著者
大江 美佐里 内村 直尚
出版者
九州精神神経学会
雑誌
九州神経精神医学 (ISSN:00236144)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.92-96, 2014-08-15 (Released:2016-01-05)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

心的外傷後ストレス障害(PTSD)で生じる悪夢に対する非薬物療法のうち,イメージを利用した治療法として代表的なものに,Imagery Rehearsal Therapy, Imagery Rescripting, Exposure, Relaxation, and Rescripting Therapyがある。近年のメタ解析では,悪夢の頻度,睡眠の質,PTSD症状の3項目において改善が認められた。本邦での日常臨床にこの治療法を組み入れるための工夫について論じ,筆者がこの治療法を利用するために作成した心理教育用の冊子について説明を加えた。PTSDの悪夢に対する,イメージを利用した治療は海外で一定の効果が示されており,今後更なる実践により本邦での効果検証がなされることを期待する。
著者
松本 悠貴 石竹 達也 内村 直尚 石田 哲也 森松 嘉孝 星子 美智子 森 美穂子 久篠 奈苗
出版者
Japan Society for Occupational Health
雑誌
産業衛生学雑誌 = Journal of occupational health (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.154-164, 2013-09-20
被引用文献数
2

<b>目的:</b> 睡眠は単に睡眠時間のみで良好か不良かを判断できるものではなく,睡眠の導入や維持といった睡眠の質,就寝時刻や起床時刻といった規則性まで考慮しなければならない.しかしながら,それらすべてを一度に評価できる指標は現在のところ存在しない.本研究は睡眠の規則性・質・量の3要素を評価するための質問票を独自に開発し,その信頼性と妥当性の検証を行うことを目的とした. <b>対象と方法:</b> 対象は製造業およびサービス業に従事する日勤労働者563名(男性370名,女性193名)で,平均年齢は40.4歳であった.先行研究および専門家との討議を参考に,規則性・質・量それぞれ7項目,計21項目からなる質問紙を作成・編集した.まず項目分析を行い,その後因子分析にかけて構成概念妥当性を検証した.信頼性はクロンバックα信頼性係数を算出して求めた.また,主成分分析およびクラスター分析にて標準化・分類を行い,生活習慣や日中の眠気,ストレス,持病の有無などを比較することにより,判別的妥当性の検証を行った. <b>結果:</b> 項目分析および因子分析にて,21項目中6項目が除外対象となったが,予測通り規則性・質・量の3因子構造が得られた.α信頼性係数はそれぞれ0.744,0.757,0.548であった.量因子として作成した2項目が規則性因子として抽出されていたが,それ以外は予測通りの因子として抽出された.入眠困難,熟眠障害,中途覚醒,早朝覚醒はすべて質因子として一定の負荷量を示していた.判別的妥当性については,最も点数の高いグループで健康意識が高くストレスや日中の眠気を感じていない者の割合が有意に高かった.一方で,最も点数の低いグループではストレスや持病などの睡眠障害リスクファクターを有している者の割合が有意に高かった. <b>考察:</b> 今回我々が開発した質問票にて,睡眠の規則性・質・量における構成概念妥当性が示された.しかしながら,分析過程にて不適切と判断され除外された項目や,予測していた因子とは異なる因子として抽出された項目が存在し,信頼性および内容的妥当性については課題が残った.今後これらの質問項目について再度編集・改訂し,より信頼性・妥当性を高めていく必要がある.また,年齢や性等による影響を除いたより詳細な判別的妥当性の検討も要する.
著者
内村 直尚 森田 喜一郎 橋爪 祐二 土生川 光成 小鳥居 望 山本 克康
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

昼休みに15分間午睡をすることによってそれ以後の眠気が減少し、午後の授業だけでなく、帰宅後の学習にも集中できた。また、週3回以上実施した者は昼夜のメリハリのある規則正しい生活リズムが確立し、夜の睡眠も深くなった。午睡導入前の3年間と導入後の3年間の大学入試センターの試験成績を比較すると明らかに導入後の試験成績は上昇していた。保健室利用者および1人当たりの平均利用回数を午睡導入前後の3年間で比較すると導入後の3年間で減少していた。
著者
新小田 春美 末次 美子 加藤 則子 浅見 恵梨子 神山 潤 内村 直尚 樗木 晶子 西岡 和男 大久保 一郎 松本 一弥 南部 由美子 加来 恒壽
出版者
福岡医学会
雑誌
福岡醫學雜誌 (ISSN:0016254X)
巻号頁・発行日
vol.103, no.1, pp.12-23, 2012-01-25 (Released:2013-06-19)

Purpose : To find the relationship between parents' sleeping and living behaviors and their children's sleeping habits, and to investigate factors specifically related to children staying up late in recent Japan. Methods : During regular health check-ups of children at three local health centers in the city A, we recruited the parents of one-and-half-year-old and three-year-old children to participate in the Child Sleep Cohort Project (ChiSCoP). Parents of 184 children who consented to participation were mailed three questionnaires by placement method. These are "sleeping diary for 10 days," "sleeping and lifetime rhythm survey," and "emotional behavior assessment scale (CBCL : Child Behavior Checklist 2rd/3rd edition)," of which valid data on 178 children were collected over two years and analyzed. Analysis : Participants' demographic data, perceived and actual sleeping and living habits, and bedtime patterns were compared among the groups classified by bedtime of children. Bedtimes were classified as early (before 21 : 00), normal (21 : 00 to 21 : 59), and late (after 22 : 00). Using one-way analysis of variance with two (early vs. late) and three bedtime categories, significant differences were found among the three bedtime categories about childcare environmental factors (meal, daytime activity, TV, nap, and bath). So we performed logistic regression analysis with "late bedtime" as the dependent variable and scores of environmental factors (upper or lower than median values) as independent variables in a stepwise manner to eliminate collinear variables and to obtain adjusted odds ratios. Results : 1) Among the 178 children, 96 and 82 were recruited during the physical check-up for one-and-half-year-old and three-years-old, respectively. There were 49, 72, and 57 children in the early, normal, and late bedtime groups, respectively, and no significant difference in attribute factors was found. 2) In children of the early bedtime group, proportions of those with "efforts to establish good life rhythm" (P < 0. 0001), "efforts to cultivate sleeping habits" (P < 0. 0001), and "keeping a regular bedtime" (P < 0.05) were significantly higher, as well as for children who had more than 105 minutes of "daytime nap" compared to children who had less (P < 0.05). 3) Children's bedtimes were significantly correlated with "mother's wake-up time on weekdays" (r = 0. 33) and "mother's bedtime on weekdays" (r = 0. 33). Children's wake-up times were also correlated with "mother's wake-up time on weekdays and weekends" (r = 0. 49) and "mother's bedtime on weekdays" (r = 0.34), which indicates that children's wake-up times had relationship with mother's sleeping and life habits. 4) Later "wake-up time on weekends" (odds ratio = 4.9) and "regular bedtime hour" (odds ratio = 3.53) were found to be the determinant of late bedtimes of children. Conclusions : To encourage earlier bedtimes in children, it is important to take he mother's sleeping and living habits into account and to maintain a regular wake-up and bedtime schedule across weekdays and weekends.
著者
松本 悠貴 石竹 達也 内村 直尚 石田 哲也 森松 嘉孝 星子 美智子 森 美穂子 久篠 奈苗
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.154-164, 2013 (Released:2013-10-23)
参考文献数
32
被引用文献数
2 2

目的: 睡眠は単に睡眠時間のみで良好か不良かを判断できるものではなく,睡眠の導入や維持といった睡眠の質,就寝時刻や起床時刻といった規則性まで考慮しなければならない.しかしながら,それらすべてを一度に評価できる指標は現在のところ存在しない.本研究は睡眠の規則性・質・量の3要素を評価するための質問票を独自に開発し,その信頼性と妥当性の検証を行うことを目的とした. 対象と方法: 対象は製造業およびサービス業に従事する日勤労働者563名(男性370名,女性193名)で,平均年齢は40.4歳であった.先行研究および専門家との討議を参考に,規則性・質・量それぞれ7項目,計21項目からなる質問紙を作成・編集した.まず項目分析を行い,その後因子分析にかけて構成概念妥当性を検証した.信頼性はクロンバックα信頼性係数を算出して求めた.また,主成分分析およびクラスター分析にて標準化・分類を行い,生活習慣や日中の眠気,ストレス,持病の有無などを比較することにより,判別的妥当性の検証を行った. 結果: 項目分析および因子分析にて,21項目中6項目が除外対象となったが,予測通り規則性・質・量の3因子構造が得られた.α信頼性係数はそれぞれ0.744,0.757,0.548であった.量因子として作成した2項目が規則性因子として抽出されていたが,それ以外は予測通りの因子として抽出された.入眠困難,熟眠障害,中途覚醒,早朝覚醒はすべて質因子として一定の負荷量を示していた.判別的妥当性については,最も点数の高いグループで健康意識が高くストレスや日中の眠気を感じていない者の割合が有意に高かった.一方で,最も点数の低いグループではストレスや持病などの睡眠障害リスクファクターを有している者の割合が有意に高かった. 考察: 今回我々が開発した質問票にて,睡眠の規則性・質・量における構成概念妥当性が示された.しかしながら,分析過程にて不適切と判断され除外された項目や,予測していた因子とは異なる因子として抽出された項目が存在し,信頼性および内容的妥当性については課題が残った.今後これらの質問項目について再度編集・改訂し,より信頼性・妥当性を高めていく必要がある.また,年齢や性等による影響を除いたより詳細な判別的妥当性の検討も要する.
著者
松本 悠貴 内村 直尚 石田 哲也 豊増 功次 久篠 奈苗 森 美穂子 森松 嘉孝 星子 美智子 石竹 達也
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.128-140, 2014 (Released:2014-10-18)
参考文献数
55
被引用文献数
6 6

目的:ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)に代表される睡眠尺度の多くは,実際の睡眠時間や日中の眠気といった量的問題や,睡眠の維持・導入といった質的問題を捉えてある.それらに加えて,24時間型社会となった今日では起床時刻・就寝時刻といった位相の問題まで視野に入れていく必要があり,かつ睡眠の位相・質・量のいずれに問題があるのかを把握するためには各々に測定・評価しなければならない.そこで我々は位相・質・量の3つの睡眠関連問題について測定する3次元型睡眠尺度(3 Dimentional Sleep Scale; 3DSS)の日勤者版を開発した.本研究はその信頼性・妥当性を検証することを目的とする.対象と方法:対象は製造業およびサービス業に従事する日勤労働者635名(男性461名,女性174名)で,平均年齢は40.5歳であった.質問紙は全17項目から成り,事前研究結果および専門家との討議を参考に睡眠の位相・質・量に関する質問を設定した.回答偏向分析後,探索的および確認的因子分析を行った.信頼性はクロンバックα信頼性係数を算出して求め,尺度の得点化・上位-下位分析を行った.仮説検定ではPSQIおよびSDSより位相・質・量それぞれに関連した項目を抜粋し,3DSSの各尺度得点との相関をみて収束的妥当性および弁別的妥当性の検証を行った.また,PSQIの総合点と3DSSの各尺度得点との相関についても検証を行った.結果:回答偏向分析にて回答に大きな偏りはみられなかった.探索的因子分析の結果2項目が削除されたが3つ因子が抽出され,位相に関する質問5項目,質に関する質問5項目,量に関する質問5項目の計15項目となり,確認的因子分析においても15項目モデルの方が適合度が高かった.α 信頼性係数は下位尺度毎では位相 = 0.685,質 = 0.768,量 = 0.717であった.仮説検定では,収束的妥当性については仮説がすべて採択された.弁別的妥当性については新尺度および既存尺度の質尺度と量尺度の間で仮説をやや上回る相関がみられていた.PSQIの総合点と3DSSの各尺度得点との相関についてもすべて仮説が採択された.考察:本研究において,我々の開発した3次元型睡眠尺度(3DSS)の日勤者版について,日勤労働者を対象として使用するにあたり,必要と考えられる信頼性・妥当性が示された.今後さらに対象者数を増やし調査を重ねることで尺度の標準化およびカットオフ値の設定を行っていきたい.
著者
橋爪 祐二 内村 直尚
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.732-738, 2015-08-15

はじめに 日本人の体型,特に中高年以上の男性は年々体重増加の傾向がある.肥満が増加するとともに,閉塞性睡眠時無呼吸症の罹患頻度も高くなってきている.現在わが国には睡眠時無呼吸症の患者は250万〜300万人はいるといわれている.さらにわが国の睡眠時無呼吸症の特徴的なことは中年以降の男性に多いことである.米国では,睡眠時無呼吸症の頻度は男性4%,女性2%といわれているが,睡眠中に呼吸が止まる頻度は男性で24%,女性で9%と高率に認められる1).ところで,現在の日本人の65歳以上の高齢者の人口は2015年(平成27年3月20日)現在,約3,300万人であり,日本の人口の約29.1%を占めている.高齢者になるほど慢性の不眠症が増加し,睡眠薬の処方箋数も増加する.米国では65歳以上の高齢者のうち無呼吸・低換気指数(AHI)15以上が約20%あったと報告されている2).また,不眠症をもつ高齢者で約29%から61%は睡眠時無呼吸症を訴えているといわれている3). 閉塞性無呼吸症候群(以下OSAS)は,睡眠中の上気道の閉塞によって無呼吸や低換気が起き,睡眠中の頻回の覚醒反応と酸化ヘモグロビンの不飽和による低酸素血症が引き起こされる.さらに頻回の覚醒反応に伴う睡眠の質や量の低下によって,OSASには昼間の眠気のみならず,認知機能障害や抑うつ症状などの精神症状を合併することが多く,熟眠感の欠如や中途覚醒の増加や夜間頻尿に伴う睡眠の分断などの不眠の症状も多くみられる.われわれの睡眠障害クリニックでは無呼吸・低換気指数が25以上のうち不眠を訴える者が6.0%いた.無呼吸症の患者は不眠の原因が無呼吸によるものである自覚が乏しいことが多く,不眠に対して飲酒をしたり,OCDの睡眠薬を飲んだり,かかりつけの医師から睡眠薬を処方してもらうケースも少なくない.飲酒や長期間のベンゾジアゼピン系の睡眠薬の服用は無呼吸症の症状をさらに悪化させるといわれている.
著者
松本 悠貴 石竹 達也 内村 直尚 石田 哲也 森松 嘉孝 星子 美智子 森 美穂子 久篠 奈苗
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 = Journal of occupational health (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.154-164, 2013-09-20
参考文献数
32
被引用文献数
2

<b>目的:</b> 睡眠は単に睡眠時間のみで良好か不良かを判断できるものではなく,睡眠の導入や維持といった睡眠の質,就寝時刻や起床時刻といった規則性まで考慮しなければならない.しかしながら,それらすべてを一度に評価できる指標は現在のところ存在しない.本研究は睡眠の規則性・質・量の3要素を評価するための質問票を独自に開発し,その信頼性と妥当性の検証を行うことを目的とした. <b>対象と方法:</b> 対象は製造業およびサービス業に従事する日勤労働者563名(男性370名,女性193名)で,平均年齢は40.4歳であった.先行研究および専門家との討議を参考に,規則性・質・量それぞれ7項目,計21項目からなる質問紙を作成・編集した.まず項目分析を行い,その後因子分析にかけて構成概念妥当性を検証した.信頼性はクロンバックα信頼性係数を算出して求めた.また,主成分分析およびクラスター分析にて標準化・分類を行い,生活習慣や日中の眠気,ストレス,持病の有無などを比較することにより,判別的妥当性の検証を行った. <b>結果:</b> 項目分析および因子分析にて,21項目中6項目が除外対象となったが,予測通り規則性・質・量の3因子構造が得られた.α信頼性係数はそれぞれ0.744,0.757,0.548であった.量因子として作成した2項目が規則性因子として抽出されていたが,それ以外は予測通りの因子として抽出された.入眠困難,熟眠障害,中途覚醒,早朝覚醒はすべて質因子として一定の負荷量を示していた.判別的妥当性については,最も点数の高いグループで健康意識が高くストレスや日中の眠気を感じていない者の割合が有意に高かった.一方で,最も点数の低いグループではストレスや持病などの睡眠障害リスクファクターを有している者の割合が有意に高かった. <b>考察:</b> 今回我々が開発した質問票にて,睡眠の規則性・質・量における構成概念妥当性が示された.しかしながら,分析過程にて不適切と判断され除外された項目や,予測していた因子とは異なる因子として抽出された項目が存在し,信頼性および内容的妥当性については課題が残った.今後これらの質問項目について再度編集・改訂し,より信頼性・妥当性を高めていく必要がある.また,年齢や性等による影響を除いたより詳細な判別的妥当性の検討も要する.
著者
小路 純央 森田 喜一郎 柳本 寛子 内村 直尚
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

我々は心理教育、認知行動療法、作業療法、軽スポーツからなる復職支援プログラムを実施し、BDI-II、SDS、HAM-D、SASS-Jに加え、今回多チャンネル近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いて、客観的評価としての有用性について検討した。プログラム施行前後で、診断名が変更となった方もおり、外来のみでの診断の困難さが示唆された。またうつ症状の改善を評価するだけでなく、社会適応能力を含めた評価が必要であることが示唆された。さらに多チャンネルNIRSより健常者に比較し脳酸素化Hb濃度変動がうつ病群で有意に低く、プログラムにより前頭前野、側頭領域において血流変動が改善することが示唆された。