著者
杉本 憲彦 ファン ミントゥン 橘 完太 吉川 大弘 古橋 武 水田 亮
出版者
日本流体力学会
雑誌
日本流体力学会年会講演論文集 (ISSN:13428004)
巻号頁・発行日
vol.2008, 2008-09-04

We propose a high speed method to detect vortex using a streamline with enhanced curvature, which is useful to identify tropical cyclones in huge climatology data. In the proposed method, center of vortex is detected by iteration of streamline from some initial points automatically. This method has high accuracy and low computational cost, because it does not need to check empirical conditions at all grid points, contrary to the case of conventional method. We also extend the method to evaluate intensities and influential ranges of detected vortex. The accuracy of the method is checked using observational and climate model data. Results suggest that this method is applicable to risk-assessment of tropical cyclones under global warming simulated by high resolution models.
著者
岡田 靖子 竹見 哲也 石川 裕彦 楠 昌司 水田 亮
出版者
京都大学防災研究所
雑誌
京都大学防災研究所年報. B (ISSN:0386412X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.B, pp.157-161, 2015-06

This study focuses on atmospheric circulation fields during the baiu in Japan with global warming under the RCP scenarios. We use projection experimental data conducted using a 20km-, 60km-mesh global atmospheric model (MRI-AGCM3.2). The baiu front indicated by the north-south gradient of moist static energy moves northward in present-day climate, whereas this northward shift in future climate simulations is very slow during May and June. In future late baiu season, the baiu front stays in the northern part of Japan even in August. As a result, the rich water vapor is transported around western Japan and the daily precipitation amount will increase in August. In the mid-troposphere, the horizontal warm advection roughly corresponds to upward vertical pressure velocity, and shows northward migration as seen in the lower troposphere. Especially, the RCP 8.5 scenario is delayed compared to the RCP 4.5 scenario. This tendency is evident in the north-south term of 500-hPa warm advection in particular. In conclusion, a late of the baiu rainfall band northward and an increase in precipitation during late of the baiu season are apparent from the point of view of atmospheric fields.
著者
楠 昌司 水田 亮
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.99, no.1, pp.79-100, 2021 (Released:2021-03-03)
参考文献数
57
被引用文献数
2

60km格子の全球大気モデル(60kmモデル)を用いた「地球温暖化施策決定に資する気候再現・予測実験データベース (the database for Policy Decision making for Future climate change : d4PDF)」と呼ばれる約100個の大規模アンサンブル実験により、東アジアの雨期の将来変化を予測した。現在気候は、過去に観測された海面水温(Sea Surface Temperature : SST)を60kmモデルに与えた。産業革命以前の気候に比べて4℃暖かい将来気候では、第5期大気海洋大循環モデル国際比較実験(the Atmosphere–Ocean General Circulation Models of the fifth phase of the Coupled Model Intercomparison Project : CMIP5)に参加した大気海洋大循環モデルで予測された6つの異なるSST分布を60kmモデルに与えた。将来、夏の降水量は東アジアのほとんどの地域で一般に増えるが、西日本で減る。中国、韓国、日本の30-35°N付近で6月に降水量が減る。6月について各格子点において大規模アンサンブル実験から算出した確率密度関数によれば、単純な算術平均による月平均降水量は減るものの、最も強い降水が増える地域がある。西日本では、梅雨入りが遅れ、梅雨明けが早まるので、結果として雨期が短くなる。西日本で6月に降水量が減ることは、北西太平洋亜熱帯高気圧が南に偏ることで、日本の南で水蒸気収束が起こることによる波及効果に起因する。モデルの水平解像度の違い、対流の表現方法の違い、大気海洋の相互作用の有無にかかわらず、一貫して西日本で6月に降水量が減ることを確認した。
著者
足立 恭将 行本 誠史 出牛 真 小畑 淳 中野 英之 田中 泰宙 保坂 征宏 坂見 智法 吉村 裕正 平原 幹俊 新藤 永樹 辻野 博之 水田 亮 藪 将吉 神代 剛 尾瀬 智昭 鬼頭 昭雄
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.1-19, 2013 (Released:2013-12-27)
参考文献数
57
被引用文献数
6 67

気象研究所(MRI)の新しい地球システムモデルMRI-ESM1を用いて、1850年から2100年までの大気化学、及び炭素循環を含む統合的な気候シミュレーションを行った。MRI-ESM1は、大気海洋結合モデルMRI-CGCM3の拡張版として開発されたモデルであり、拡張部分の化学的・生物地球化学的過程以外の力学的・熱力学的過程は、両モデルで同設定とした。計算負荷の大きい化学過程を扱う大気化学モデルを低解像度(280km)に設定して、MRI-ESM1の大気モデル部分はMRI-CGCM3と同じ120kmとした。基準実験において、地上気温、放射収支、及び微量気体(二酸化炭素(CO2)とオゾン)濃度の気候ドリフトは十分に小さいことを確認した。MRI-CGCM3による基準実験と比較して、全球平均地上気温が若干高いが、これは対流圏のオゾン濃度がやや高いためであった。次に、歴史実験を行いモデル性能を検証した。このモデルは地上気温と微量気体濃度の観測された歴史的変化を概ね再現出来ていた。ただし、地上気温の昇温とCO2濃度の増加はともに過少評価であり、これらの過少評価は土壌呼吸を通した正のフィードバックが関係していた。大気CO2濃度増加が過少に評価されたことにより昇温量が抑えられ、昇温過少が土壌呼吸を不活発にして陸域での正味のCO2吸収が過剰となり大気CO2濃度増加の過少を招いた。モデルで再現された地上気温、放射フラックス、降水量、及び微量気体濃度の現在気候場は、観測値とよく合っていた。ただし、特に南半球熱帯域では、放射、降水量、及びオゾン濃度に観測値との差異が存在していた。これらは過剰な対流活動によるものと判断され、太平洋低緯度域では所謂ダブルITCZ状態となっていた。MRI-ESM1とMRI-CGCM3を比べると、両者の現在気候場は非常によく似ており、現在気候再現性能は同程度であった。MRI-ESM1によるRCP8.5の将来予測実験では、全球平均地上気温は産業革命前から21世紀末までに3.4℃上昇した。一方、MRI-CGCM3による同昇温予測は4.0℃であった。排出シナリオRCP8.5を用いてMRI-ESM1により予測された21世紀末の大気CO2濃度は800ppmであり、MRI-CGCM3による実験で使用したCO2濃度より130ppmほど低い。これは上述の昇温差と整合的である。全球平均のオゾン全量は2000年から2100年までに約25DU程の増加が予測され、MRI-CGCM3による実験で与えたオゾン変化と同程度であった。最後に、ESMとCGCMとの比較から、オゾンモデルとエーロゾルモデルを結合したことによって20世紀後半のエーロゾル量の変化に差が生じ、この差が両モデルの昇温量の違いに影響していることを確認した。