著者
熊田 真宙 吉田 弘司 橋本 優花里 澤田 梢 丸石 正治 宮谷 真人
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.56-62, 2011 (Released:2011-08-29)
参考文献数
17
被引用文献数
4 4

Elderly people have lower ability for recognizing facial emotions than younger people. Previous studies showed that older adults had difficulty in recognizing anger, sadness and fear, but there were no consistent results for happiness, surprise and disgust. Most of these studies used a small number of stimuli, and tabulated the number of correct responses for facial expressions. These characteristics of the task might be the source of the discrepancy in the findings. The present study used a task which measures participants' discrimination thresholds for six basic emotions using psychophysical measurement methods. The results showed that the thresholds for elderly participants (74.8±6.5 yrs) were significantly higher than for younger participants (20.1±1.6 yrs) for sadness, surprise, anger, disgust and fear. There was no significant difference for happiness. Since the task that we developed was sufficiently sensitive, it is a useful tool for assessing individuals' ability to perceive emotion.
著者
光戸 利奈 錦織 翼 辰川 和美 橋本 優花里 宮谷 真人
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.18-27, 2019-03-31 (Released:2020-04-03)
参考文献数
30

言語流暢性課題の得点がアルツハイマー病 (以下 AD) や軽度認知障害 (以下 MCI) の評価に役立つ指標であることがすでに報告されている。そして, 言語流暢性課題では反応の質的な分析を行うことで, 語彙検索機能や自己モニタリング機能について検討できる可能性がある。また, 語彙検索機能については, 検索の方略という視点から検討されているが, 英語話者を対象とした先行研究で扱われている方略は日本語話者にとって一般的とはいえないため, 日本語話者特有の方略に基づいて分析する必要がある。そこで本研究では, 日本語話者の AD と MCI の語彙検索機能と自己モニタリング機能の特徴を明らかにすることを目的とした。動物の名前を挙げる意味課題と「か」からはじまる語を挙げる文字課題を, AD と MCI, そして健常高齢者 (以下 NC) に実施した。語彙検索機能の評価には日本語話者特有の方略を考慮した上でクラスター数とスイッチ数を用い, 自己モニタリング機能の評価には, 産生語の重複エラー率と検査者への質問の有無の割合を用いた。その結果, 意味課題において AD では NC と比べてクラスター数とスイッチ数が少なく, 重複エラー率が高かったことから, 語彙検索機能と自己モニタリング機能の低下が示唆された。また, MCI では NC と比べてクラスター数とスイッチ数は少なかったものの, 重複エラー率には違いが示されなかったことから, 自己モニタリング機能に先行して語彙検索機能が障害される可能性が示唆された。
著者
橋本 優花里 澤田 梢
出版者
福山大学
雑誌
福山大学人間文化学部紀要
巻号頁・発行日
vol.8, pp.117-127, 2008-03
被引用文献数
1

認知リハビリテーションには,認知機能回復訓練および代償手段の獲得だけでなく,障害認識の向上や社会的行動障害および心理症状へのアプローチが含まれる。本稿では,認知リハビリテーションの現状について,ここ20年ほどの間に定着してきた認知機能回復訓練の手法を概観するとともに,コンピュータの導入や集団訓練などの近年の新しい試みを紹介し,これからの課題について考える。また,認知リハビリテーションに携わる心理士についても,業務の実態を通して今後の課題を検討する。