著者
青野 篤子
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.201-218, 2003-03-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
134
被引用文献数
4 2

この論文では, まず, 対人距離または個人空間 (パーソナル・スペース) に関する研究の歴史を概観し, その中でも議論の多い性差に焦点を当てて主要な研究結果と論争点を紹介する。対人距離の性差については, 男性より女性の方が小さいという一貫した傾向を認めた上で, その原因を男女の地位の差によって説明する立場 (従属仮説) と, 結果が一貫しないとする立場とが対立している。従属仮説の観点から研究をより詳細に検討した結果は以下の通りである。1) 地位の低い者は高い者より対人距離が小さいと断定するに十分な証拠はない。すなわち, 被験者ないし相手の地位それ自体が効果をもつ場合もあれば, 地位の差が効果をもつ場合もある。2) 同様に, 女性は男性より対人距離が小さいとは言えない。すなわち, 被験者と相手の性の組み合わせによって性差の現れ方は異なる。3) 対人距離の性差は, 相互作用の状況, 被験者が相手に接近する場合と接近される場合で, その現れ方を異にする。今後は, 地位の要因を統制したときに性差が消失するのかどうかの検討, 従来「性差」だと言われてきたものが「被験者の性」, 「ターゲットの性」, 「接近者の性」のいずれの要因に起因するのかの, より詳細な検討が必要である。
著者
青野 篤子
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.201-218, 2003
被引用文献数
5 2

この論文では, まず, 対人距離または個人空間 (パーソナル・スペース) に関する研究の歴史を概観し, その中でも議論の多い性差に焦点を当てて主要な研究結果と論争点を紹介する。対人距離の性差については, 男性より女性の方が小さいという一貫した傾向を認めた上で, その原因を男女の地位の差によって説明する立場 (従属仮説) と, 結果が一貫しないとする立場とが対立している。従属仮説の観点から研究をより詳細に検討した結果は以下の通りである。1) 地位の低い者は高い者より対人距離が小さいと断定するに十分な証拠はない。すなわち, 被験者ないし相手の地位それ自体が効果をもつ場合もあれば, 地位の差が効果をもつ場合もある。2) 同様に, 女性は男性より対人距離が小さいとは言えない。すなわち, 被験者と相手の性の組み合わせによって性差の現れ方は異なる。3) 対人距離の性差は, 相互作用の状況, 被験者が相手に接近する場合と接近される場合で, その現れ方を異にする。今後は, 地位の要因を統制したときに性差が消失するのかどうかの検討, 従来「性差」だと言われてきたものが「被験者の性」, 「ターゲットの性」, 「接近者の性」のいずれの要因に起因するのかの, より詳細な検討が必要である。
著者
上野 淳子 松並 知子 青野 篤子
出版者
四天王寺大学
雑誌
四天王寺大学紀要 (ISSN:18833497)
巻号頁・発行日
no.66, pp.91-104, 2018-09-25

従来のデートDV 研究は,暴力行為を受けた経験のみを被害と見なしてきた。本研究では,デートDV 被害を暴力行為とそれがもたらした影響(恋人による被支配感の高まり,自尊感情の低下)から成るものとして捉え,デートDV 被害の実態と男女差を検討した。大学生を対象とした質問紙調査の結果,恋人からの暴力行為のうち“精神的暴力:束縛”,“精神的暴力:軽侮”,“身体的暴力・脅迫”は男性の方が女性より多く受けており,“性的暴力”のみ男女で受ける割合に差がなかった。しかし,恋人による被支配感は男女差がなく,自尊感情は“身体的暴力・脅迫”を受けた女性が低かったことから,男性は暴力行為を受けても心理的にネガティブな影響は受けにくいことが示唆された。多母集団同時分析の結果,男女とも“精神的暴力:軽侮”および“性的暴力”を受けることで恋人による被支配感が高まり,恋人による被支配感は自尊感情を低下させていた。しかし同時に,暴力行為の影響には男女で異なる点もあった。暴力行為だけでなく恋人による被支配感も含めて暴力被害を捉える重要性が示された。
著者
青野 篤子
出版者
福山大学
雑誌
福山大学こころの健康相談室紀要 (ISSN:18815960)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-9, 2008

The purpose of this study was to research parents' understanding of the concepts of "gender" and "gender free", the attitudes towards gender-related traits and the treatment of girls and boys without distinction of sex . Three hundred ninety-three mothers' data were analyzed (responses from fathers were very few). The results were as follows: 1) The number of mothers who knew the words "gender" or "gender free" was not very high, but they understood the connotation of social constructedness. 2) Their knowledge of the words affected how they thought about the origins of gender differences. 3) Many mothers' thought traditional activities like girls' and boys' festivals were important as cultural perpetuators, but interchangeable with regards to sex.. 4) Few mothers opposed the use of co-ed changing rooms or toilets for children. Therefore, it is believed that the concepts of "gender" or "gender free" are understandable to the general public and need to be popularized.
著者
青野 篤子
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.81-90, 2017 (Released:2018-07-20)
参考文献数
27
被引用文献数
1

The distinction between sex and gender differences is very ambiguous in the Japanese language as discussed in this special issue. It is important that we use these two terms correctly, i.e., sex differences have a biological basis, and gender differences are based on social behaviors and conventions. Within this special issue, the distinction between sex differences and gender differences are presented by several authors. Sasaki emphasizes the usefulness of sex/gender limitation analysis which could redefine sex/gender differences. Morinaga tries to explain women’s relative inferiority in the fields of science and mathematics by the stereotypic misnomer “not being good at mathematics”. Suzuki reviews the psychological factors, such as gender role attitudes that affect gender inequality. Yokota examines the popular “male warrior” hypothesis in evolutionary psychology through new findings in both experimental psychology and archeology. Numazaki’s article explains the origins of sex differences through both cultural and evolutionary approaches. Each article advances our understanding of the origins of sex/gender differences. On the other hand, the studies that redefine the origins of both sexist societies and institutions and promote ways to change gender differences, should be further evaluated. To that end, more in depth interactions among behavioral geneticists, evolutionary psychologists, and social psychologists are needed.
著者
青野 篤子
出版者
福山大学
雑誌
福山大学人間文化学部紀要
巻号頁・発行日
vol.7, pp.65-79, 2007-03

男女共同参画社会の担い手を育成すべき保育者が,男女平等やジェンダーに対してどのような考え方をもっているのか,また,性差や男女の特性をいかにとらえ,どのような保育方針をもっているのかを検討した。その結果,保育者は男女平等のための保育の意義を認めながら,男女の差異や女らしさ・男らしさを尊重した上で,男女を同等に扱うのが望ましいと考えていることが明らかになった。また,ジェンダー(・フリー)の知識がある人はそうでない人より,性差の社会構築性をより強く意識していることもわかった。
著者
青野 篤子
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.51-58, 2003

The oppression hypothesis, originally advocated by N. Henley, expects that superiors have greater control beyond their own space and claim greater space than subordinates. This projective study using computer simulation examined the effects of gender and status on both approach distance and approached distance among Japanese company employees to verify the oppression hypothesis. Results indicated that neither gender nor status affected the two types of distance, and thus the oppression hypothesis was not supported. Rather, the relation-ship of subjects and the persons they were interacting with was important. That is, subjects took the shortest distance with fellow officers and the greatest distance with superior officers. In particular, female subjects kept male superiors farthest away from them. Further studies are suggested to control status variables strictly and introduce cross-cultural standpoints.
著者
青野 篤子 五十嵐 靖博 滑田 明暢
出版者
心理科学研究会
雑誌
心理科学 (ISSN:03883299)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.1-10, 2013

What we should study is affected by the calling of time and society, and is not completely unrelated to political conditions and social policies. For example, although the studies on developmental disorders or on stress have been popular for a long time, those are not only symptomatic therapies but they also reproduce the reality. Also, the eagerness to adhere to the scientific approaches in the psychology world drives us in those studies using micro- or high-tech machines or highly advanced statistics. As a result, the situation of "psychology without society" may be produced. In this special issue, we would like to criticize the mainstream psychologies and discuss how psychology faces the real contemporary society from the view point of critical, feminist, and qualitative psychology.
著者
青野 篤子
出版者
松山東雲女子大学・松山東雲短期大学
雑誌
松山東雲短期大学研究論集 (ISSN:03898768)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.75-84, 1990-12

This first paper of serise to come examines the various ways in which H.F.Harlow's studies have been quoted in psychology textbooks. Although Harlow deals with many types of love(paternal,heterosexual,etc.),almost all of the textbooks keep their focus on love to cloth mother surrogates. During the last ten years, the titles under which his studies have been quoted and had atarted with words like"mortibvation" have changed to expressions like "mother-child relationship", or "attachment", etc. This reflects the latest popurality of deveropmental psychology. The interpretation of his studies o love and social deprivation seems to be affected by the textbook authors' beliefs in the bond of mother and child.
著者
井ノ崎 敦子 上野 淳子 松並 知子 青野 篤子 赤澤 淳子
出版者
大阪教育大学学校危機メンタルサポートセンター
雑誌
学校危機とメンタルケア (ISSN:1883745X)
巻号頁・発行日
no.4, pp.49-64, 2012-03-31

近年、10代や20代の若者のカップルにおける暴力、すなわちデートDVが深刻な社会問題として注目されている。デートDV予防の重要性が指摘され、様々な実践活動が各地で展開されているが、生起メカニズムに関する研究はほとんどない。デートDVは暴力問題の1つでもあるが、不健全な恋愛関係の1形態でもある。恋愛関係に関しては、愛着理論に基づく研究が進んでいる。それらの中で、不健全な愛着を示す者は、不健全な恋愛関係を形成しやすいことが指摘されている。このことから、デートDVの生起が愛着の不健全さと関連があると考えられる。そこで、本研究では、デートDVの加害及び被害経験の程度と愛着の不健全さとの聞に関連が見られるかを検討することを目的とした。729人の大学生を対象に調査した結果、男女ともデートDV経験と愛着の不健全さとの聞に関連が見られ、男性の場合は、デートDV加害経験と親密性の回避と関連があり、女性の場合、デートDV加害及び被害経験と見捨てられ不安との聞に関連が見られた。また、男女でデートDV経験のリスクの高い愛着スタイノレが「とらわれ型」であったが、男女でデートDV経験の生起に関係する愛着の次元が異なった。以上のことから、性別の違いによって、愛着の不健全さとデートDVの経験の形の関連には違いがあり、デートDV予防にもジェンダーを考慮したプログラムの開発が必要であることが示唆された。
著者
澤田 忠幸 宇井 美代子 滑田 明暢 青野 篤子
出版者
愛媛県立医療技術大学
雑誌
愛媛県立医療技術大学紀要 (ISSN:18805477)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.23-30, 2015-12-31

本研究では,社会的公正理論に基づき,6因子からなる男女平等の判断基準を測定する尺度を作成し,男女差の有無および性差観,自身の母親観,精神的健康との関連について検討を行った。その結果,性差観には男女差 が認められなかったが,男性よりも女性の方が,男女平等の判断基準として,個人の能力の原理および話し合いによる決定の原理に対して肯定的な認識を有していた。また,個人の能力の原理および二つの手続き的公正の原 理に対して肯定的であるほど,性差観が弱いことが示された。さらに,男女ともに自身の母親観は,男女平等の判断基準や性差観,精神的健康とも関連していたが,男性に比べ女性の方が,母親との関係性が精神的健康ある いは自身の生き方満足感と直接的間接的に関連することが示された。
著者
森永 康子 Frieze Irene H. Li Manyu 青野 篤子 周 玉慧 葛西 真記子
出版者
神戸女学院大学
雑誌
神戸女学院大学論集 (ISSN:03891658)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.101-111, 2011-06

本研究は、日本、台湾、米国の大学生のデート暴力の特徴を報告したものである。3カ国の男女大学生に、葛藤解決方略尺度(Conflict Tactics Scale; Straus,1979)を用いて、交際相手に与えた暴力および非暴力的攻撃、交際相手から受けた暴力おやび非暴力的攻撃の回数について回答を求めた。分析は回答者の中から現在あるいは過去に交際相手のいる者あるいはいた者を対象として行い、3カ国の暴力や非暴力的攻撃の実態について検討した。非暴力的攻撃の場合には、生起頻度が50%を超えるものもあり、国や性別による差異もうかがえたが、全体の割合では3カ国を通じて女子の方が男子よりも攻撃の頻度が高く、また米国の女子学生は日本の女子学生よりも攻撃的であった。一方、暴力に関しては、激しい身体的暴力そのものの生起頻度が少なく、性別や国による差異は見られなかった。また、交際相手との暴力が相互的かどうかを検討したところ、3カ国ともに暴力や攻撃のないカップルが多かったが、暴力をふるう回答者のみに注目した場合には、カップルのどちらか一方が暴力をふるう場合よりも、相互に暴力的なカップルのほうが多かった。こうした結果について Straus (2008) の結果と比較検討し、考察を行った。
著者
青野 篤子 金子 省子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.135-142, 2008

本研究は,幼稚園・保育園の保護者(父親は少数のため分析から除外された)を対象に子育ての方針や保育環境のあり方についてジェンダーの観点からその意識を探るための調査を行い,今後のジェンダー・フリー保育の指針を得ようとするものである。母親たちは,全体として脱伝統的な女性像・男性像をイメージしており,ジェンダーにとらわれない子育ての方針をもっている。また,身体的な差異に配慮しつつも,幼稚園や保育所の環境はできるだけ男女の区別がない方がよいという意見をもっている。一方,母親がとらえた保育環境には一部ジェンダー・バイアスが存在し,とくに,習慣化・制度化された保育の営みについては,実態が強く認識されているにもかかわらず,一部許容的な態度が示されている。また,母親のジェンダー(・フリー)についての関心は低く,男女共同参画社会における幼稚園・保育園への期待は大きくない。今後,保育者・保護者の一体となったジェンダー(・フリー)についての学習や取り組みが必要である。