著者
山本 哲也 山野 美樹 田上 明日香 市川 健 河田 真理 津曲 志帆 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.33-45, 2011-01-31 (Released:2019-04-06)

本論考では、うつ病の再発に影響を及ぼすと考えられる認知機能障害について概観し、認知機能障害に焦点を当てた心理学的介入方法の有用可能性について考察を行うことを目的とした。まず、うつ病の寛解者において、記憶、注意、遂行機能の障害が持続する可能性に着目し、これらが寛解者の適応にもたらす影響について考察した。次に、認知機能障害のアセスメント、および認知機能障害自体を治療対象とすることの有用性について検討を行い、従来の認知行動療法にこれらの神経心理学的アプローチを加えることによって再発予防効果が増大する可能性を提起した。最後に今後の課題として、(1)対象サンプルや方法論の統制の必要性、(2)薬物療法が寛解後の認知機能に及ぼす影響について整理する必要性、(3)うつ病の寛解者が示す認知機能障害の特徴に特化した介入方法の開発と効果検討の必要性について論じた。
著者
田上 明日香 伊藤 大輔 清水 馨 大野 真由子 白井 麻理 嶋田 洋徳 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.11-22, 2012-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
6

本研究の目的は、うつ病休職者の職場復帰の困難感を測定する尺度を作成し、さらにその尺度をもとに職場復帰の困難感の特徴を明らかにすることであった。単極性のうつ病と診断された34名を対象に職場復帰の困難感について自由記述による回答を求め、項目案を作成した。次に、単極性のうつ病と診断された休職者60名を対象にその項目について探索的因子分析を行い、「職場で必要な体力面の困難」「職場復帰後の対人面の困難」「職務に必要な認知機能面での困難」の3因子10項目から構成されることが示され、十分な信頼性と内容的妥当性、併存的妥当性が確認された。そこで、職場復帰の困難感尺度を使用してタイプ分類を実施したところ、四つの類型を得た(全般困難型、復職後の対人関係困難型、体力・認知機能困難型、困難少型)。最後に、それぞれの類型にあわせた支援について議論がなされた。
著者
田上 明日香 伊藤 大輔 大野 真由子 白井 麻理 嶋田 洋徳 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.95-106, 2010-06-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究の目的は、うつ病の治療において、うつ症状とともに評価が必要とされている社会的機能に着目し、うつ症状と社会的機能に関連する心理的要因を明らかにすることである。単極性のうつ病と診断された66名を対象に、自動思考尺度(ATQ-R)、対処方略尺度(TAC)、ソーシャルスキル尺度(KISS)、うつ症状尺度(BDHI)、社会適応状態尺度(SASS)を実施した。その結果、うつ症状に対しては、"自己に対する非難"が関連していたが、社会適応状態には"肯定的思考"と"肯定的解釈と気そらし""社会的スキル"が関連しており、うつ症状と社会適応状態では関連する要因が異なることが示唆された。これらのことから、うつ病患者への支援においては、うつ症状だけでなく社会適応状態に関連する要因を検討する必要性が議論され最後に本研究の限界について述べられた。
著者
伊藤 大輔 兼子 唯 小関 俊祐 清水 悠 中澤佳 奈子 田上 明日香 大月 友 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.119-129, 2010-06-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究の目的は、近年の外傷後ストレス障害(PTSD)に対する認知行動療法の効果をメタ分析によって検証することと、PTSDの効果研究に関する今後の検討課題を明らかにすることであった。メタ分析の結果、PTSDに対する認知行動療法の有効性が明らかにされ、その適用範囲も拡張しつつあることが示された。さらに、今後の課題として、(1)対象者の症状プロフィールや状態像を考慮した介入法の検討を行うこと、(2)薬物療法と認知行動療法を組み合わせた際の効果について検証すること、(3)治療効果に作用する治療技法および要因を特定し、効率的かつ適切な介入法を検討すること、(4)治療効果に影響を及ぼす治療技法以外の要因について検討すること、などが指摘された。
著者
市倉 加奈子 日野 亜弥子 田上 明日香 井村 里穂 石田 陽菜 深瀬 裕子 村山 憲男 村瀬 華子 島津 明人 平井 啓 田ヶ谷 浩邦
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.94.21046, (Released:2023-02-01)
参考文献数
39

Workplace changes, such as remote work during the COVID-19 pandemic, have caused serious psychological distress for workers. The aim of this study was to examine job stressors and coping strategies among Japanese workers during the pandemic. The study was a qualitative methods approach using a web-based survey for Japanese workers in May 2020. We asked about job stressors and coping strategies with free text comments. We performed context analysis and categorized job stressors and coping strategies. Of the participants, 59.2 % suffered psychological stress from workplace changes during the pandemic. We identified 11 categories of job stressors including “work-life balance,” “lack of communication,” “overwork,” and “diminishing work role.” We also identified 16 categories of coping strategies including “distraction,” “dealing with work tasks,” “looking for ways to communicate,” “environmental coordination of work-at-home,” “online chatting,” and “psychological disengagement.” This study shows that Japanese workers tried many ways to manage their job stressors under the burden of the state of emergency. In the future, we should examine the association between coping strategies and psychological distress during the COVID-19 pandemic.
著者
中村 菜々子 井澤 修平 山田 クリス 孝介 亀山 倫華 田上 明日香
出版者
兵庫教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本人労働者4609名を対象とした横断的調査,3235名を対象とした縦断的調査,400名を対象とした実験を実施して,ストレスの過小評価という認知的変数が精神的健康やメンタルヘルス知識,メンタルヘルス情報の評価に与える影響を検討した。研究の結果,(1)ストレスの過小評価の傾向は,女性より男性でより強かった,(2)過小評価傾向の強い男性は,メンタルヘルスリテラシーが低かった,(3)過小評価傾向は,1年後のメンタルヘルス不調を有意に予測した,(4)過小評価傾向とメンタルヘルス情報の評価との関連は明確ではなかった。労働者のストレス対策では認知的変数も考慮する必要性が示唆された。