著者
橋爪 祐二
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.121, no.12, pp.1463-1467, 2018-12-20 (Released:2019-01-16)
参考文献数
30
被引用文献数
1

口呼吸はうつ病, 認知症, 注意欠陥多動障害などの精神疾患の誘因になるといわれている. 特に睡眠中の口呼吸はいびき症や閉塞性睡眠時無呼吸症 (OSAS) の原因となる. わが国における OSAS の治療が必要な重症患者数が300万人を超えていると推測されている. OSAS の原因は肥満がある. 肥満をもたらす原因としては, 食文化の変化もあるが, 日本人がほかの先進諸国に比べて, 睡眠時間が最も少ないことが挙げられる. また, 日本人の特有の顔貌も OSAS の原因の一つに挙げられる. OSAS は認知機能の低下をはじめとしたさまざまな精神障害を引き起こすことも知られている. 肥満を引き起こさないための睡眠時間の十分な確保が重要であると一般に周知していく必要がある.
著者
内村 直尚 森田 喜一郎 橋爪 祐二 土生川 光成 小鳥居 望 山本 克康
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

昼休みに15分間午睡をすることによってそれ以後の眠気が減少し、午後の授業だけでなく、帰宅後の学習にも集中できた。また、週3回以上実施した者は昼夜のメリハリのある規則正しい生活リズムが確立し、夜の睡眠も深くなった。午睡導入前の3年間と導入後の3年間の大学入試センターの試験成績を比較すると明らかに導入後の試験成績は上昇していた。保健室利用者および1人当たりの平均利用回数を午睡導入前後の3年間で比較すると導入後の3年間で減少していた。
著者
橋爪 祐二 内村 直尚
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.732-738, 2015-08-15

はじめに 日本人の体型,特に中高年以上の男性は年々体重増加の傾向がある.肥満が増加するとともに,閉塞性睡眠時無呼吸症の罹患頻度も高くなってきている.現在わが国には睡眠時無呼吸症の患者は250万〜300万人はいるといわれている.さらにわが国の睡眠時無呼吸症の特徴的なことは中年以降の男性に多いことである.米国では,睡眠時無呼吸症の頻度は男性4%,女性2%といわれているが,睡眠中に呼吸が止まる頻度は男性で24%,女性で9%と高率に認められる1).ところで,現在の日本人の65歳以上の高齢者の人口は2015年(平成27年3月20日)現在,約3,300万人であり,日本の人口の約29.1%を占めている.高齢者になるほど慢性の不眠症が増加し,睡眠薬の処方箋数も増加する.米国では65歳以上の高齢者のうち無呼吸・低換気指数(AHI)15以上が約20%あったと報告されている2).また,不眠症をもつ高齢者で約29%から61%は睡眠時無呼吸症を訴えているといわれている3). 閉塞性無呼吸症候群(以下OSAS)は,睡眠中の上気道の閉塞によって無呼吸や低換気が起き,睡眠中の頻回の覚醒反応と酸化ヘモグロビンの不飽和による低酸素血症が引き起こされる.さらに頻回の覚醒反応に伴う睡眠の質や量の低下によって,OSASには昼間の眠気のみならず,認知機能障害や抑うつ症状などの精神症状を合併することが多く,熟眠感の欠如や中途覚醒の増加や夜間頻尿に伴う睡眠の分断などの不眠の症状も多くみられる.われわれの睡眠障害クリニックでは無呼吸・低換気指数が25以上のうち不眠を訴える者が6.0%いた.無呼吸症の患者は不眠の原因が無呼吸によるものである自覚が乏しいことが多く,不眠に対して飲酒をしたり,OCDの睡眠薬を飲んだり,かかりつけの医師から睡眠薬を処方してもらうケースも少なくない.飲酒や長期間のベンゾジアゼピン系の睡眠薬の服用は無呼吸症の症状をさらに悪化させるといわれている.