著者
藤田 隆夫
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.244-255, 1993-08-04 (Released:2008-12-25)
参考文献数
18
著者
菅原 和孝 藤田 隆則 細馬 宏通
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.182-205, 2005-09-30

民俗芸能の伝承を身体資源の配分過程として捉え、静岡県水窪町の西浦田楽における世襲制の変容を解明する。また、次世代への継承を実現する場としての練習に注目し、そのやりとりの特質を分析する。西浦田楽の核となるのは毎年旧暦1月18日に挙行される「観音様のお祭り」である。ここで奉納される舞は地能33演目、はね能11演目(うるう年は12演目)である。地能は能衆と呼ばれる24戸の家に固定した役として割りあてられ、父から長男へ世襲によって継承されてきた。200年以上の歴史をもつこの制度は、昭和40年代初頭から農村の過疎化により崩壊の危機に直面した。14戸に減少した能衆組織内で役の大幅な再配分が行われたが、とくに本来は役を持たなかったにもかかわらず技能に秀でた成員に、多くの役が負わされた。演者の固定しないはね能において身体技法の功拙が競われてきたことが、こうした再配分を可能にした。近年、はね能に関与している家のすべては、父と長男の二世代が田楽に参加しており、継承が急速に進行している。練習場面では、太鼓および練習場の物理的構造という資源を最大限活用する教示と習得の工夫が発達している。初心者(「若い衆」)の所作・身振り・動作を継年的に観察すると、困惑や依存から納得への明瞭な推移がみられる反面、年長者によって開示される知識が断片的で不透明であることからくる混乱も顕著であった。祭り前の集中的な練習によってある地能の舞いかたが若い衆に促成で植えつけられたことは、継承を急激に進めようとする年長者たちの決意を示すものであった。これらの分析結果に基づき、正統的周辺参加理論、および民俗芸能において「身体技法的側面」が突出するプロセスに関する福島真人の理論の適用可能性を検討するとともに、練習場面にみられる「楽しさ」を分析する展望を探る。
著者
深山 慶介 植野 拓 藤田 隆 大平 美咲 中司 貴大
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.165, 2010 (Released:2011-01-15)

【はじめに】腰痛には様々な要因があり、治療に難渋することは臨床でよくみられる。腰痛に関連するものの一つとして、骨盤の前後傾運動の報告はみられるが、骨盤の開閉に関する報告は少ない。今回は、骨盤の開閉の評価を行い腰痛との関連ついて検討したのでここに報告する。【対象】本研究に関する説明を行い、同意が得られた成人男女23名(男性9名 女性14名 平均年齢27歳±8歳)。【方法】骨盤の開閉の評価として、両上前腸骨棘間距離(以下両ASIS間距離)を後上腸骨棘間距離(以下両PSIS間距離)で割った比率を、骨盤の開閉比率とした。またその開閉比率を、立位で足部の内側を揃えた中間位(以下中間位)、踵を揃えてつま先を最大に開いた外旋位(以下外旋位)、つま先を揃えて踵を最大に開いた内旋位(以下内旋位)で、それぞれ求め、中間位と外旋位、中間位と内旋位の比較をt-検定により分析した(p<0.01)。 次に腰痛との関連について、腰痛の有無にて2群(腰痛有り14名、腰痛なし9名)に分け、骨盤中間位の開閉比率の比較をwilcoxon順位和検定により分析した(p<0.05)。【結果】 中間位の開閉比率の平均が2.17、外旋位が2.65、内旋位が1.8で、それぞれ中間位と外旋位、中間位と内旋位における骨盤の開閉比率において、有意に骨盤の開閉に差が見られた。次に腰痛の有無による2群間の開閉比率において、腰痛がある群の開閉比率の平均が2.35、腰痛がない群の開閉比率の平均が2.01で、腰痛がある人の開閉比率が腰痛がない人の開閉比率に比べ優位に高かった。【考察・まとめ】骨盤の開閉の動きは、仙腸関節により誘導される。動かない関節と言われている文献も少なくないが、今回の結果より、仙腸関節による骨盤の開閉の動きが認められたと考える。また、荷重伝達機能を持つ仙腸関節で結合されている骨盤は、様々な姿勢により影響を受ける事が予測される。今回、腰痛がある群が腰痛がない群に比べ、骨盤の開閉比率が優位に高かった事より、骨盤の開きが大きい人は腰痛になりやすいという傾向が示唆された。
著者
谷 泰 串田 秀也 藤田 隆則 菅原 和孝
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

社会過程は、言語を中心にした相互行為的なコミュニケーションの場で、織りなされる関係の維持・更新の過程として記述されうる。その原型は、見る・見られる関係で、発話が交わされる、対面的なインターラクションにある。そこでは表象的な指示行為、措定される言及世界への関与、文脈前提を顧慮した言及世界の読みが重要な注目点となり、それらの諸類型を形式的に一般化することは、特殊の記述にとっても重要である。言語行為論、認知科学、相互行為理論、人類学の一部で、この基礎的作業は、開始されたばかりで、より精力的、かつ緻密な分析が求められている。この作業目的にそって、京都大学人文科学研究所で、代表責任者(谷)は、「コミュニケーションの自然誌」と言う共同研究を行ってきたが、補助申請は、この一貫としてなされた。二年間、多様な場面での会話状況資料の収集と分析が行われた。収集資料の一部は、本報告書に示されているが、ちかく資料集としてまとめる予定。分析の成果としては、1)言及世界への関与と会話の組織化に関する面で、従来注目されていたシーケンス・コントロールと言った面とは別に、あらたな関与形式の諸類型(対照形成、メンタル・スペースの変換などなど)が、摘出された(串田)。これらの視点は、今後、協調と支配の隠された側面を見いだす際に有効なものとなろう。2)会話に於て生起する笑いを、関与主体の読みの状態への関数として理解し、その機能を追求した。言及世界措定の相互的一致を作業前提のもとで、読みにおいて措定される文脈前提が、補追される情報を契機に、上位の階型に移行するときの自己言及として捉えた。それは、相互了解・齟齬・欺瞞という、コミュニケーション上の問題と密接に係わった、パン・ヒューマンな能力のひとつとみなしうることを示した(谷)。
著者
菅原 和孝 松田 素二 水谷 雅彦 木村 大治 舟橋 美保 内堀 基光 青木 恵里子 河合 香吏 大村 敬一 藤田 隆則 定延 利之 高木 光太郎 鈴木 貴之
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

「身体化された心」を軸に、フィールドワークと理論的探究とを統合することによって、社会の構造と実践の様態を解明することを目的とした。フィールドワークでは「心/身体」「文化/自然」といった二元論を克服する記述と分析を徹底し、理論探究では表象主義を乗り超える新しいパラダイムを樹立した。「身体化」に着目することによって、認知と言語活動を新しい視角から照射し、民族誌的な文脈に埋めこまれた行為と実践の様態を明らかにした。
著者
井上 功 山本 砧三 武嶋 寛剛 中小 路澄子 貞岡 達也 坂哲 郎 垣鍔 典也 坂倉 淳 牧本 一男 高橋 宏明 和田 公平 大森 研史 林 伊吹 藤田 隆夫 渡辺 猛世 藤澤 俊二 宇野 功 野中 隆三郎
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.87, no.7, pp.985-995, 1994-07-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
5

The effectiveness, safety and usefulness of ketotifen nasal spray were investigated in 163 patients with allergic rhinitis. Ketotifen nasal spray (0.05mg/puff) was given four times daily for 4 weeks or more. “Slight to high” improvement was recorded in 92.4% of patients and “moderate to high” improvement in 61.0%.Overall usefulness was very high for both perennial and seasonal allergic rhinitis. Side effects were noted in six patients (3.7%). Drowsiness was noted in five patients and nasal mucosal pain in only one.The results of this study suggest that ketotifen nasal spray is very useful in the treatment of allergic rhinitis.
著者
大石 武士 大塚 章宏 藤田 隆介 黒川 広行 松原 康二
出版者
近畿大学農学部
雑誌
近畿大学農学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Agriculture of Kinki University (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
no.33, pp.25-30, 2000-01-01

[Author Abstract]Two experiments were carried out to reexamine the methods for converting coffee residue into poultry feed. In experiment 1, 15% and 30% untreated coffee residue diets were given, and in experiment 2, 15% and 30% boiled and filtered coffee residue diets were given to laying hens. Untreated coffee residue diets decreased the feed intake and egg production. Diarrhea and soft egg shells also resulted from untreated coffee residue diets. The 15% boiled and filtered coffee residue diet significantly improved feed intake and egg production, whereas the 30% boiled and filtered coffee residue diet resulted in low feed intake and egg production compared with the 15% coffee residue diet. Low yolk color and thin eggshells also resulted from the boiled and filtered coffee residue diets.[著者抄録]コーヒーの消費の増大に伴って副産物として多量にコーヒー粕が排出され,その処理にコーヒーメーカーは苦慮している。環境対策や省資源の面から産業廃棄物として処理されているコーヒー粕を有効利用することは意義のあるものと考えられる。コーヒー粕を飼料化するためには,特有の苦みや臭いによる嗜好性の低さを改善する必要がある。手軽で安価に嗜好性を改善するための方法としてコーヒー煮沸・濾過をくり返すことが,鶏のコーヒー粕に対する嗜好性を改善するかどうかを検討するための実験を実施した。市販配合飼料の15%および30%を無処理のコーヒー粕で代替し産卵鶏に給与した実験1では,代替割合に関係なく飼料摂取量は通常の1/2程度まで低下し,産卵率も著しく劣り,軟卵や下痢などの発生が認められた。市販配合飼料の15%および30%を60分間の煮沸・濾過処理を施したコーヒー粕と代替して給与した実験2では,15%の代替では飼料摂取量および産卵率は市販配合飼料を給与した対照区とほとんど差は認められない程度まで改善された。しかし,30%の代替の場合,摂取量,産卵率ともに無処理のコーヒー粕代替飼料に比べれば改善されたが,対照区に比べ有意に劣っていた。従って,コーヒー粕に60分間の煮沸・濾過処理を施せば,15%程度までなら飼料としての利用が可能と思われた。ただし,煮沸・濾過処理コーヒー粕で代替することによって卵殻の厚さや卵黄色調等の卵質の一部に低下傾向が認められるので,これらを防ぐための処方も必要と考えられた。
著者
藤田 隆則
出版者
京都市立芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

能の謡の楽譜には、テクストの横に「節」あるいは「胡麻点」と呼ばれる記号がつく。われわれは、その記号が、音の高さや長さを明示していると期待するが、その期待はうらぎられる。高さや長さについて有益な情報を与えるのは胡麻点ではなく、それ以外のさまざまな指示語である。にもかかわらず、胡麻点は謡の楽譜には必要不可欠である。それは胡麻点が、謡のテクストのシラブル数を明確に示してくれるからだ。シラブル数の情報は、謡のような、音数律の変化を基本とする音楽にとっては必要不可欠である。また、胡麻点のかたちは、しばしば手などで身体的になぞられる。それは、旋律をひとつの身ぶりとしてとらえるための補助道具として機能する。
著者
菅原 和孝 藤田 隆則 細馬 宏通
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.182-205, 2005-09-30 (Released:2017-09-25)
被引用文献数
1

民俗芸能の伝承を身体資源の配分過程として捉え、静岡県水窪町の西浦田楽における世襲制の変容を解明する。また、次世代への継承を実現する場としての練習に注目し、そのやりとりの特質を分析する。西浦田楽の核となるのは毎年旧暦1月18日に挙行される「観音様のお祭り」である。ここで奉納される舞は地能33演目、はね能11演目(うるう年は12演目)である。地能は能衆と呼ばれる24戸の家に固定した役として割りあてられ、父から長男へ世襲によって継承されてきた。200年以上の歴史をもつこの制度は、昭和40年代初頭から農村の過疎化により崩壊の危機に直面した。14戸に減少した能衆組織内で役の大幅な再配分が行われたが、とくに本来は役を持たなかったにもかかわらず技能に秀でた成員に、多くの役が負わされた。演者の固定しないはね能において身体技法の功拙が競われてきたことが、こうした再配分を可能にした。近年、はね能に関与している家のすべては、父と長男の二世代が田楽に参加しており、継承が急速に進行している。練習場面では、太鼓および練習場の物理的構造という資源を最大限活用する教示と習得の工夫が発達している。初心者(「若い衆」)の所作・身振り・動作を継年的に観察すると、困惑や依存から納得への明瞭な推移がみられる反面、年長者によって開示される知識が断片的で不透明であることからくる混乱も顕著であった。祭り前の集中的な練習によってある地能の舞いかたが若い衆に促成で植えつけられたことは、継承を急激に進めようとする年長者たちの決意を示すものであった。これらの分析結果に基づき、正統的周辺参加理論、および民俗芸能において「身体技法的側面」が突出するプロセスに関する福島真人の理論の適用可能性を検討するとともに、練習場面にみられる「楽しさ」を分析する展望を探る。
著者
村上 絵美 大井 喜久子 宮川 謹至 藤田 隆 和田 光俊 重松 麦穂 小田島 亙 木下 健太郎 大形 英男 松邑 勝治
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.497-503, 2019-11-01 (Released:2019-11-01)

科学技術振興機構が運営する電子ジャーナルプラットフォーム「J-STAGE」は,1999年10月に運用を開始し,2019年10月に20周年を迎える。運用開始当時の登載誌はわずか3誌のみであったが,現在,登載数は2,900を超えている。わが国の約半数の学協会が利用する電子ジャーナルプラットフォームへと成長したJ-STAGEだが,近年の学術コミュニケーションや研究フローの変化に伴い,新たな課題が浮き彫りとなってきている。本記事では,J-STAGEの最新の公開状況やサービス内容を解説するとともに,新たな課題,特に,オープンアクセス推進に向けた取り組みなどを紹介する。
著者
藤田 隆乗
出版者
智山勧学会
雑誌
智山学報 (ISSN:02865661)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.259-271, 1993-12-12 (Released:2017-08-31)

頼瑜(一二二六-一三〇四)はその生涯の中で多くの著作を残したが、いまだそれら全体を通じての教学の特色が明らかにされているとは言い難い。そこで今回は成仏観をとりあげ覚鑁の成仏観との比較も含めて考察し、頼瑜研究の一助としたい。頼瑜は即身成仏を即疾、現生の肉身を有したままでの成仏と理解し、これにもとづいて一生・二生成仏を主張する。本論では一生・二生成仏、機根、三摩地等を中心として検討する。
著者
森田 茂之 二木 昭人 藤原 大輔 藤田 隆夫 岡 睦雄 丹野 修吉
出版者
東京工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

研究代表者、各研究分担者のそれぞれの分野における、当研究課題に関連する研究計画にもとづいて、研究を進めた。その結果、当初の目標を完全に遂行し、更にこれからの発展に関する展望を込めた、大きな成果をあげることができた。以下に3の概要を簡単に記述する。研究代表者(森田)は、ここ数年来研究している、向きづけ可能閉曲面をファイバ-とするファイバ-バンドル(曲面バンドル)の特性類の理論を更に発展させ、主要な応用として、リ-マン面のモジュライ空間のトポロジ-に関するいくつかの結果と、曲面の写像類群の構造と3次元多様体の不変量との深い関連を示す定理とを得た。特に写像類群の重要な部分群であるTorelli群と、ホモロジ-3球面のCasson不変量と関連を与える決定的結果を得た。次に、各研究分担者の成果のうちおもなものを列記する。丹野は三角関数の積を変数の巾ぐ割った形の関数の無限巳間での積分に関して新しい公式を求めた。またCR構造、接触構造についても、微分幾何的研究を発展させた。岡は非退化完全交差系に関する一連の研究を推し進め、自然な滑層分割の存在、生ゼ-タ関数を与える公式等を得た。藤田は弱異点のあるDel Pezzo多様体の分類をほぼ完成した。また一般ファイバ-がDel Pezzo多様体であるような偏極多様体の一次元変形栓に出現し得る特異ファイバ-の型を分類した。藤原はFeynmanの経路積分をソボレフ空間上の広義積分として収束を証明した。道具として停留位相法における誤差の大きさを、空間次元に無関係に評価出来るという新しい結果が使われる。また二木はKa^^¨hlerーEinstein計量の存在に関する二木不変量のeta不変量による解釈を与えた。
著者
水上 里美 武田 潔 赤田 辰治 藤田 隆
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.633-641, 2001-10-05
被引用文献数
2

水田土壌の糸状性酢酸利用メタン生成菌の存在形態を検討するとともに、水田土壌から糸状性酢酸利用メタン生成菌K-5菌株を分離し、菌学的特徴を明らかにした。また各地の水田土壌を採取し、糸状性酢酸利用メタン生成菌の分布について検討した。 1)水田土壌の糸状性酢酸利用メタン生成菌の菌数は湛水期、落水期ともに球状酢酸利用メタン生成菌より1桁少なかった。しかし酢酸培地で繰り返し培養を行い、糸状性酢酸利用メタン生成菌を選択的に集積させることができた。 2)水田土壌の糸状性酢酸利用メタン生成菌は土壌粒子と植物遺体に生息したが、湛水下の水田では植物遺体に多く生息していると思われる。糸状性酢酸利用メタン生成菌はフロックを形成せず、伸長した糸状性の細胞形態で生息した。 3)分離されたK-5菌株は短い糸状性細胞形態を特徴とする菌種であった。超薄切片の電子顕微鏡観察から、K-5菌株は細胞膜の外側に電子密度の濃い2層の鞘を持つことが明らかにされた。 4)K-5菌株の菌学的特徴は、メタン生成菌特有の緑青色の蛍光を示す短い糸状性細胞形態であること、コロニーを形成すること、酢酸を唯一の基質としメタンを生成することである。K-5菌株は好気的環境下ですぐに死滅しなかったが、乾燥に対しては耐性がなかった。 5)北海道から九州までの各地の水田土壌から糸状性酢酸利用メタン生成菌を分離することができた。水田土壌の糸状性酢酸利用メタン生成菌は土壌の理化学性の特徴や気温の差異にかかわらず、広く水田土壌に生息するメタン生成菌であることを示唆している。
著者
久保 慶三郎 岡田 恒男 関 松太郎 高梨 晃一 宇田川 邦明 龍岡 文夫 田村 重四郎 柴田 碧 藤田 隆史 半谷 裕彦 後藤 博司 松井 長行 片山 恒雄
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.11, pp.p411-427,図巻頭8p, 1978-11

1. まえがき : 2. 地震の概要, 久保, 慶三郎 : 3. 建築物の被害, 岡田, 恒男関, 松太郎高梨, 晃一宇田川, 邦明 : 4. 土木構造物の被害, 龍岡, 文夫田村, 重四郎 : 5. 産業施設・危険物施設の被害, 柴田, 碧藤田, 隆史 : 6. 福島県における被害の概要, 半谷, 裕彦後藤, 博司松井, 長行 : 7. 都市供給施設の被害と復旧, 片山, 恒雄1978年6月12日午後5時14分頃,牡鹿半島沖約100kmを震央として発生したマグニチュード7.4の宮城県沖地震は,仙台市を中心とする宮城県のほか福島県・岩手県などで土木・建築その他各種の構造物や施設に大きな被害を与えた.この報告は,地震工学に関係する本所の各専問分野の研究者が行った宮城県沖地震の被害調査の結果を速報的にまとめたものである
著者
藤田 隆史 井上 昭彦 服部 忍 柴田 碧
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.50, no.456, pp.1327-1338, 1984-08-25

誘導円板形継電器は送配電系統や発電機などの保護継電器として広範囲に使用されているが、過去の地震での誤動作も報告されており、その誤動作が従来から問題とされていた。本研究では、水平二次元加振により円板の中心軸下端のピボットが下部軸受内をふれまわる際の摩擦が原因となって円板が回転し、誤動作を起こすことを加振実験と理論解析により解明し、このタイプの継電器の振動試験は水平二次元加振によるべきことを明らかにした。
著者
齋藤 秀司 小林 亮一 松本 耕二 藤原 一宏 金銅 誠之 佐藤 周友 斎藤 博 向井 茂 石井 志保子 黒川 信重 藤田 隆夫 中山 能力 辻 元
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

当該研究は(I)高次元類体論および(II)代数的サイクルの研究のふたつの大きな流れからなる。(I)高次元類体論は高木-Artinにより確立された古典的類体論の高次元化とその応用を目指している。この理論の目指すところは数論的多様体のアーベル被覆を代数的K理論を用いて統制することで、幾何学的類体論とも言える。整数環上有限型スキームにたいする高次元類体論は当該研究以前に加藤和也氏との一連の共同研究により完全な形で完成することに成功した。高次元類体論はその後もρ進Hodge理論などの数論幾何学の様々な理論を取り入れつつ展開し、世界的なレベルで研究が続けられている。当該研究の高次元類体論における成果として、整数論においてよく知られた基本的定理であるAlbert-Brauer-Hasse-Noetherの定理の高次元化に関する結果がある。(II)主要な目標は"代数的サイクルを周期積分により統制する"という問題に取り組むことである。この問題の起源は19世紀の一変数複素関数論の金字塔ともいえるAbelの定理である。当該研究の目指すところはAbelの定理の高次元化である。これは"高次元多様体X上の余次元γの代数的サイクルたちのなす群を有理同値で割った群、Chow群CH^γ(X)の構造をHodge理論的に解明する"問題であると言える。この問題への第一歩として、Griffithsは1960年代後半Abel-Jacobi写像を周期積分を用いて定義し、CH^γ(X)を複素トーラスにより統制しようと試みた。しかし1968年MumfordがCH^γ(X)はγ【greater than or equal】2の場合に一般には複素トーラスといった既知の幾何学的構造により統制不可能なほど巨大な構造をもっており、とくにAbel-Jacobi写像の核は自明でないことを示した。このような状況にたいし当該研究はBloch-Beilinsonによる混合モチーフの哲学的指導原理に従い、GriffithsのAbel-Jacobi写像を一般化する高次Abel-Jacobi写像の理論を構成し、GriffithsのAbel-Jacobi写像では捉えきれない様々な代数的サイクルをこれを使って捉えることに成功した。この結果により高次Abel-Jacobi写像がAbelの定理の高次元化の問題にたいする重要なステップであることが示された。当該研究はさらに発展しつつあり、Blochの高次Chow群、Beilinson予想、対数的トレリ問題、などの様様な問題への応用を得ることにも成功している。