著者
檀上 寛
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の課題である「海禁」については、従来漠然と民衆の出海を禁止する措置だと理解するだけで、実体についてはほとんど検討されることはなかった。そこで本研究では、元代から清代にいたる中国王朝の海洋統制策を通時代的に考察し、時代ごとの海禁の目的・形態を明らかにするとともに、海禁の歴史を次のような時代区分した。(1)海外貿易の発展に伴う沿海部の騒擾に対処した元代の海洋統制……………萌芽期(2)強大な専制権力によって民衆の出海と海外貿易を禁止した明初の海禁…………………確立期(3)15世紀中葉以降、密貿易の活発化で形骸化した明中期の海禁………………弛緩期(4)倭寇および密貿易封じのために、福建月港を「開放」した明末の海禁……………………再編期(5)台湾の鄭氏政権への対抗上、厳格に実施された清初の海禁…………戦時強化期(6)17世紀末の「開海禁」以後、アヘン戦争までの清中期の海禁………………小康期(7)アヘン戦争の敗北で「開港」して以後の清後半期の海禁……………………衰退期さらに海禁の特徴として、(1)海禁の目的はあくまでも「海防」にあること。(2)海禁は明清時代の海洋統制策であり、前代までの統制策とは質的に異なること。(3)国際秩序の維持を担う海禁=朝貢システムは明代固有のもので、同じ海禁でも清代とは全く異なること。(4)海禁という言葉には広狭両様の意味合いがあるにもかかわらず、この区別がなされていないため、学会での海禁の理解には混乱が見られること、の四点を明らかにした。
著者
檀上 寛
出版者
史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.635-669, 2009-07-31

東アジアの国際秩序に関する従来の研究は、中国王朝が与えた官爵・王号から朝貢国の序列を検討することはあっても、国際秩序を原理面から考察したものは皆無であった。本稿は東アジア世界に働く国際秩序の原理性に着目し、爵制的秩序、官僚制的秩序、宗法秩序の三秩序の存在をまず明らかにする。このうち朝貢体制を支えるのは前二者の尊尊の君臣秩序であり、親親の宗法秩序は朝貢体制の埒外にある諸国家を、擬制的血縁関係により中国中心の国際秩序の中に取り込むものであった。この宗法秩序の役割が大きく変化するのが明代である。明は対外関係を朝貢制度に一元化し、極めて厳格な政治体制を採用する。さらに全ての朝貢国に冠服を下賜して宗法秩序を適用し、華夷一家の理念世界を可視化することで朝貢体制を正当化した。今まで朝貢体制と無縁であった宗法秩序が朝貢体制に内在化し、朝貢一元体制をイデオロギー的に補強したところに明の特徴があったといえよう。
著者
檀上 寛
出版者
京都大学 (Kyoto University)
巻号頁・発行日
1997-03-24

新制・論文博士