著者
本井 達夫 鬼頭 昭雄 緑川 貴 荒川 理 笹井 義一 陳 永利
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.6, pp.1015-1028, 2008-12-25 (Released:2010-04-26)
参考文献数
43
被引用文献数
1 1

Climate model experiments are carried out to understand the relationship between large-scale topography and climate variation. Mountain uplift experiments show that sea surface temperature, surface wind fields, precipitation and sea surface salinity are strongly influenced by mountain uplift. An enhanced Asian monsoon due to mountain uplift causes stronger seasonal coastal upwelling in the Indian Ocean and freshening in the Bay of Bengal, Yellow Sea and East China Sea. Mountain uplift experiments using a higher resolution atmospheric general circulation model reveal that the spatial pattern of precipitation becomes finer as resolution increases, and that there is a sharper contrast in the salinity distribution near coastal regions. Experiments in which the Panamanian Gateway is closed, opened and re-closed suggest that reorganization of the ocean current due to closure of the Panamanian Gateway induces a cooler and drier climate with a permanent halocline and sea ice in the subarctic Pacific.
著者
鬼頭 昭雄
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 = THE JOURNAL OF THE GEOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.11, pp.654-667, 2005-11-15
参考文献数
22
被引用文献数
2 3

大規模山岳がアジアモンスーンなどの気候形成に果たす役割を調べるために,全球大気海洋結合大循環モデルを用いて,チベット高原を含む全地球の山岳の高度を0(M0)から140%(M14)まで段階的に変える実験を行った.500 hPa面の東西風は,山岳高度が40%以下では一年を通してチベット高原の緯度帯より北の40 &ordm;N付近に位置するが,山岳を60%より高くすると冬季にはチベット高原の南側25 &ordm;N付近にあり春季にチベット高原の北へシフトすることがわかった.山岳高度が60%をしきい値として東アジアの循環場には大きな変化がおき,梅雨降水帯は山岳高度が60%より高い時のみ発現した.地表風の変化については,アラビア海北部では山岳が低い場合には一年を通して北風に支配され,モンスーン南風域には入らない.乾燥気候に区分される面積は山岳上昇とともに減少することもわかった.<br>
著者
鬼頭 昭雄 行本 誠史 野田 彰 本井 達夫
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.1019-1031, 1997-12-25 (Released:2009-09-15)
参考文献数
25
被引用文献数
102 141

大気中の二酸化炭素濃度増加によるアジアの夏季モンスーンの変化を気象研究所全球大気・海洋結合モデルにより調べた。温暖化によりインドの夏季(6~8月)の降水量は顕著に増加するが、逆に850hPaと200hPaの東西風のシアーで定義したモンスーンの風のインデックスは弱くなった。これは850hPaのモンスーン西風の北偏によるもので、サヘルからインド北西部にかけての西風が強化され、一方アラビア海の西風は弱くなる。大気中の水蒸気量が増加するので水蒸気輸送は増加し、降水量の増加をもたらしている。従って風のインデックスは温暖化の良い指標とはいえない。また、中国では降水量変化は少なく土壌は逆に乾燥しており、インドと大きく異なる変化をしている。インドの降水量の年々変動は温暖化により増加した。しかしながらこの年々変動の大きさは制御実験・二酸化炭素濃度漸増実験ともに数十年スケールで変化しており、温暖化による降水量変動度の変化の推定には注意を要する。
著者
本井 達夫 鬼頭 昭雄 緑川 貴 荒川 理 笹井 義一 陳 永利
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.6, pp.1015-1028, 2008-12-25
被引用文献数
1 1 1

Climate model experiments are carried out to understand the relationship between large-scale topography and climate variation. Mountain uplift experiments show that sea surface temperature, surface wind fields, precipitation and sea surface salinity are strongly influenced by mountain uplift. An enhanced Asian monsoon due to mountain uplift causes stronger seasonal coastal upwelling in the Indian Ocean and freshening in the Bay of Bengal, Yellow Sea and East China Sea. Mountain uplift experiments using a higher resolution atmospheric general circulation model reveal that the spatial pattern of precipitation becomes finer as resolution increases, and that there is a sharper contrast in the salinity distribution near coastal regions. Experiments in which the Panamanian Gateway is closed, opened and re-closed suggest that reorganization of the ocean current due to closure of the Panamanian Gateway induces a cooler and drier climate with a permanent halocline and sea ice in the subarctic Pacific.
著者
足立 恭将 行本 誠史 出牛 真 小畑 淳 中野 英之 田中 泰宙 保坂 征宏 坂見 智法 吉村 裕正 平原 幹俊 新藤 永樹 辻野 博之 水田 亮 藪 将吉 神代 剛 尾瀬 智昭 鬼頭 昭雄
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.1-19, 2013 (Released:2013-12-27)
参考文献数
57
被引用文献数
6 66

気象研究所(MRI)の新しい地球システムモデルMRI-ESM1を用いて、1850年から2100年までの大気化学、及び炭素循環を含む統合的な気候シミュレーションを行った。MRI-ESM1は、大気海洋結合モデルMRI-CGCM3の拡張版として開発されたモデルであり、拡張部分の化学的・生物地球化学的過程以外の力学的・熱力学的過程は、両モデルで同設定とした。計算負荷の大きい化学過程を扱う大気化学モデルを低解像度(280km)に設定して、MRI-ESM1の大気モデル部分はMRI-CGCM3と同じ120kmとした。基準実験において、地上気温、放射収支、及び微量気体(二酸化炭素(CO2)とオゾン)濃度の気候ドリフトは十分に小さいことを確認した。MRI-CGCM3による基準実験と比較して、全球平均地上気温が若干高いが、これは対流圏のオゾン濃度がやや高いためであった。次に、歴史実験を行いモデル性能を検証した。このモデルは地上気温と微量気体濃度の観測された歴史的変化を概ね再現出来ていた。ただし、地上気温の昇温とCO2濃度の増加はともに過少評価であり、これらの過少評価は土壌呼吸を通した正のフィードバックが関係していた。大気CO2濃度増加が過少に評価されたことにより昇温量が抑えられ、昇温過少が土壌呼吸を不活発にして陸域での正味のCO2吸収が過剰となり大気CO2濃度増加の過少を招いた。モデルで再現された地上気温、放射フラックス、降水量、及び微量気体濃度の現在気候場は、観測値とよく合っていた。ただし、特に南半球熱帯域では、放射、降水量、及びオゾン濃度に観測値との差異が存在していた。これらは過剰な対流活動によるものと判断され、太平洋低緯度域では所謂ダブルITCZ状態となっていた。MRI-ESM1とMRI-CGCM3を比べると、両者の現在気候場は非常によく似ており、現在気候再現性能は同程度であった。MRI-ESM1によるRCP8.5の将来予測実験では、全球平均地上気温は産業革命前から21世紀末までに3.4℃上昇した。一方、MRI-CGCM3による同昇温予測は4.0℃であった。排出シナリオRCP8.5を用いてMRI-ESM1により予測された21世紀末の大気CO2濃度は800ppmであり、MRI-CGCM3による実験で使用したCO2濃度より130ppmほど低い。これは上述の昇温差と整合的である。全球平均のオゾン全量は2000年から2100年までに約25DU程の増加が予測され、MRI-CGCM3による実験で与えたオゾン変化と同程度であった。最後に、ESMとCGCMとの比較から、オゾンモデルとエーロゾルモデルを結合したことによって20世紀後半のエーロゾル量の変化に差が生じ、この差が両モデルの昇温量の違いに影響していることを確認した。
著者
藤部 文昭 高橋 清利 釜堀 弘隆 石原 幸司 鬼頭 昭雄 上口 賢治 松本 淳 高橋 日出男 沖 大幹
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

970年代まで行われていた区内観測による26都府県の日降水量データをディジタル化し, 高分解能かつ長期間の降水量データセットを作成した。このデータや既存の気象データを利用して著しい降水や高低温・強風の長期変化を解析し, その地域的・季節的特性等を見出した。また, 極値統計手法を様々な角度から検討し, 各方法の得失を見出した。さらに, 全球数値モデルを用いて, 降水極端現象の再現性に対するモデルの水平解像度の影響を調べ, 今後モデルと観測データを比較するための統計的手法の検討を行った。