著者
佐藤 友哉 橋本 塁 嶋田 洋徳 大月 友
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.91-98, 2015 (Released:2015-11-19)
参考文献数
28

本研究の目的は、社交不安の2つのサブタイプ(全般性、非全般性)における、刺激関係の形成の流暢性と、スピーチ場面で生起する生理的反応の差異を検討することであった。54名の大学生を対象に、パフォーマンス場面に対する不安を測定するSocial Phobia Scale(以下、SPS)、対人交流場面に対する不安を測定するSocial Interaction Anxiety Scale(以下、SIAS)への回答を求め、関係ネットワーク間での刺激関係の形成の流暢性を測定するGo / No-go Association Taskを実施し、スピーチ課題中の精神性発汗を測定した。SPS、SIAS得点の平均値、標準偏差をもとに群分けを行い、基準を満たす30名が分析対象とされた。その結果、全般性の社交不安を示す者は、不安が低い者と比較してパフォーマンス場面をあらわす言語刺激群と、ネガティブな情動をあらわす言語刺激群の間の刺激関係を形成しやすいことが示された。また、不安が低い者は、スピーチ準備期と比較して実施期の精神性発汗の程度が高いことが示された。本研究の結果から、社交不安の2つのサブタイプを関係フレーム理論の観点から記述する有用性が示唆された。
著者
大沢 知隼 橋本 塁 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.300-312, 2018-12-30 (Released:2018-12-27)
参考文献数
42
被引用文献数
4 4

本研究の目的は,集団ソーシャルスキルトレーニング(集団SST)の効果を左右する個人差として報酬への感受性に着目し,スキルの遂行に随伴する報酬のひとつである笑顔刺激に対する注意バイアス修正訓練によって,ソーシャルスキルの維持と般化が促進されるかどうか検討することであった。小中学生を,標準的な集団SSTを行う標準群と,集団SSTに加えて注意バイアス修正訓練を行う注意訓練群に振り分けた。ターゲットスキルの獲得がなされなかった可能性のある者を除外し,報酬への感受性の高低群に分けて分析を行った結果,小中学生ともにすべての条件において,獲得されたターゲットスキルが介入1か月後まで維持および刺激般化されることが示された。また反応般化については,攻撃行動は小学生のすべての条件で低減した一方で,向社会的スキルは小中学生ともに注意訓練群においてのみ増加が見られた。このことから,たとえターゲットスキルが維持および刺激般化されたとしても,スキルの種類によっては反応般化が起こりにくいこと,そして反応般化が起こりにくいスキルであっても,注意バイアス修正訓練を併用することで相応の反応般化が促される可能性があることが示唆された。