著者
村中 文人 岩間 直子 斉藤 知明 殿内 暁夫 赤田 辰治 武田 潔
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.9, pp.711-716, 2006-09-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

カプロン酸エチル高生産酵母Sacckaromyces cereuisiae3703-7株はグルコース濃度15%培養温度25℃で培養した時カプロン酸エチル生成が最大であった。糖類ではグルコースよりはシュクロース, フルクトース基質の方がカプロン酸エチル生成が多かった。親株の3703株はカプロン酸エチル生成に対するグルコース濃度,培養温度の効果はほとんどなく, その生成量は3703-7株と比較して1/7-1/10であり, 低かった。これらの結果からフルクトース,グルコースとシュクロースを糖組成とするリンゴ搾り粕を原料として3703-7株をエタノール発酵することによりカプロン酸エチルや酢酸エチルの香気物質を生成することが示唆された。リンゴ搾り粕から糖濃度の異なる2種類の抽出液,×5抽出液(糖分6.4%を含む)および×1抽出液(糖分10.4%を含む)を調製し, 3703-7株を植菌し, 15℃ および25℃ で培養した。カプロン酸エチルは×1抽出液の方が多く生産された。×1抽出液で25℃8日間培養後, エタノールは5.23%生成され,カプロン酸エチル, 酢酸エチルと酢酸イソアミルはそれそれ3.12ppm, 7.13ppm, 0.45ppmであった。この発酵液の蒸留液はリンゴの香りに加えてカプロン酸エチルの甘い香りを有するエタノール32.3%のフレーバーアルコールであった。
著者
水上 里美 武田 潔 赤田 辰治 藤田 隆
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.633-641, 2001-10-05
被引用文献数
2

水田土壌の糸状性酢酸利用メタン生成菌の存在形態を検討するとともに、水田土壌から糸状性酢酸利用メタン生成菌K-5菌株を分離し、菌学的特徴を明らかにした。また各地の水田土壌を採取し、糸状性酢酸利用メタン生成菌の分布について検討した。 1)水田土壌の糸状性酢酸利用メタン生成菌の菌数は湛水期、落水期ともに球状酢酸利用メタン生成菌より1桁少なかった。しかし酢酸培地で繰り返し培養を行い、糸状性酢酸利用メタン生成菌を選択的に集積させることができた。 2)水田土壌の糸状性酢酸利用メタン生成菌は土壌粒子と植物遺体に生息したが、湛水下の水田では植物遺体に多く生息していると思われる。糸状性酢酸利用メタン生成菌はフロックを形成せず、伸長した糸状性の細胞形態で生息した。 3)分離されたK-5菌株は短い糸状性細胞形態を特徴とする菌種であった。超薄切片の電子顕微鏡観察から、K-5菌株は細胞膜の外側に電子密度の濃い2層の鞘を持つことが明らかにされた。 4)K-5菌株の菌学的特徴は、メタン生成菌特有の緑青色の蛍光を示す短い糸状性細胞形態であること、コロニーを形成すること、酢酸を唯一の基質としメタンを生成することである。K-5菌株は好気的環境下ですぐに死滅しなかったが、乾燥に対しては耐性がなかった。 5)北海道から九州までの各地の水田土壌から糸状性酢酸利用メタン生成菌を分離することができた。水田土壌の糸状性酢酸利用メタン生成菌は土壌の理化学性の特徴や気温の差異にかかわらず、広く水田土壌に生息するメタン生成菌であることを示唆している。