X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1_a-40 _a, 1994

本稿は、茶山の体制構想を、彼の儒教古典解釈との関連で検討しようとするも。である。茶山思想の評価をめぐるさまざまな問題点を踏まえながら、特に王朝体制自体をどう見るべきかという問題、あるいは王朝体制を支えていた儒教思想をどう理解すべきかという問題を念頭に置き、論を進めていきたい。分析の対象としては、主に『経世遺表』の「序官」と「下官修制」を用いた。 『経世遺表』の改革構想は主に『周礼』に思想的根拠を求めたものであるが、まず、『礼』に執着せざるをえなかったことの歴史的経違や思想的背景を追跡し、茶山の儒教古典研究の現実的かつ実践的性格を明らかにすることにつとめた。次に、朝鮮王朝の基本法典である『経国大典』と茶山当時の支配体制が窺える『大典通編』の権力機構の編成を比較・検討することによって、体制の特徴及び問題点を幾つか整理し、茶山の体制構想を、機構の整備、官階の整備、軍制の整備という三つの政治的課題から考察した。 機構の整備においては、『書経』の〈三公一三孤一六官〉に思想的根拠を求めながら、〈議政府一六曹〉体制の強化が図られたことに注目した。六曹に属する衙門の数的均衡を成し遂げる際には、衙門の移動・統合・新設などが行なわれたわけであるが、その理論的根拠として、あるときは『周礼』などの儒教古典が引用され、また、あるときは『経国大典』の規定をそのまま存続させていることを解明し、そこから茶山経学の方法的性格を窺うことができた。 官階の整備においては、古典の〈三公一三少一卿一大夫一士〉という序列の体制に思想的根拠を求め、『経国大典』の「正・従九品」制度の簡略化がなされている。ここでは、まず、大夫ではないはずの三公が「大匡輔国崇禄大夫」と称されているように、改革構想自体とその古典の根拠との矛盾が指摘できた。また、大夫と士を厳格に区別すべきであるという茶山の主張は、文・武のバランスのとれた人事を目指すものである一方、動揺しつつあった身分制の問題を、体制強化の方向へ吸収しようとするものであったことも明らかにされた。 軍制の整備においては、備辺司の中枢府への統合、議政府の時任大臣と六曹判書の中枢府職の兼任禁止を通じて、軍務機関としての中枢府の正常化と最高機関としての議政府の復権が推進されていたこと。「無卒之将」と「無将之卒」を再組織することによって軍の組織と指揮系統の立て直しが図られていたこと。主力部隊である三営の兵卒数の縮小と屯田設置を通じて国家財政の再建が図られていたことに注目した。
著者
権 純哲
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.71-104, 2013

はじめにI 『朝陽報』についてII 『朝陽報』連載「論ニ十世紀之帝国主義」について 1. 翻訳者不明 2. 抄訳かつ未完訳 3. 訳文体裁の刷新 4. 連載中断の理由 (1) 朝陽報社の方針との関係 (2) 幸徳秋水の韓国認識 (3) ビスマークに対する認識 (4)『愛国精神』III 翻訳の特徴 1. 固有名詞の翻訳 2. 誤訳の例 3. 文脈に従う意訳むすび
著者
権 純哲
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.39-51, 2019

京城帝國大學創設に參晝し、法文學部朝鮮語學文學第一講座教授となる高橋亨は、朝鮮文學/史のほか朝鮮思想/史・朝鮮儒學/史を講義し、學間的基礎・骨格を作り上げた。彼の京城帝大講義ノートは、既知の著書・論文とは異なる性格を帶び、帝國・植民地學間として誕生した朝鮮學の實態を明かす資料としてその意義は大きい。その概觀と、この研究に至る經緯、高橋亨と京城帝國大學につき略述した。
著者
権 純哲
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

近代的国家体制構築のさなか、侵略を露骨化しつつある日本との友好関係の維持に腐心していた大韓帝国に受容される近代学問と思想が如何なる役割を果たしたか、という問題意識のもと、とくに国家学・反国家思想の受容実態を、近代学術の伝授と受容の観点から究明しようとする本研究において、まず、「国家学」関係書籍の原書確認と対照考察をおこない、その受容実態を明かにしたのであり、つぎに、帝国主義批判書の原書確認と対照分析を通じて、近代日本の帝国主義国家思想に対する批判論の意義と韓国知識人によるその受容実態の一端を究明した。