- 著者
-
三浦 奈都子
- 出版者
- 岩手県立大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2004
静脈注射を行っていく上で少なからず経験するであろう点滴漏れに対するケアは冷罨法や温罨法と様々であり,統一性がないのが現状である.本研究では,点滴漏れ時のケアを確立することを目的に,実験動物(ラット)を用いて抗生物質製剤を中心とする基礎的研究を実施した.静脈注射を行っていく上で少なからず経験するであろう点滴漏れに対するケアは冷罨法や温罨法と様々であり,統一性がないのが現状である.本研究では,点滴漏れ時のケアを確立することを目的に,実験動物(ラット)を用いて抗生物質製剤を中心とする基礎的研究を実施した.その結果,パンスポリン^<【○!R】>(セフェム系抗生物質製剤,pH5.7〜7.2,浸透圧比1)が漏れた直後に冷罨法(16〜20℃)を30分間施行すると,皮下組織への炎症性細胞の浸潤が抑制され,温罨法(40〜43℃)を30分間施行すると,炎症性細胞の組織浸潤,筋壊死が促進されることを明らかにした.また,パンスポリン^<【○!R】>が漏出した際の組織傷害の種類は,表皮の壊死を伴わない真皮層の炎症(以後,起炎症とする)であることが明らかとなった.次に,pHの違いによる組織傷害の程度と種類,罨法の効果を明らかにするために,異なる薬剤を用いた実験を行った.その結果,セフェム系抗生物質製剤であるファーストシン(8)(pH7.5〜9.0,浸透圧比1)とグリコペプチド系抗生物質製剤である塩酸バンコマイシン^<【○!R】>(pH2.5〜4.5,浸透圧比1)による組織傷害の程度に違いは認められなかったが,パンスポリン^<【○!R】>と同様,起炎症性の薬剤であることが明らかとなった.これらの薬剤が血管外に漏出した場合,温罨法を実施することにより,皮下組織の炎症性細胞の浸潤が促進されることを明らかにした.全ての実験において罨法を実施するために用いた素材は,吸水ポリマーを使用した凍結タイプの保冷剤であり,皮膚へ密着しにくい特徴があったため,現在不凍タイプの素材にて同様の実験を行い検討中である.また,薬剤漏出直後に実施する罨法の適切な継続時間を10分から60分の間で検討中である.