著者
橋本 俊次 脇本 忠明 立川 涼
出版者
Japan Society for Environmental Chemistry
雑誌
環境化学 (ISSN:09172408)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.637-646, 1994-09-20 (Released:2010-05-31)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

ベトナム南部から採取された層位別土壌試料及び底質コアを用い, ダイオキシンによる過去からの汚染の調査を行った。調査地点付近には, ベトナム戦争当時, 大量の枯葉剤が散布されているにもかかわらず, そこから採取された試料からは, 枯葉剤の不純物であるTCDDは検出できなかった。一方, ほとんどの試料からOCDDなどの高塩素化ダイオキシンを検出した。検出した濃度は0.069~1.1ng/g dryで, そのうち約80%がOCDD, 約15%がHeptaCDDs, 約5%がHexaCDDsであり, この組成は全試料で確認された。今回検出されたこれらのダイオキシン類は, 周囲の状況などから, 自然生成したものであることが類推された。しかも, 以前我々が調査した日本沿岸底質深層部から発見したものと全く同じ組成をもつことが分かり, 自然生成するダイオキシンの存在が示唆された。
著者
鈴木 剛 仲山 慶 前川 文彦 Tue Nguyen Minh 木村 栄輝 道中 智恵子 松神 秀徳 橋本 俊次
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.470-481, 2018-12-31 (Released:2019-12-05)
参考文献数
37

臭素系ダイオキシン類は,POPs 条約の規制対象物質ではないが,対象であるダイオキシン類と同様の特性を示すため,リスク管理の必要性が国際的に共有されている。国内では,環境省による臭素化ダイオキシン類の排出実態調査が実施され,臭素系難燃剤の decaBDE を使用する施設や含有製品を取り扱う施設で,ダイオキシン類の排出基準や作業環境基準を超過する値で検出されることが明らかにされた。臭素化ダイオキシン類の排出は,2017 年に decaBDE が POPs 条約上の廃絶対象物質となったことに伴い,動脈側で減少することが予測されるが,静脈側で含有製品の再資源化や廃棄を通じた排出が当面継続する見込みであり,引き続きその実態把握が必要である。DecaBDE の代替物使用の臭素系ダイオキシン類の排出への影響についても,今後の排出実態調査や関連研究で明らかにされることが期待される。また,臭素化ダイオキシン類の適切なリスク管理には,WHO と UNEP の専門家会合が指摘しているとおり,魚類・哺乳類毒性試験に基づく TEF を補完していく必要がある。
著者
橋本 俊次 大塚 宜寿 山本 敦史 高澤 嘉一 柏木 宣久 田邊 潔 頭士 泰之 姉崎 克典 大原 俊彦 半野 勝正
出版者
国立研究開発法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

固相吸着法などで採取した大気や水試料を加熱脱着法により直接、測定装置に導入することで、迅速かつ網羅的な分析を可能にした。膨大な種類の化学物質を分離測定するために多次元ガスクロマトグラフィ-飛行時間型質量分析法を用いた。測定データから任意の物質情報を抽出あるいは除去する手法を開発し、特に質量欠損の利用は、炭化水素由来のマススペクトルをほぼ完全に除去可能にした。未知物質の同定には質量分解能3万程度の測定が有効であった。非負制限因子分解(NMF)法の応用により、連続するモニタリングデータから差を検出する手法を開発した。また、データ比較のためには必須の保持時間合わせの手法も新たに開発した。