著者
江草 宏 矢谷 博文 佐伯 万騎男 横田 義史
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究計画は、小分子化合物をId2遺伝子欠損マウスに由来する骨芽細胞および破骨細胞に作用させることで、新たな細胞内分子機構を探索することを目的として行われた。その結果、小分子化合物harmineは、破骨細胞分化に重要な役割をするNFATc1の活性をリン酸化酵素DYRK1Aの阻害を介して増強するが、同時に破骨細胞の分化抑制因子として作用するId2の発現を増強する結果、破骨細胞分化における細胞融合を著明に抑制することを明らかにした。
著者
横山 修 秋野 裕信 青木 芳隆 横田 義史 楠川 直也 伊藤 秀明 棚瀬 和弥
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

メタボリック症候群候補遺伝子の変異が下部尿路症状(lowerurinary tractsymptoms:LUTS)の発生と関連しているのか、ヒトあるいは病態モデルを用いて検討して以下の結果を得た。(1)過活動膀胱患者の血液サンプルを用いて、特にcycloxygenase-2(COX-2)遺伝子多型(JAMA291:2221,2004)について検討した。COX-2のプロモーター領域には-765番目のグアニンがシトシンに変異している一塩基多Single Nucleotide Polymorphism(SNP)が存在するが、その頻度は低く、これが直接過活動膀胱発生に関与しているとは考えにくかった。しかし、ヒトの症状スコアーと尿中パラメーター(PGE_2、PGF_<2a>、NGF、substance P)を用いて解析した結果、脳血管障害患者では、そのphenotypeとしての尿中PGE_2量は下部尿路症状、特に過活動膀胱(overactive bladder;OAB)症状と有意に関連し、他のメディエーターであるPGF_<2a>、NGF、substance Pよりも強い相関があった。脊髄疾患患者でもOAB症状と尿中PGE_2量とは有意の相関を示した。(2)福井県住民健康診査を受けた男女を対象に、夜間頻尿と下部尿路症状とメタボリック症候群のリスク因子との相関を検討した。その結果、夜間頻尿は肥満・高血圧・心疾患・不眠が独立したリスクで、メタボリック症候群の危険因子の数が多いほどオッズ比が大きかった。(3)なぜ上位脳血管障害患者で尿中PGE_2量が上昇するのか、動物モデルを用いた検討を行った。ラットに脳梗塞を起こさずに排尿反射のみを亢進させても尿中PGE_2量やATP量に変化はみられなかった。しかし脳梗塞を作成すると膀胱壁のATP量増加が認められ、知覚C線維をレジニフェラトキシンにて脱感作するとATP増加はみられなかった。したがって脳梗塞により膀胱の知覚C線維のupregulationが生じていると考えられた。PGE_2量は遅れて増加するものと推測される。(4)メタボリック症候群の病態モデルを用いて、排尿筋過活動の発生について実験を行った。その結果、高フルクトース食にて11ヶ月飼育したラットでは、高血圧・インスリン抵抗性が獲得され、排尿回数の増加とともに膀胱壁COX-2発現の上昇・尿中PGE_2の増加がみられた。