著者
水原 啓太 入戸野 宏
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.189-203, 2021 (Released:2022-11-01)
参考文献数
115

Respiratory phases are associated with the performance on various cognitive tasks. This paper reviews behavioral and psychophysiological studies that compared the effects of inhalation and exhalation phases on perception and cognition. First, previous findings are summarized, based on psychological functions such as simple motor reaction, attention, and memory. Second, four methodical difficulties inherent in conducting such studies are discussed: choice of respiratory route (i.e., nasal vs. oral), manner of breathing (i.e., spontaneous vs. controlled), instruction on how to breathe, and manipulation of the timing of stimulus presentation. Finally, several research questions are raised to understand the relationship between respiratory phases and psychological functions.
著者
水原 啓太 武藤 拓之 入戸野 宏
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.25-31, 2019-02-28 (Released:2019-03-21)
参考文献数
21

人は自分が意思決定したタイミングを正確に知覚できない.Bear & Bloom(2016)は,画面上に五つの白い円を提示し,実験参加者に任意の円を選ばせた.しばらくして一つの円(標的刺激)を赤色に変化させ,参加者にその円を選んでいたかどうかを尋ねた.その結果,色の変化までの時間(遅延時間)が短いと,標的刺激を選択していたと回答する割合が高かった.これは,実際には色の変化が選択に影響を与えたにもかかわらず,変化前に選択していたと錯覚したことを意味する.本研究では,遅延時間が25~50 msのときに同様の効果が認められたが,さらに短い17 msでは認められなかった.この知見は,意思決定のタイミングについてのポストディクションを支持する新たな証拠である.また,色の変化までに円の選択が間に合ったという報告は,遅延時間が167 ms以下のときに実際よりも多くなることが示された.この結果は,遅延時間が短いときに,意思決定についての意識が後付け的に生じることを示唆している.
著者
水原 啓太 柴田 春香 入戸野 宏
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第18回大会
巻号頁・発行日
pp.87, 2021-03-15 (Released:2021-03-15)

左右対称な物体において,正面から見た画像よりも,斜めを向いた画像のほうが好まれる (Nonose et al., 2016)。斜め向きの画像は,物体についての多くの情報を表すため,見た目が良く感じられると考えられている。本研究は,左右対称な物体の画像において,物体の左右の向きが物体の選好に与える影響について検討することを目的とした。オンライン実験で,左右の向きのみが異なる日常物体100個の画像を対提示し,見た目が良いほうの画像を強制選択してもらった。画像は物体が正面を向いた状態から,鉛直軸に関して左右のどちらかに30°回転した画像と,それを左右反転した画像であった。その結果,左向きの物体を選好する割合は平均61.2%であり,有意に偏っていた。物体ごとに検討しても左向きよりも右向きのほうが有意に好まれた物体はなかった。この結果について,物体の操作可能性や左方光源優位性の観点から考察した。
著者
水原 啓太 柴田 春香 入戸野 宏
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.87, 2021

<p>左右対称な物体において,正面から見た画像よりも,斜めを向いた画像のほうが好まれる (Nonose et al., 2016)。斜め向きの画像は,物体についての多くの情報を表すため,見た目が良く感じられると考えられている。本研究は,左右対称な物体の画像において,物体の左右の向きが物体の選好に与える影響について検討することを目的とした。オンライン実験で,左右の向きのみが異なる日常物体100個の画像を対提示し,見た目が良いほうの画像を強制選択してもらった。画像は物体が正面を向いた状態から,鉛直軸に関して左右のどちらかに30°回転した画像と,それを左右反転した画像であった。その結果,左向きの物体を選好する割合は平均61.2%であり,有意に偏っていた。物体ごとに検討しても左向きよりも右向きのほうが有意に好まれた物体はなかった。この結果について,物体の操作可能性や左方光源優位性の観点から考察した。</p><p></p>
著者
武藤 拓之 水原 啓太 入戸野 宏
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第17回大会
巻号頁・発行日
pp.2, 2019 (Released:2019-10-28)

複数の選択肢の中から1つを素早く自由に選択する課題において,自分がどれを選択したかについての意識体験が後付け的に決定されるという現象が知られている。このポストディクション現象は,視覚情報が無意識的に処理されてから意識に上るまでの時間差に起因すると考えられてきた。しかし,従来のモデルは現象の言語的な記述に留まっており,数理的妥当性の検証は不十分であった。そこで本研究は,先行研究の理論的考察を踏まえた仮定から,自由選択の認知過程を表現するシンプルな確率モデルを導出し,このモデルでポストディクション現象が説明できるか否かを検証した。水原・武藤・入戸野 (2019) の2つの実験課題から得られたデータにモデルを適用した結果,全てのデータをこのモデルでよく説明できることが確認された。また,無意識的な処理が意識に上るまでの時間差や選択に要する時間の分布といった有意味な情報を推定できることも示された。