著者
岡田 温司 篠原 資明 鈴木 雅之 小倉 孝誠 並木 誠士 喜多村 明里 水野 千依 柳澤 田実 松原 知生
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

肖像には二重のベクトルがある。ひとつはモデルへと引き戻されるもの(モデルに似ていると思わせるベクトル)、もうひとつはモデルから観者へと表出してくるもの(モデルの性格や内面性が表われていると思わせるベクトル)である。この反対方向の運動は、「肖像」を意味するイタリア語「リトラット」とフランス語「ポルトレ」に象徴的に表われている。前者は、「後方へと引き戻す」という意味のラテン語「レ-トラホー」に、後者は「前方へと引き出す」という意味の同じくラテン語「プロ-トラホー」に由来するのである。かくのごとく「肖像」は、模倣と表出、後退と前進、現前と不在、顕在と潜在、保管と開示、隠匿と暴露、ピュシス(自然)とアレーテイア(真理)、これら両極の引き合いや循環性のうちに成立するものなのである。
著者
水野 千依
出版者
京都造形芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、ルネサンスの図像文化における古代異教的慣習の残存を、以下の三つの事例に即して、歴史人類学的観点から考察した。(1)古代異教の慣習や民間信仰を基層とするルネサンス期の終末論的預言や奇蹟の言説と図像、(2)ルネサンスの肖像史にみる古代異教の「祖先の像」「像による葬儀」「コンセクラティオ」の残存、(3)ルネサンスの像文化における奉納像(エクス・ヴォート)の地位。いずれの成果も論文として発表するとともに、出版を予定している著書の一部にて公開する。