著者
小林 潔司 大本 俊彦 横松 宗太 若公 崇敏
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.688, pp.89-100, 2001-10-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
30
被引用文献数
10 9

建設工事請負契約約款に基づく公共プロジェクトの建設契約は将来生起するであろう事象を完全には記述できない不完備契約という特殊性を持っている. 本研究では, 建設請負契約の当事者間に信義則が確立しており, かつ契約内容がある一定の条件を満足していれば, 建設請負契約により社会的に最適な方式で公共プロジェクトを遂行できることを理論的に明らかにする. さらに, 信義則が機能しない場合に生じる建設請負契約方式の限界とその場合における望ましい契約方式について考察する.
著者
小谷 仁務 横松 宗太
巻号頁・発行日
pp.1-23, 2017-01-09

本報告書では、京都大学防災研究所・災害リスクマネジメント研究室の小谷と横松を中心としたグループが2012 年より神戸市長田区JR 新長田駅南部の商店街周辺を対象として行ってきた一連の研究活動の差し当たっての総括を行います。一連の活動では、地域の商店街アーケードや街並みなどの地域のインフラストラクチャーの視点から、地域コミュニティの交流の問題を研究してきました。具体的には、(1)震災後の物理的環境である商店街アーケードの変貌によって、買い物時の行動規範が「おしゃべりをしながら買い物する」ことから「商品のみを見て無言で買い物をする」ことへと変わったのかを検証しました。次いで (2)新しい商店街アーケードで行われるようになった地域の共同行事が日常生活の交流の拡大に果たす役割を分析し、それを通じ、新しい商店街アーケードの機能を明らかにすることを目指しました。本報告書では、まず、ここまでの私たちの研究活動を振り返り、震災後の地域のインフラの変貌によって買い物時に交わすおしゃべりという行動が変容した可能性を明らかにしたことを述べます。次いで、新たな大正筋商店街アーケードで開かれる縁日を対象とし、私たちが開発した社会ネットワークに関するシミュレーションモデルを用い、縁日が日常生活の交流を拡大してきた効果を定量的に評価します。また、その効果に寄与する商店街アーケードの空間的特性を示します。これらを通じて、地域コミュニティの日常生活の交流の拡大の視点から、これまで看過されてきた新しい大正筋商店街のアーケードの機能を明らかにします。
著者
横松 宗太
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本年度ははじめに企業の地震保険保有行動について分析した.それによって有限責任である企業のリスクファイナンス行動の特徴や,それに対応するための保険商品の特徴を分析することによって,家計のリスクファイナンスとの相違を明らかにし,家計の保険問題がもつ特殊性を把握した.ついで,近年各自治体により創設されている住宅再建支援制度が家計の災害保険行動や,被災後の居住地・住宅選択行動に及ぼす影響について分析した.分析の結果,住宅再建補助制度は低年齢の家主によって利用され,家賃補助制度は高齢の家計に適用されることがわかった.住宅再建支援制度,家賃補助制度は,被災地からの人口流出を抑えることが確認されたが,その一方,住宅市場の分析を通じて,補助金の最終的な帰着先は一様ではないことも明らかになった.また住宅再建補助は災害保険行動に負の影響を与えることが確認された.また,リスクの不認知を解消する媒体として,地域の自主防災会に着目した.災害リスク認知の個人差は地域住民が協力して自主防災活動に取り組む過程で大きな問題となる.よって自主防災会はリスクコミュニケーションの媒体としても期待されているが,ある地域においてアンケート調査を実施したところ,多くの自主防災会で活動内容に関する議論やRCはなされていないとの調査結果を得た.そこで本年度は,ゲーム理論を応用して自主防災会の防災会長と住民の間のコミュニケーションの過程を理論的に分析した.分析の結果,自主防災会の始動が急務であり,一部の住民がリスクを強く認識しているほど,彼らがリスクを認識しない住民に地域リスクの大きさを理解させるよりも,自分達で活動を行ってしまう可能性があることが示された.一方,互いのリスク認識の根拠までを伝達し合う場合や,活動のコストを小さくする知恵を提供し合う場合にはコミュニケーションが成立する可能性が大きくなることも判明した.
著者
小谷 仁務 横松 宗太
出版者
公益社団法人日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:13482858)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.91-98, 2015-05

This study examines the potential role of local festivals in enhancing communication among residents in a local community. The study focuses on two traditional local festivals, Ennichi and Jizobon, in Nagata Ward, Kobe City. We conduct a questionnaire survey to understand how these festivals form new interactions in the community, and how people enjoy communication and develop relationship based on them. The results indicate that Ennichi and Jizobon have mainly connected residents of almost homogeneous characteristics who had not had chances to meet without the festivals and have often formed strong ties among them that are expected to work during disasters. Based on the finding that organizers of the festivals have played a role of hubs of the network, the study further considers how to achieve sustainable development of the festivals and the social network in the local community.
著者
横松 宗太 湧川 勝巳 小林 潔司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.24-42, 2008

自然災害により家財を喪失した家計は,復旧のために自己資金以外に外部資金を調達することが必要となる場合がある.しかし,家計が金融機関から借入れができないという流動性制約に直面する場合,家財の復旧過程が遅延することによる被害が発生する.本研究では,流動性制約下における家計による家財の復旧行動をモデル化し,家財が低い水準に止まることや,復旧過程が遅延することにより発生する流動性被害について分析する.そして,防災投資が「期待被害額の減少効果」のみならず,低所得層の家計に対して「期待部分復旧被害額の減少効果」や「期待復旧遅延被害額の減少効果」をもたらすことを明らかにする.また,災害保険や政府による復旧資金の貸付制度というリスクファイナンス手段が,家計の復旧過程に及ぼす機能について考察する.
著者
横松 宗太
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.17-32, 2003-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
54

自然災害リスクは負の効果をもつ地方公共財と考えることができる. 地域政府は防災施設の整備や保険システムの利用を通じて地域リスクを制御し, 家計はリスク選好に従って居住地域を選択する. 地域間では種種の外部性が発生する. 本稿では自然災害リスクの地域間配分の問題が, 基本的な地方公共財の地域間配分の問題としての性格を備えることを指摘するとともに, 自然災害リスクの問題に特有の構造について整理する. また自然災害リスク管理に関する地域政府と中央政府の役割について検討する. 本稿は多地域システムにおける自然災害リスク配分の研究の体系化を志向しながら, 本分野の今後の展開のための論点整理を与えることを目的とする.